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リリィ・オブ・スティール  作者: 悦田半次


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ギガントエンド

 劣勢。

 この二文字が、今の自分には相応しい。

 そう鎧の奥でジャンクは自嘲する。

 ジャンク・ザ・リッパーは度重なる斬撃を受けてかなりのガタが来ている。

 致命的なダメージはなんとか免れているが、この状況が続けば敗北は免れない。


「随分粘りますわね――鎧が壊れる前に降伏した方がよろしくてよ」

「言っただろ、壊れるのには慣れてるんだよ。それにしても、本当に厄介だね君は! アレかい? これが君の第二領域ってヤツかい?」


 第二領域は、装着者が魔導鎧装の性能を極限まで引き出すことで、従来その魔導鎧装が持ち合わせていなかった力を手にすることが出来る現象だ。

 正に魔導鎧装の切り札と言うに相応しい代物だが、しかしそれだけに到達できるものは限られており、到達できる具体的な方法も人によって違う。

 この分身こそハイネの第二領域だとジャンクは思ったのだが、ハイネは首を振った。


「残念ながら違いますわ。この分身機能はグリッターが従来持つ機能の延長に過ぎませんもの。それに、私の第二領域ともなれば、この程度に収まる道理がありませんわ!」

「ああそうかい! 何の気休めにもならないや畜生!」


 毒づきながら、アームブレードで刃を受け止めるも、別の方向から斬撃を受けてしまう。


「おーほっほっほ! アイリに近づく邪悪な輩は全て斬り捨ててやりますわ!」

「え、僕って悪人確定なの!?」

「悪人だろうとそうでなかろうと、斬ってしまえばプラマイゼロですのよ!」

「そんな無茶苦茶な! というか君どんだけアイリが好きなんだよ!」


 もしかしなくてもハイネは冷静さを失っているらしい。


「大好きではありませんわ!? 幼馴染みとして当然の感情です!」

「あ、そこ照れるんだ……けど君の感情は届いてないと思うんだけどね。アイリは随分素っ気ないように見えるけど?」

「普段は素っ気なくても時々柔らかくなる――それがオツなのですわ!」



 一方その頃


「……っ」

「ん? どしたん」

「いや……よく分からないけど寒気がして」

「風邪か? 寝るときは気ィつけろよ。腹丸出しだと一発だからな」

「……うん、そうする」




 挑発もあまり効果はなかった。

 ではジャンクはどうするべきか? 頭をフル回転させ、ついにジャンクは閃く。

 一発逆転の秘策。

 それこそ――


「逃げる! それが作戦!」


 踵を返して猛ダッシュでハイネから離れた。


「んな!? そう簡単に逃がしませんわよ!」


 ハイネは分身と共にジャンクを追う。狙い通り。

 ジャンクはニィっと笑うと、今度は横方向へ飛ぶ。

 身体を捻り目線をハイネの方へ向ける。

 分身と本体。

 一直線上に重なり合うその瞬間を狙い――発砲。


「が!?」


 大気を震わす轟音に隠れていたが、確かに呻き声が聞こえた。

 間髪入れずさらに三発叩き込む。グリッターのボディが激しく火花を散らし、膝を突いた。


「狙い通り……!」


 ハイネの分身は触れるまでその正体を判別することは難しい。

 が、それはハイネにとっても同じ事。

 半透明の分身でないため、分身が死角になる。

 死角からの弾丸も切られてしまうようでは最早お手上げだったが――勝利の女神はまだジャンクを見捨てていなかった。


「やってくれますわね……!」

「お褒めにあずかり光栄だねっ……と!」


 そう言いつつ、ジャンクは跳躍。


「くっ……待ちなさい!」


 決闘場の術式はダメージを無効化するが、痛みはその範囲外だ。

 穴こそ空いていないが、ハイネは今かなりの激痛に苛まれていると見ていい。

 その証拠に、ハイネは分身だけを追わせた。が、跳躍した分身はしばらくすると身体にノイズが走り消滅した。


「やっぱり分身の射程距離には限界があるよね……大体十メートルってところかな?」


 だが、それではジャンクには届かない。無防備のハイネにバレットシューターを向ける。


「バースト!」


 通常とは比にならない衝撃がジャンクの腕を揺さぶる。

 マガジンに残った弾丸を全て撃ち出す大技。

 反動はシャレにならないし、銃にも負担をかけてしまうため積極的に使いたい物ではないが、早期決着を付けるなら悪くない選択だ。

 計四発の弾丸がグリッターにヒットし、激しい火花を散らす。

 硝煙に塗れた金色の忍者は、ぐらりと身体を傾ける。


「決まった――!」

「――いいえ、私の勝ち……ですわ!」


 ハイネは倒れずに踏みとどまり、走り出す。


「うっそお!?」


 今のハイネは全身を鈍器で殴打されたに等しい衝撃を感じているはずだ。

 ジャンクが着地した瞬間、ハイネは分身を展開し入れ替わるように地面を蹴った。

 着地した反動で、ジャンクは反応が遅れる。ハイネの姿を補足しようとするが、ジャンクの視界を目が眩むような日の光が遮る。


 それでもと、バレットシューターを撃とうとするが――弾切れだ。

 光に遮られながらも、ハイネの刀からは魔力の輝きを感じる。

 やられた。うまくはめたつもりが、逆にこっちがはめられていた。

 あちらが勝負を決めに来た以上、アームブレードのような生半可な反撃は通用しない。


 まさしく八方塞がり――いや、待て。

 一つだけある。活路が。

 ハイネは出し惜しみをしていい相手ではない――そう言ったのは自分自身だ。

 命の駆け引きじゃなかろうと戦いは戦いだ。勝つならば全力で食らいついてやろう。

 右腕に意識を集中させる。

 瞬間、右腕の装甲が怪物の顎門の如く展開した。


「な!?」


 ハイネが驚愕の声をあげる。


「実と見せて虚。虚と見せて実――だっけ? だったらこっちもそうさせてもらうよ」


 チャージには時間をかけない。

 出力五パーセント。魔導鎧装一つならこれで充分だ。

 刮目するが良い。これこそジャンクが持つ唯一にして絶対の切り札。


「――ギガントエンド」


 その切り札の名を口にした瞬間、顎門から放たれた赤い雷が決闘場を塗り潰した。



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