初めての共同生活
蝶華くんと一緒に寮まで来たんだけど、広すぎない⁉︎
私がいた寮って一人で暮らすにはちょうど良いかなってくらいの広さだったの。
でも、ここの寮の部屋は私のお部屋より少し広いくらい。私の部屋は広い方って思ってたんだけど、そうじゃなかったのかなぁ。
「ここってご飯とかどうするの?」
「共同。知らないうちに用意されてる」
「ここには忍者でもいるの⁉︎」
「寮長が作ってるらしいけど、見たことない」
寮長さんは何者なの?
「まだ夕食時間じゃないから勉強見るよ」
「ありがと」
「宿題のプリント一緒にやろ」
「うん」
今日は数学のプリントがあるの。そこまで難しくないって先生は言っていたけど、一人じゃ全然分からないんだよね。
「公式を覚えれば解ける問題ばかりだから、公式覚えよっか」
「うん」
蝶華くんの教え方丁寧で分かりやすい。
難しいからできないって思っていたけどどんどん埋まっていった。
「できたぁ」
「おめでと。公式さえ覚えれば難しくなかったんじゃないかな」
「うん。すらすら解けたよ。ありがと、蝶華くん」
こんなに勉強が楽しいって思ったの初めて。今まで分からないだけだから楽しくなかったのに。
「そうして笑ってるのが一番可愛い」
「えっ⁉︎」
「そろそろ夕食時間だから行かないと。一緒に行こ」
「うん」
なんでだろう。顔が熱い。
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「星音、久しぶり」
「みゃぁ?」
「従兄忘れてるよ」
私、人に興味を示す事が少なくて覚えるのも苦手なの。でも、そう言われれば遊んでいたの覚えてる。
「というか、ここにいるメンバーって一度は同じクラスになった事あるよ」
「えっ⁉︎そうだったの?月華の事は遊んだの覚えてるけど」
「紀蝶とニマと月零」
「あっ」
「思い出した?」
「うん」
紀蝶ちゃんとニマくん修学旅行で同じ班だった。月零くんは月華の双子のお兄ちゃん。
「えっと、これからよろしくお願いします」
「よろしく、星音ちゃん」
「よろしく」
「よろしく……待って、一人いない」
「寮長はいつもいないでしょ」
「それはそうだけど、こういう時はいたから」
「なんかあるんじゃない」
寮長さんにも挨拶したかったけど、これじゃあ無理そう。今度会った時にでも挨拶できれば良いなぁ。
「星音ってアレルギーあったよな?」
「うん」
「歓迎の言葉とアレルギーがあるから名前書いておくって紙が」
寮長さんすごく良い人なのかも。会った事がないからそうとは言えないけど。
「そういや星音は活動内容聞いたのか?」
「お話聞くのとお父様の頼み聞く」
「大体合ってるけど、なんかざっくりしすぎてね?」
「学園では時々不思議な現象が起きるんだ。ボクらはその現象を解明して解決する活動をしている」
「じゃあ、今日のお悩み相談って」
「星音が心配だったから。魔法に関しては違うけど、そっちも心配はあったかな」
お悩み相談って言うのは勉強できないとかじゃなくて、その現象についての悩みだったんだね。
「星音みたいに魔法が使えるなんて相談は今までないけどね」
「そうだったんだ」
「早く食べないと入浴時間くるよ」
「入浴時間まで決まってるの?」
「寮長が決めてる。姿を見せない忍者説とかスパイ説を濃厚にさせて楽しみたいらしい」
どんな寮長さんなんだろう。会ってみたい。でも、これだと姿を見る事は難しいのかも。