扉の先にある部室
恐る恐る扉の取手に手を伸ばす。
「うぅ、やっぱり怖いよ」
「星音ちゃん、頑張れ」
「空姫ちゃんがやって」
「良いよ」
空姫ちゃんに頼んで開けてもらおうとする。
「開かない」
「えっ⁉︎そうなの?」
「星音ちゃんも開けてみてよ」
「う、うん」
怖いけど、開かないなら開けようとするくらい良いかな。
そう思ってもう一度取手を掴んだ。
勇気を出して扉を引いてみる。
「あい、た?」
「すごい!星音ちゃんって力持ちなんだね」
うん。多分空姫ちゃんよりも力はない。初等部の時も重い物を持てずに空姫ちゃんに何度か頼んでいるくらいだから。
でも、それならどうして私は開ける事ができたんだろう。
「あっ、人きた」
「えっ、ほんとだ」
「ここの扉開けられるのは、本当にいる」
初等部、中等部、高等部って制服が違うの。制服から見て中等部で間違いないと思う。
「開けられた人だけ入ってきて」
「えっ」
開けたのは私だけど、一人で入るなんて無理。
「空姫ちゃんいないとむりぃ」
「今回は特別に良いにしてあげれば?」
「そうだね」
良かったぁ。一人で入らないとなんて言われたから、入るのやめようかなって思ってたよ。
「理事長の娘ちゃんはこっちね。空姫ちゃんはこちらでお茶でもしましょう」
「はい」
これ、一緒にいないのと同じだよね。空姫ちゃん、嬉しそうにお茶会始めちゃってる。
「ココア飲める?」
「は、はい」
「そんなに緊張しないで。初等部の時同じクラスだったのに覚えてないの?」
クラスの人たちとほとんど会話した事ないし、元クラスメイトの事なんて覚えてないよ。
「初等部の最後の一年間同じ委員会で何度か一緒になった事あったんだけど」
初等部の最後の一年間は空姫ちゃんと一緒に美化委員会だった。でも、その時誰と一緒にやったかなんて覚えてない。
「……自分の許嫁忘れるって中々ないと思うんだけど」
「婚約者?あーーーー‼︎」
初等部に入る前に親同士が決めた事だから忘れてた。
確か、蝶華くん。
「やっと思い出せた?」
「うん。言い訳して良い?」
「内容次第」
「仮面つけてて分かるわけないじゃん!」
そうなの。ここの部屋に来た時からずっと仮面つけてる。これで分かれという方が難しいでしょ。
「あぁ、ごめん。外すの忘れてた」
初等部の頃は人の顔を見ないようにって下を向いていたから六年ぶりくらいにまともに顔を見る。
「久しぶりだね。星音」
私が最後に会ったのって初等部の前だから三歳の時。ここの学園は他と違って初等部が三歳から受験合格者は入学可能なの。
学年は入学時期によって変わるから中等部は九歳からだよ。
六年会わないだけでこんなに変わるなんて。
昔女の子って聞いたくらい可愛いだけだったのに、かっこよさが追加されてる。
「星音にはここでの活動を教えてあげる。でも、その前に何か悩んでいるんじゃないの?人に言えないような事で」
もしかしてエスパー⁉︎
悩みはあるけど、誰にも気づからないようにしてたの。
「話、聞くよ」
蝶華くんは昔と変わらず優しいんだね。私は、蝶華くんに誰にも言えなかった悩みを話した。