飼い猫の一日 飼われました
月華くんがお部屋に連れて帰ってくれた時にはもう夕方だった。
部活も終わっているし、一日だけじゃ信用できないって事でしばらくこのままの状態で過ごさないといけない。
「寮長に頼んでキャットフード貰ってきた」
「寮長特製だから美味しいと思うよ」
「にゃぁ」
ご飯は適量でくれるの。
「にゃぁ」
そういえば、あの猫になった人の事なんだけど別れる前に人間も捨てたもんじゃないって言われたの。
「猫って風呂どうするんだ?」
「にゃぁーー(入りたいー)」
「入りたそうにしているから入れてあげる?耳とか気をつければ大丈夫じゃないかな」
良かった。何日もお風呂入れないは回避できそう。猫はお風呂やお水が苦手らしいけど、私は猫じゃないから。苦手じゃないよ。
「にゃぁぁ♡」
「月華って動物飼った事あるの?」
「あるわけねぇだろ」
「にゃ⁉︎にゃぁぁ♡」
「それにしては慣れてるね。星音も喜んでるみたいだし」
「動物は飼った事ねぇよ。何年か前に月零が間違えて変化の魔法使った時に世話はしていたけど。星音は一緒にしていたんだが」
動物……
あれは何年前だっけ?今まで忘れてたけど、五歳の頃の長期休みの時に私と蝶華くんと月華くんの家族と一緒に別荘で過ごした事があるの。
その時蝶華くんは大人たちと混ざっていたというか、避けられていて私は月華くんと一緒に遊ぶ事が多かったんだ。
別荘へ来て何日か経った頃、月華くんが小さくて可愛いワンちゃんを抱いて一緒に遊んで欲しいって言っていたの。
そのワンちゃんは月華くん一人でお世話しようとしていたから、私も一緒に手伝うって言って一緒にお世話してた。
まさかあれが月零くんだったなんて
「にゃぁにゃぁ(ワンちゃんお世話)」
「何か覚えてそうな感じだね」
「ああ」
さっきからなんで言いたい事が伝わっているんだろう。猫語が分かるのかなって思えてくる。
「部長さんの事があるから明日は行きたいけど、星音どうしよっか」
「叔父さんに頼んで俺俺が面倒見とく」
「……もうすぐテストだっていうのに成績上がる気がしないからそれが良いと思う」
そういえばそうだった。もうすぐテスト。また下から数えたほうが早いってならないようにしないとなのに
「にゃぁにゃぁ」
「星音も補習は嫌だよな」
「にゃぁにゃぁ」
「……補習嫌だにゃぁ。頑張っていっぱいお勉強して満点取るにゃぁ」
「ぷにゃっ」
月華くんが私を抱き上げて可愛い声で言ったのが面白くて反論より先に笑っちゃった。
「今回のテストは絶対補習しないにゃぁ。補習になったらお勉強の時間増やすにゃぁ……録音完了っと。音質悪いから気づかれないでしょ」
「にゃ⁉︎シャー」
遊んでやっているだけだと思っていたらまさかの言質取るためだった。でも、これ私言ってないの。なっても増やさないろなんてないの。
「猫のベッド用意できてねぇし、一緒に寝るか」
「シャー」
「……勉強させようとしたのが気に入らないみたいだね」
「シャー」
「けど、やらねぇと成績やばいだろ」
「そうなんだよね」
「……シャ……シャ、シャ……にゃぁ」
成績やばいって言葉は禁句。それ言われたら勉強頑張るしかないから。