隠し扉
「ねぇねぇ、この学園のどこかにあるって噂の部屋」
「そんな場所があるの?」
「噂なんだけどね。行ってみたくない?どんなところなのか気になるじゃん」
噂の部屋。空姫ちゃんはとても楽しそうに話しているけど、なんだか怖そうな話。
私は中等部に上がったばかりだから、初等部の六年間この学園にいたの。
それに、私は理事長の娘でこの学園内の地図は覚えるほど見ていた。それでも、そんな場所は見た事ない。
「ねぇ、星音ちゃん。一緒に行ってみない?行ってみようよ」
「う、うん」
空姫ちゃんはクラス一の人気者。だから、消極的でお友達も少ない私は空姫ちゃんの誘いを断りづらい。そうじゃなくても、頼まれると断るのが苦手なのに。
「じゃあ、早速しゅっぱーつ」
「ま、待ってよ」
空姫ちゃんに誘われて学園内を探してみるけど、それらしき場所なんて見つからない。あっ、授業サボってとかじゃないよ。今は放課後で授業なんてないから。それに、初等部で何もしてなかった私と空姫ちゃんは部活もないから。
「下校時間来ちゃうよ」
「三十分もあれば見つかるよ。ほら、探そ、探そ」
「噂なんだよね?本当にあるのかなぁ。学園の地図にも載っていない場所なんて」
「星音ちゃんは夢がないよ。こういうのはあるかないかより探す事に意味があるのだよ」
「そうなの?」
「そうなの。だって、楽しいでしょ」
空姫ちゃんと一緒にいられるから楽しくないわけじゃないけど、もし見つかったらって思うと……
「もしかして怖い?」
「そ、そんな事ないもん。三十分しかないんだから早く見つけないと」
図星だったのに、知られたくなくてつい強がっちゃった。うぅ、本当は怖くて探したくないのに。
「あっ!これ、今度やるんだ」
「あー、演劇部の演劇ね。星音ちゃん、好きなの?」
「うん。好きゃぁ⁉︎」
ご自由にどうぞと書かれている箱から日程の紙を取ろうとしたら急に壁が動いた。
びっくりしたぁ
ていうか、なんか廊下が
「星音ちゃん大丈夫?怪我してない?」
「うん。なんか廊下がある。行ってみる?」
「怖いんじゃないの?」
「だ、だから、怖くなんてないって。時間ないから行こ」
早口になっているのが自分でも分かる。でも、ここまで来て止めるのはできないよ。理事長の娘であるんだから、地図にない場所をちゃんと把握してお父様に伝えるの。
「扉がある。ご自由にお入りくださいだって」
「入ってみようよ。ここまで来た以上、ね」
「う、うん」
廊下の突き当たりにあったお部屋。少し怖いけど。