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第5話

「はる。何やってるの?」


いつの間にか近くに来ていたかなが蒼井さんに話しかける。


「香菜...!ねぇ、香菜は坂宮さんにいかないよね、私のこと、ちゃんと好きだよね...?」


かなは何も答えない。どこかあきれたようにも見える彼女の表情。私は初めて見た。


「香菜...やっぱり香菜も先生が言ってたみたいになっちゃうの?」

「...先生?なにそれ。知らないけど、私ははるのメンヘラに少し疲れたかも。」


ヒュ、と誰かの喉から音がした。


「私ちゃんと好きだもん。はるのこと。なんでそんなこと言うのかな。私のこと、そんな信じられない?」

感情なく告げるかなに対抗するように嘆く。


「違う!先生が言ってたの!!香菜は私に飽きたって、ただの都合のいい女だって、坂宮さんが奪おうとしてるって!全部全部聞いたの!」


...私?私は本当にかなのこと友達としてしか見てないんだけど。ていうか、先生って誰?このクラスに深入りする先生って居ないはずなんだけど。

かなもそう思ったのか、眉をひそめて問いかける。


「はる、先生って誰?先生の名前を教えて欲しいの。私はゆみと本当にただの友達。信じて?それとも…」

私よりも、信じられる人?


掠れた声で言うかな。それにぶんぶん首を振って否定する。


「違う!香菜の言葉が1番なの…!ごめん、ごめんね2人とも…でも、でもね。先生もいい人で、その、どっちも信じられて…!先生の名前は、田口雷先生っていうんだけど、知ってるよね?」

「たぐちらい…?蒼井さん、そんな先生うちにいたっけ?」

「え、居るけど。だってこのクラスの副担任だし。そうだよね。香菜。」

「ごめん、私もわかんない。それ、誰?」


え、と困惑した顔でキョロキョロ周りを見渡す蒼井さん。

「でも、あの先生優しかったの。頭を撫でてくれて、私達子供が大好きなんだって」

背筋が凍る。なんとなく、その人の正体がわかった。


「蒼井さん、その人に関わるのを辞めた方がいいよ。」

「え、なんで?」

「私もそう思うな。その人結構やばい人だと思う。」

「でも、本当にいい人なんだよ」

「でもはるに嘘ついたんでしょ?」

「それは…そうだけど、でも間違えたのかもしれないし」

「私よりその人の方が信じられる?」

「それは…」


黙りこくった彼女を見てため息をつく。

彼女は人に依存しやすいのかもしれない。かなもそうだし、その雷って人にも。


「わかんないけど、今から会いに行ってみる。私は先生がやばい人だって信じられない。でも香菜のことも信じたいし。だから直接聞いてみる。」

「あ、はる!」


教室から勢いよく飛び出し、一心不乱に走り出す彼女の姿は、どこか恐怖すら感じられた。


「これ、絶対危ないよ」


ボソリと呟く私の声は震えていた。彼女を追いかけなくては。そう分かっているけど、その先生の正体の想像がついてしまうから。怖くてどうにも足が動かない。


ポン、と私の肩を軽く叩く。大丈夫だから、とでも言う様に彼女は笑った。

「ゆみ、私行ってくるね!ゆみは待ってて!私なら大丈夫だから!」

そう言い終わるなり、蒼井さんを追いかけて走り出していってしまった。


かなり騒いでしまったからか、教室の皆は私を見つめている。


怖い、怖い、怖い。私、どうしよう。どうすればいいんだろう。

…でも、探偵なんだから。私は探偵なんだから。謎を解決するためには、現場に向かわなきゃいけない!


まずは謎を整理する。私の中の謎は3つ。ひとつはなぜ蒼井さんが信用しているのか。もう1つはその先生の正体は何か。最後はその先生の目的はなにか。

その謎を解決しなきゃいけない。


でも、解決した先は?蒼井さんがたったこれだけの事で闇を出すとは思えない。きっと、その雷って人の影響で濃い闇を出しているんだ。

とりあえず現場に行かなきゃ。雷って人の素性を全部明かさなきゃ!


廊下に飛び出て辺りを見渡す。出遅れてしまったからか、もう2人の姿は見当たらない。


1つ心当たりがある。D組の真上の教室。闇がD組よりかは薄いけど、それでも他のクラスよりは圧倒的に濃い場所。


多分皆はそこにいるだろう。

「ふぅ…よし、行こう。」

バクバクする心臓を押さえつけ、目的地へ向かって走り出した。

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