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【間話28】家族公認デート〜ニーナ•ムーンヴァレー公爵令嬢視点

 

◇◇ニーナ•ムーンヴァレー公爵令嬢視点


 今日は家族で日本に来ています。エーコさんのお陰で家族でそれは素敵な時間を過ごさせて頂いています。


 スマホを契約した時、エーコさんが私達家族に、親交のある方達の連絡先を全員お友達追加して下さいました。

 

 その中には私が密かに想い続けているアヤネのお兄様であるカズキ様の連絡先もありました。


(カズキ様。元気にされてるかしら…。)


ツキンと胸が痛みます。


『そうか、綺麗だね。とても。』

初めてお会いした時、私の銀色の髪を褒めてくださったカズキ様。


 ただでさえ友達になりたいとずっと憧れていたアヤネにそっくりな顔立ちに優しい甘い声。


 そんなこと言われたら好きにならない訳がないじゃないですか。


 エーコさんの家でお好み焼きを食べた時も作り方のわからないわたくしに丁寧に教えながら作ってくださって。


 もう、好感度が上がり過ぎてしまって正直胸が苦しいくらいでした。


 …けれど、私は魔王との話し合いが終わったら隣国の第二王子とお見合いすることになっています。


(私は春にはムーンヴァレー王国の王女になる。だから民の幸せを一番に考えなければならない。)


 こんなに男の人を好きになったのは初めてだけれど、きっと諦めるしかないのかしら。

 

 でも…。カズキ様が私の事を『可愛い』と言って下さる度に期待してしまうのです。


 もしかして、カズキ様も私の事を少なからず思って下さっているのではと。

 

 そんな気持ちを抱えながら苺狩りが終わって。


 温泉宿のチェックインをショージ様がして下さってる時に私はエーコさんに手招きされ、コソッと言われました。


「屋形船から、ニーナちゃんは別行動だから。」

「…え?どうしてですの?」


私が目を見開くと、エーコさんが笑顔になりました。

「大丈夫!!ちゃんとケネスさんとダイアナさんに許可貰ってるから。」


そう言ってお母様に目配せしました。


 すると、お母様は『楽しんできてね!』と言い、お父様はなんとも言えない顔をしました。


(…どういうことですの?)


「じゃ!連れて行きますねー!」


そう言うと、エーコさんは私の手を引っ張り宿の路地裏に連れて行き、なんと何処かに転移しました。


 白い光が収まり、目を開けるとそこは。


「…まぁ!なんて綺麗なの…!!」


そこには水平線に沈む夕陽が輝いていました。


「うふふ。日本の『夕陽』だよ!驚いた?」

そう言ってエーコさんはニッコリ笑います。


「ここは、どこですの…?」

「湘南だよー。ほら!向こうから王子様来たよ!」


(…王子様?)


そう言われて振り向くと、そこには。


「ニーナちゃん。久しぶり。元気にしてた?」


ずっと会いたかったカズキ様が立っていました。


「か、カズキ様…?」


嘘、どうして…。


「おいで。」

そう言いながらカズキ様が照れくさそうに手を握って下さり、エーコさんにペコリとお辞儀しました。


 エーコさんは親指を立てて、白く光って転移してしまいました。恐らく元の温泉宿に戻ったのでしょう。


 手を繋ぎながら一緒に海辺を歩きます。心臓がドキドキとうるさいくらいです。


「今日、可愛い。いつも可愛いけど。」

そう言って照れくさそうに微笑みます。


…そんなこと言われると、どうしていいかわからなくなるじゃないですか。


 せっかく、国の為に結婚しなきゃと思っていたのに決心が鈍ってしまいそうです。


「カズキ様だって、いつもカッコいいです。」

ちょっといじけて言うと、フッと笑われました。

 どうしましょう。私、やっぱりこの人のことすごい好きです。


「ニーナちゃん、疲れてない?」

「す、少しだけ。」

そう言うと、フワッと身体が持ち上がりました。


「や、やめて下さいまし!重いですから!」


思わず恥ずかしくて言うと嬉しそうに笑われました。

「軽い軽い。暫くこのまま歩くから。お腹空いてる?近くに美味しいお店があるんだ。」


「…行きますわ。」

そう言ってわたくしはカズキ様にしがみ付きました。


 今だけは。ちょっとだけ、素直になってもいいですわよ、ね?


 暫く無言になって目が合いました。


 私が目を閉じると、カズキ様の顔が重なって、そして…。


◇◇


 ちなみに、実はスキルでデートが見られていたとは2人は知る由もない…。


「甘ーーーーーーーい!!!!ヤバい!おばちゃん鼻血出そう!こりゃ、あのツンデレ王子じゃ負けるわ!こっちの圧勝圧勝!!


 お姫様抱っこだよ!お姫様抱っこ!!!どこの少女漫画だよ!!あぁ、でも一樹君がやると様になるーーー!!さすがイケメン!!」


「おい、栄子、勝手に『受信』のスキルで人のデート見るなよ!そっとしといてやれよ!」


「…えへへ。ちょっと心配でつい見守ってただけなんだけど、思ってたよりラブラブで…。


 あ!!!チューしそう!ぎゃーーーーー!!!祥志!今チューした!!!!ご馳走様です!!」


「…はぁー。もう少しで屋形船に行くからそろそろ準備しろよ!ケネスさん達待たせたらまずいだろ!」


「はーい!!!ごめんごめん。あ、このお茶菓子美味しいー。」


神様に貰った神聖な『スキル』がまさかこんなくだらないことに使われているとは誰も思うまい…。



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