【69】私の聖剣の形が変わっている件。〜今日は土鍋の蟹ご飯
シリウス君が公爵家に帰ったのでこうちゃんをお風呂に入れた。
今日は疲れたのかコテンと寝てくれたので夕飯の準備をする。
今日の晩御飯はこの前レーヌ町で獲ってきたキングクラブだ。
といっても、こんなに大きい蟹いっぺんには絶対うちでは茹でられない。風呂場で茹でるのは流石に嫌だし。
とりあえず腕の一本だけ出ないかなぁ、なんて考えていたら、なんとアイテムボックスから腕だけ出すことが出来た。
人間の腕よりちょっと太いくらいでグロテスクである。この前鑑定した時に『とにかく硬く、殻は最高の防具となる。』と書いてあったので、聖剣を発動させる。
地味に私が聖剣を発動させるのは初めてだ。
右手に力をこめると、ブウウウウンと言って剣が発動する。
(…ん?剣?)
彩音ちゃんと違ってなんと包丁型だった。
な、なんで??
まあ、蟹を切るだけだからそっちの方がいいか。グロテスクなのは苦手だから出来れば人とかモンスターとか切りたくないし…。
私は発動した聖剣、もとい聖包丁を使って蟹の腕を切り落として残りは結界を張って肉や汁出てこないようにしてアイテムボックスに戻した。
それを塩茹でしたら殻が赤くなったので聖包丁を入れて身をほじくり出した。
(おお、美味しそうー。)
見た目は普通のタラバである。茹で汁を取っておいて、蟹身と一緒に今日は土鍋で蟹ご飯を作ることにした。
残ったカニの茹で汁はお吸い物に使おうと思う。あとは漬物とだし巻き卵くらい出せば十分かな。
茹で汁を冷ましたものに昆布をつけておいた。あとは祥志が帰ってきたら刻み生姜と蟹身と一緒に土鍋で炊こうと思う。
あとは、この殻どうやって処分しようかな。小さめに切っておいたけど、ゴミ出しするにしても燃えないごみで出すべきか、燃えるゴミで出すべきか。
防具になるってことはなかなか燃えなさそう…。
そう思っていたら、聖剣がブレンダーの形になった。
(…??これって殻に使えるってこと?)
そう思い試しにボウルに入れてブレンダーにかけるとあっという間に粉末になった。
「おおおお、凄い。」
どうやら私の聖剣は調理器具の形になるらしい。
とりあえず粉末状になった蟹の殻はジップロックに入れておいた。肥料や何かの素材になるかもしれないし、物置に入れておいて今度シリウス君にでもあげよう。これでゴミも減るし私としても嬉しい。
ちなみに聖剣は試しにワインの蓋を開けようとしたら、今度は栓抜きの形になった。
いやぁ、これは便利だなぁ。聖剣が調理器具になるならキャンプの時荷物がめちゃくちゃ減るし、洗い物もめちゃくちゃ減る。
聖剣をおろし金にして、大根をすりおろしたので、せっかくだから天ぷらも揚げることにした。しかも、この聖剣、持ち主の私の手はゴリっとかザクッとかいかないみたいである。
今日はご馳走だね!
天ぷらの下拵えをしていたら祥志が帰ってきたので先に風呂に入ってもらってその間に土鍋に火をかけて蟹ご飯を作り、天ぷらを揚げていく。
ジュワー!!!
うんうん。いい音がする。聖剣を菜箸にして油に突っ込んでどんどん上がったものをお皿に入れていく。
めっちゃ便利。しかも衣がねちゃっとつかないという。
もっと早く発動させておけばよかった。
◇◇
「「「頂きまーす。」」」
こうちゃんを起こしてもらい3人で頂きますをする。
「うおー。蟹とか久しぶりだわ。うまそー。」
土鍋の蓋を開けると、出てきましたよ、蟹ご飯が。
うわぁあ、テンション上がるわ。
蟹の出汁が効いていてめちゃくちゃ美味しい。生姜はやっぱり欠かせない。
今度は蟹味噌を食べたいけれどさすがに茹でれないからやっぱりどこかのギルドで解体してもらおう。
シリウス君が次来た時公爵庭に出て、着替えてもらってる間にルーナ村に持っていこう。
次は蟹しゃぶとか、蟹味噌とか、蟹クリームコロッケとか焼きガニとか食べたい。公爵家で今度作ろう。…蟹味噌でクリームパスタとかも美味しいかも。内子とかトッピングしたらめちゃくちゃ美味しいだろうな。
蟹ご飯の締めには出汁とコネギをかけて食べた。それもまためちゃくちゃ美味しかった。
大満足で食後のアイスを3人で食べていたらお茶がプルプル震えてケネスさんから連絡が来た。
「ショージ殿!エーコ殿!そしてコージ、聞こえるか?
今日はシリウスの事、本当に感謝する。お昼ご飯もご馳走になったと聞いた。
あと、チョコレートも食後に家族で頂いたが、めちゃくちゃ美味しかった!異世界は美味いものばかりが溢れているのだな。」
ケネスさんはチョコレートの味を思い出したのか幸せそうな顔をしている。おお、そんなに喜んで貰えて良かったよ。
「全然ですよ!お口に合ったようで良かったです。」
そう言うと満足げに頷いていた。
「ああ、そうだ、それで私も今週日本にシリウスとニーナとダイアナと行こうと思う。視察も兼ねてだがその時『すまほ』を作ってもらってもいいか?宿に一泊して色々見て、次の日の午前に公爵家に帰ろうと思う。」
なんと!遂にいらっしゃるんですね。しかもご家族全員で。
「もちろんです。いつが良いですか?あ、その時皆さんに自分の身分証明書のようなものをお待ち頂いてもいいですか?」
「ああ、わかった。明後日はどうだろう?」
「大丈夫です。」
レオナさんとは明日約束しているけれど、その後の予定は特に決めていないしね。
「ありがとう。ちなみに農業の件だが、先ずはやはりトラクターよりビニールハウスの件をどうにかしようと思っている。一度私達も見学させてもらって代用出来そうな素材などを検討させて貰う。」
あ、やっぱりそうなったのね。
ちなみに祥志が水曜だったら有給が取れそうだというのでどうせなので色んな所に連れて行ってあげようということになった。
どんな所が見たいかは家族で話し合ったあと改めて連絡を貰うことになった。
あ、皆さんの日本での着替え、用意しておかないとな。




