【63】サダオさんと骨の探索。
「レ、レオナさん、日本からどうやってここに来たんですか…?!私、合鍵とか渡してないですよね?!」
と聞くと、レオナさんも、
「え、え?ここって元の世界なの?」
と驚いている様子だ。
すると、レオナさんと一緒にいた男性がふぅーっと溜息をついた。
「今ここでどうしてコイツが異世界にこれたか説明してる暇はねぇ。しかし、コレだけは言える。俺は味方だ。」
そう言うと男性は『デスペル』と唱えた。
すると、散らばってる骨が白く光りながら浮かび上がり、一箇所に落ちた。
「悪いが、ここにある骨を一つ残らずこの骨壷に入れてくれ。話はその後だ。」
皆が困惑していると、レオナさんが援護するように言った。
「大丈夫、サダオさんは素晴らしい方だわ!」
そう聞いたのでとりあえず魔王の骨をみんなで拾って骨壷に入れたのだった。
『封印』
男性が小さな声で呟くと、骨壷は虹色の光を放って落ち着いた。
というか、この『封印』も『デスペル』も白魔法だ。魔導書を最適化した時に頭の中に入ってきたのを覚えている。
ということはこの人は聖女…あれ?でも男の人だから聖人?
「さて。細かい話はあとだが、見た通り魔物を大量に発生させる『魔王ラミダスの骨』が盗まれた。
しかも、埋められたのはコイツの実家だ。行かなきゃいけねぇ。」
そう言ってレオナさんを見た。
「え?!レオナ叔母様の実家…ってことは僕の家じゃないですか!!!」
シリウス君がパニックになっている。
「大変!早く行った方がいいね。サダオさん、でしたっけ?私、スキルで皆を公爵家まで送れますからすぐ行きましょう。」
すると、サダオさんは破顔した。
「そりゃいいな。余計な手間が省けた。じゃあよろしく頼む。」
そう言ってくれたので。まずは家を置いてきた場所に戻って急いでアイテムボックスの中に回収した。
そして、みんなで輪になって手を繋いで公爵家に『送信』させてもらったのだった。
◇◇
公爵家の庭に着くと、まだ何も起こっていないようだった。
「俺のスキルで見た感じだと、この屋敷の敷地内のどこかに『魔王ラミダス』の骨が埋められたはずなんだ。もう少しでおそらく発現してしまう。この中に白魔法を使える奴はいるか?」
そうサダオさんに言われたので、私と彩音ちゃんが恐る恐る手をあげる。
「よかった。じゃあ、俺とお前達2人を筆頭に三組に分かれて骨を探索する。
見つけたら、白魔法を使える者が『デスペル』をかけて、モンスターが出る前に効果を無力化してくれ。
そのあとは速やかに知らせてくれ。この瓶の中に『封印』するからよ。」
そう言いながらサダオさんは先程の骨壷を懐から出した。
レオナさんはケネスさんからスタッフさんに避難する指示を出して貰うために知らせに行き、それ以外のメンバーはここに残った。
サダオさんはとりあえず1人で、私とこうちゃんと祥志が3人で一組、彩音ちゃんとシリウスくんが一組になった。
◇◇
「なかなか見つからないなー。」
祥志がぼやいた。
「本当だね。もう1時間以上探してるのに。公爵家広すぎるよ…。」
そんな事を話していると、こうちゃんが叫んだ。
「まま、あっち!あっち!」
指を刺した方に視線を向けると、ぐにゅぐにゅと光るものが見えた。
「あれは…!メタルスライムじゃねぇか!!」
祥志が咄嗟に雷魔法を飛ばすと、『ジュッ』という音を立てて消失した。
「あっちの池のある方が怪しいかも。」
この前の群生地も綺麗な川の近くにあったし水場を好むモンスターの可能性が高い。
3人で池の方向に走っていくと、庭園の中の美しい池から夥しい数のメタルスライムが這い上がってきている。
なるほど。誰かが骨を池の中に落としたのか。
土に埋まってると思ってたから見つからなかったわけである。
「ここに間違いなさそう。祥志、もし壊れたらあとでケネスさんに謝っとくからここにデッカい雷魔法落として!」
そういうと『オッケー!』と言いながら祥志が手を振ると、ズドーン!!と音がした。
大きな雷が池に落ち、スライム達は蒸発した。
「良かった。多分発生したばっかりみたいな感じだったから取り逃した個体はいなさそう。とりあえず、池全体にデスペルかけちゃうわ。」
そう言いながら私は池に手をかざした。
初めての魔法で緊張するけれど、大丈夫、問題なく出来るはず。
しばらく力を込めているとパアアア!!!と池が白く光って、粉々になった骨が浮かび上がってきた。
私は慌てて背負ってたリュックに入っていたフリーザーバックの中に骨を入れるとジップを閉じた。
祥志に『スキル』を発動してもらって念話でサダオさん、レオナさん、彩音ちゃん、シリウス君に話しかける。
(皆さん。魔王ラミダスの骨、無事回収しました。少しだけメタルスライム既に発現していましたがそれもやっつけました。ええと、サダオさん、聞こえてますか?)
(ああ。聞こえた。しかし、驚いた。念話を使えるスキルを持ってる奴もいるのか。今どこら辺にいる?)
(庭園の東の池の前です。)
(わかった。今行く。)
どうやら向こうから来てくれるらしい。
(栄子さん!彩音です!私達も聞こえてました。私達2人は公爵家の皆さんやレオナさんの様子も気になるので先に屋敷に入ってますね。)
すると、レオナさんからも念話が入る。
(レオナよ。彩音様、それはありがたいわ。ケネスも詳しく状況を知りたがっているしね。栄子さん、こっちは全員無事だから大丈夫よ。)
(了解です。じゃあこっちも封印が終わったら行きます。)
しばらくすると、サダオさんが息を切らしてやってきた。
「いやぁ、公爵家ってぇのは随分と広いな。1時間で見つかってよかったよ。よし、骨を出してくれ!」
そう言われたのでジップロックを渡すと、サダオさんが頷き、骨壷の中に全て骨を注いだ。
「『封印』!」
彼がそう呟くと壺が再び虹色に光った。
「良かった。助かったぜ。大惨事になる所だった。さて。俺はサダオってぇんだけどよ。まあ、なんていうか、この魔王ラミダスの孫だ。」
それを聞いて、私達はビックリして言葉を失うのだった。




