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【間話24】久しぶりの学園〜聖女アヤネ視点


◇◇聖女アヤネ視点


 今日はニーナに付き添われて久しぶりに学園に来た。ロッカーに置いてある私物を持って帰る為だ。


 ニーナとシリウスは魔王の事が落ち着き次第学園に戻るらしいが、私は退学する事にした。


「アヤネは今日で最後ですわね…。」

ニーナがしんみりと言う。

「そうだね。まあ、そもそも日本でA高校に既に通っているからね。それに、友達になれたニーナとシリウスは日本に戻っても、立花さんの家に行けば会えるから。」


そう言うと、ニーナは『まあ!』と言って嬉しそうに頰を染めた。


 それに最近ニーナとお兄ちゃんはなんだかいい感じだ。絶対両想いでしょ。もし付き合ったりしたら会う機会も多いだろう。


 しかし、ニーナは跡取りだから万が一結婚なんてしたら、お兄ちゃんは婿養子になるのか…。まあ、医療も日本に比べたらこの世界は大分遅れているし、それもいいのかもしれないな。お兄ちゃん、無医村に興味があるとか言ってたしね。


 日本にいた時は見栄を張る事に向きになっていたけれど、なんだか異世界に来てから自然と『自分は自分らしくいたい。』と思う事が増えた。


 苦しいことも多かったけれど、不思議と心は穏やかだ。これが『四苦八苦』した上の『涅槃静寂』というものなのかな、なんて思っている。


 この穏やかな心持ちで魔王と和解に持っていければいいな。


 …あ、ここ。突き飛ばされた階段だ。


 今となっちゃどうでもいいんだけどね。あの子達もまさかニーナと私がこんなに仲良くなってると思ったらびっくりだろう。


 ふと、廊下を見たらものすごい勢いで何かが走ってくる。


「マティアス様ーー!!!!私の体毛が入ったクッキーを今度は詰め合わせで作ってみましたのー!!!!受け取って下さいましーーーー!!!」


「うおおおおおおおおおおおお!!!」


「いいっ!いいぞマーティン!!手のひらをもっと広げて!美しく!…そうだ!!!もう少し頑張ったら俺と鶏むね肉とレモンの蜂蜜がけを食おう!!!」


黒髪の前髪が重めの女生徒がお菓子のような箱を持って、金髪の男子生徒を追いかけている。


 さらに笛を吹いて角刈りマッチョの生徒が男子生徒を励ましている。何かの訓練だろうか。


「…え。今のってマティアス様では。」

ニーナが困惑した顔で言う。


「えー、違うんじゃない?だって、平民の男子生徒にタメ口で話されたらあの人キレそうじゃん。」

私がそう言うと、ニーナも納得したのか『それもそうですわね。』と言った。


 校庭の方を見ると、魔導研究部が色んな魔法を的に当てている。


(実際に通ってた頃は日本に帰りたくて必死で。全然この世界での学園生活は楽しめなかったけど、こうやってみたら異世界ならではの部活も楽しそうだったなぁ。)


そんなことを思っていると後ろから声がした。


「嘘…。退学したんじゃなかったの?」


声をかけてきたのはモモ•ブランディア子爵令嬢だった。なんだかこの前と違って覇気がない。

 前はちょっと得体がしれなくて怖かったけれど不思議と恐怖は感じない。

 今となってはどうでもいいけど、この子にも辛酸を舐めさせられたな…。


 隣のニーナを見ると、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしている。まぁ、そうだよね。


「今日は荷物を取りに来ただけだよ。もう貴女にも会うことないと思う。」

そう伝えて通り過ぎようとすると、『待って!』と呼び止められる。

 

「…アヤネに何の用ですの?」

とニーナが聞くと、ブランディアさんは食ってかかってきた。


「うるさいわね!私は宮野さんと話したいのよ。悪役令嬢のあんたは黙ってなさいよ!」


「ねえ。ブランディアさん。その悪役令嬢って何?ニーナに失礼だから謝りなよ。」

私がそう言うと、ブランディアさんは困惑した表情になる。


「宮野さん、『恋剣』やったことないの…?」

コイケン?何それ。

「何それ。知らない。」

私が言うと、ブランディアさんがめちゃくちゃ興奮して捲し立ててくる。

「めっちゃ流行ってた漫画が原作のゲームだよ!CMだってめちゃくちゃやってたのに!!」


ん?CM?漫画?この人、もしかして…。

「ねぇ、あなたってもしかして日本人なの…?」


「…日本人どころか同じ高校だよ!A高校2年3組の『新條しんじょう 桃花ももか』だよ!」


え…。新條さんって…。


「…日本史の期末テストで私が何回か負けた人じゃん!」

いつも総合では私が一位だけど、日本史だけ何回か負けた事がある。それが新條さんだった。


「…嘘でしょ?宮野さんが私()()()のこと、知ってたの?」

なぜか、新條さん(だった人?)が呆然としている。


「…アヤネ、知り合いだったんですの?」

ニーナが驚きで目を見開いている。


「うん。同じ高校の人だった。でも、見た目は多分違う人だけど。新條さん、どういう経緯でこの世界にいるの?」


私が聞くと、何故か少し気まずそうに新條さんが話し出した。

「私、学校の帰り道、不思議な男の人に話しかけられたんだ。びっくりして固まってる間に多分車に轢かれて。この『モモ•ブランディア』の身体に入ってたの…。」


あらら、泣き出しちゃったよ。



「それって。…アヤネ、もしかしてこの子が『憑依者』なんじゃないですの…?」



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