【間話23】心ときめく出会い〜月谷レオナ視点
◇◇月谷レオナ視点
今日は金曜日。
私がこの世界に来てから10日が経ちました。
『ニホン』での生活は、それはもう充実しております。正直もう元の世界には帰りたくありません。
今日も朝何気なく『テレビ』なるものをつけると。
『このうどん、シッコシコで美味しいー!』
『雨に濡れちゃわないように気をつけてくださいね。』
『この焼きそばソース、ぶっかけちゃって下さい!!』
とまあ、朝から若い娘さんがいかがわしいワードのオンパレードです。
(ああ!なんて素晴らしいの!)
私の部屋にはアマンゾで買い漁ったエロDVDがズラリと並んでいます。
しかしここはむっつりスケベな私です。ケースだけフリマショッピングアプリで『アライグマのオスカル』のものを購入して入れ替えました。
これで私は傍目からはむっつりスケベではなく、ただの『アライグマ』好きな女です。
最近は『ニホン』の国語辞典を購入して、勉強をしています。せっかくコージに日本語を読めるように『最適化』してもらったのですもの。ちゃんと有効活用しなければ!
•そうにゅう【挿入】…名詞: 中にさし込むこと。はさみ込み。
• がったい【合体】…名詞:
①二つ以上のものが一つに合わさること。
②心を一つにすること。
覚えた言葉には忘れないように線を引きます。
ああ、今日もとても勉強になりました。
すると、テレビから元気な声が聞こえます。
『超合体!トレインレンジャー!!!』
キャー!破廉恥ですわ!
今日は近所のスーパーでお買い物してきましょう。
お昼くらいにエーコさんが最近疲れて寝てばかりいるというコージ君を連れて、遊びに来てくださいます。
ついでに料理も教えてくださり、一緒に食べる予定です。
◇◇
スーパーではナスときゅうりを購入しました。まあ、これは丁度いい大きさですね。
あ、おもてなしにケーキでも買ってしまおうかしら。
そう考えていた時でした。
(…臭いわ!!!)
隣をプーンと芳しい香りがしました。見ると、髭面の大きな身体の男性が買い物籠に大量の食料を入れています。
思わず目が釘付けになってしまい、ジーッと見ているとニタァッと下卑た笑いを浮かべました。
(…!!!!)
トゥンク…。私の胸が高鳴りました。
(タ、タ、タイプですわーーーーーーー!!!!!)
思わず、その男性のコートの端を握ってしまいました。
「あぁ゛ん?なんだ、姉ちゃん。」
男性は訝しげな顔で私を見てきました。その蔑むような表情にゾクゾクします。
「お、お友達になりたいです!!」
気付いたら私はそう言っていました。
男性は目を見開いて固まっていました。
◇◇
もう少しでエーコさんとコージがやってきます。
フンフフーン。私はソワソワと準備をしながら気付くと鼻歌を歌っていました。
あの後私は男性のlimeの連絡先を無事ゲットしました。
うふふ、彼の名前は『サダオ•ヤマノ』さん。少し脇の臭いがツーンとする私の理想の男性です。
今度サダオさんのお家に遊びに行くことになっちゃいました。なんでも、私を見て一言、こう仰ったのです。
「…姉ちゃん。お前さんの身内が危険な目に合う可能性がある。今度見せてやりたいもんがあるから、俺んちに来い。」
キャー!一体何を、ナニを見せてくれるのーーーーー!!!!そこで、めくるめく体験が出来るのかしら!!私は心の中でキャーキャー言いながら転げ回っておりました。
ついつい興奮して『危険な目に遭う可能性』というワードは頭から消し飛んでいました。
「ピンポーン!!」
あらあら。もうエーコさん達が来たのね。
「はーい。」
私はエーコさんとコージを出迎えに行きました。
「ごめんなさい、レオナさん。遅くなっちゃいました!お腹減りましたよね。すぐご飯一緒に作りましょう!」
◇◇
今日は『みーとそーすすぱげってぃ』を作るそうです。
なんでも、『わんぱん』で手軽に作れて美味しいからだそうです。
『わんぱん』って何かしら?パンティー1つという意味かしら?
いそいそと脱ぎ始めた私をエーコさんが慌てて止めます。
「…レオナさん!!多分『わんぱん』の意味、間違ってます!」
詳しく聞くと、どうやらフライパン1つのことだったようです。きゃ、恥ずかしいわ。
エーコさんが説明してくれます。
「まずはセロリとマッシュルームをみじん切りにして牛ミンチと一緒にバターで炒めます。しんなりしてきたら塩胡椒を振って…そう!!いい感じです。それからホールトマトと中濃ソースと顆粒コンソメとワインを入れます。
グツグツしてきたらお水とパスタを入れます。あとは煮込んで麺が好みの硬さになったら完成です。」
出来上がったパスタを3人で食べます。
「まあ!美味しいわ。自宅でこんなに美味しいものが手軽に作れるなんてすごいわね。」
私が言うと、エーコさんが嬉しそうに笑います。
「はい。パスタは早く出来るし簡単なので。今度は一緒にキノコの和風パスタでも作りましょうか。」
確かにパスタなら私でも出来る気がしてきました。
エーコさんは一番簡単だというタラコのパスタのレシピを教えて下さったので、今度作ってみることにしましょう。
食後、ケーキを食べたらコージ君が眠たがったので私のベッドを貸してあげました。
「レオナさん、ベッドすみませんね。ありがとうございます。」
エーコさんが申し訳なさそうに頭を下げます。
「全然いいのよー。それにしても一体どうしちゃったのかしらね。『コピー』のスキルも消えちゃったんでしょ?スキルを『得た』はたまに聞くけれど『消えた』は初めて聞いたわ。」
私がそう言うと、彼女は表情を曇らせました。
「そうなんですよね。心当たりもないですし。変な事にならなければいいんですけど。」
「きっと大丈夫よ。貴女も祥志さんもいるじゃない。それにアヤネ様だって。何かあればムーンヴァレー家だって総出でコージをサポートするわ。」
そう言うと少しホッとしたのかケーキをもぐもぐした後棚を見て『わぁ!』と懐かしそうに言いました。
「レオナさん!オスカル好きなんですか?!懐かしいー!!これ、私が子供の時流行ったんですよね。良かったら今見せて頂いてもいいですか?!」
いやぁあああああ!!!
「あ、えーと、、今買ったばかりの『でぃーぶいでぃーぷれいやー』の調子が悪くて…。」
「あ、そうなんですね。もしかして中古とか買っちゃったんですか?レオナさんって、お嬢様なのに、倹約家で素敵ですね。」
そう言って私を尊敬の眼差しで見てきました。
…そんなにキラキラした眼差しで見ないで欲しいわ。




