【51】お誕生日会前の『魔王訪問』作戦会議!
夕方5時。
今日はこうちゃんのお誕生日だ。
朝からご馳走を作って、プリンケーキをデコレーションして頑張った。祥志も今日は2時間休みを取って、お部屋の飾り付けをしてくれている。
ピンポーン!
「はーい!!」
インターホンを覗くと彩音ちゃんとニーナちゃんとシリウス君がいたので玄関のドアを開ける。
「おお、3人とも無事帰って来れて良かった!お帰りなさい!!」
せっかくなので、公爵家の皆さんとレオナさん、そして宮野家の皆さんも呼んだのだ。
ただ、ケネスさんとダイアナさんは流石に王宮で独立に伴い色々な手続きをしているので欠席。
宮野さん夫婦は残業が終わり次第来るとのことだった。どっちかと言うと彩音ちゃんに会いたいんだろうな。
「昨日の夜帰ってきたんです。これ、僕達3人からコージ君にお誕生日プレゼントです!」
シリウス君に渡されたのは、小さな石が付いたネックレスだった。
「ネックレスの石に魔力を込めてお守りにできるんです。術者によって、効果が多少違うそうなので、今回は一番レベルが高いアヤネさんに魔力を込めてもらいました。」
!!それって聖女様の守りの石じゃん。めちゃくちゃご利益ありそう。良かったね、こうちゃん。
玄関で彩音ちゃんに直接ネックレスをかけてもらってこうちゃんは『ありがとう!』と言って嬉しそうにしている。
「3人とも本当にありがとう!こうちゃんよかったね。さぁ、入って入って。」
そう言ってテーブルに着席して貰った。祥志も飾り付けが終わったみたいなので、一緒に座ってもらう。
とりあえず、一樹くんとレオナさんが来るまでお茶とスナック菓子だけ出しておこうかな。
私はエビ煎餅とチョコとポテチを菓子鉢に盛り付けた。
「はい、どうぞ。それより、町に討伐しに行ったのってドラゴンだったんだね。一樹君に聞いたよ。大変だったね。」
「いえ、そうでも無かったですわ。アヤネがスパーン!と首を切って下さったもの。」
何故かニーナちゃんの方が誇らしげだ。
「でも、タイミング良くなかなかドラゴンが出てきてくれなくて。野営をしてわざと火で肉を炙ったりして誘き寄せたんですけど、むしろそういう手間が大変でしたね。」
シリウス君がそう言うと、彩音ちゃんが頷く。
「確かに。テント張ってみんなで交代で寝ながら張り込みしたもんね…。」
祥志と2人で相槌を打っていたらこうちゃんが
「まんまー、電車見たい!電車!テレビ点けていい?」
と聞いてきたので、『もちろん!』と答えて点ける。
すると、メールのマークが右上にあるのを見て思い出し思わず大きな声をあげてしまった。
「あ!!私彩音ちゃんのスキルのことちゃんと神様から返事来たのに言ってなかった!ごめん!」
「あ、そう言えば。結局『強制ログアウト』ってなんだったんですか?」
そう聞かれたので、『憑依者』の乗っ取りを弾くスキルだと教えてあげた。
「えっ。だとしたら、スキルがもし無かったらアヤネが別人に乗っ取られてたってことですわよね?!」
ニーナちゃんが驚きの声を上げる。
彩音ちゃんも隣で『…怖っ!!!』と青ざめている。
「そうなんだよね…。神様は彩音ちゃんを『ヒロインの器』って言ってた。
ちなみに、自分以外にも憑依されてる人がいたら元の世界、つまりに私達の世界に憑依者を戻せるスキルらしい。」
そう答えると、シリウス君が考え込んでからこう言った。
「うーん、元に戻せるってことはつまり、憑依者の『本体』はニホンにいるってことですよね…。
そもそも『憑依者』って本人が望んで乗っ取りしてるんですかね。メールの内容だと、憑依者が複数いる可能性について書いてますけど。
そんな特殊なスキルを持つ人が『ニホン』には沢山いるんですか?」
そう言われて祥志が答える。
「いやいや、そんな奴いっぱいいたらヤバいでしょ。絶対いないって!」
それに私も頷く。
「…だとしたら、『憑依者』本人以外に『憑依をさせる』スキルを持つ人がいるってことじゃないですか?」
とシリウス君が言う。
なるほど!それなら辻褄が合う。
「でも何の為にやってるんだろうね。自分は憑依しない訳じゃん?誰かを憑依させて何が楽しいんだろうね。」
祥志がそう言うので、みんなで『うーん。』と考え込んでしまう。
「とりあえず僕達の世界の方でも憑依されてる人がいないか、探してみますね。」
シリウス君がそう言ってくれたのでお願いしてしておいた。
「それにしても、魔王の所にも行かなきゃいけないのに、やる事が山積みだねぇ…。
最近モンスターもさらにいっぱい出てきてるみたいだし。」
そう言うと、彩音ちゃんが頷く。
「ちなみに栄子さん達、レベル今いくつになりました?私、カーネル王宮にいた時資料を読んだんですけど。
レベル100程度になっておけば取り敢えず問題ないかなと思うんですよね。大体今までの聖女様はそれくらいで魔王討伐に行ってたみたいなんで。それに今回は話し合いだけですし。
だから、みんなレベル100超えたら早いとこ行っちゃいません?」
「あ、本当?じゃあもう少しで行けそうだよ。家族みんなレベル80近いからね。
…ただなー。平日は基本的に日本だし、なかなかレベル上げ出来ないんだよね…。」
そう答えると、ニーナちゃんが提案してくれた。
「それなら一回父に魔王のところに行くまでは、栄子さんのお仕事はランチだけに出来ないか交渉しておきますわ。それならレベル上げの時間ができるでしょう?父だってさすがに魔王をどうにかするのを優先してくれると思うんです。」
それはありがたい!私はニーナちゃんにありがたくお願いしたのだった。
スケジュールとしては次の週末でレベルを上げて、もし100を超えたら、再来週に魔王の所に行こう、ということで話はまとまった。
ちなみにグングルマップの検索ウィンドウに『魔王の家」と入れたら本当に出てきた。
場所はガルバン辺境伯領と隣国の国境辺りである。
…魔王ってプライベートをそんなに垂れ流しでいいんだろうか。
車の定員が5名なので、メンバーはうちの家族と彩音ちゃん以外にあと1人誰か行ける。
公爵家から300キロ程度だったので、どちらにせよその週は仕事をお休みしなきゃいけないから、メンバーはケネスさんにも相談して決めようということになった。




