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【間話22】『ヒロイン』になれなかった私。〜???視点


◇◇???視点


 鏡の前で戸惑っていると、昨日話しかけてきた男の人の声が聞こえた。


『おーい。聞こえるかい?


 ごめんね。本当は【ひろいん】にさせてあげたかったんだけど、予想外のことが起きてしまって弾かれてしまったんだ。ッチ。これも全部【アイツ】のせいだ。とりあえず、親友キャラにさせてあげたから、存分にこの世界を楽しむといいよ。


 それじゃ、またね。』


一方的に捲し立てると、声はしなくなってしまった。


 あの人は神様か何かだったんだろうか。



 改めて鏡の中の自分を見ると、眼鏡をかけていて色味は茶髪•緑の目で落ち着いてはいるけれど親友キャラなだけあって十分可愛らしい顔立ちだ。


 しかも、戦闘時はヒロインと一緒にマニュアルでプレイする事も出来るし、ヒロインのルートさえ確定してしまえばそれ以外の攻略対象の誰かと恋人になる事ができるのだ。


 出来れば、『ヒロイン』には第二王子のマティアスを選んで欲しい。そうすれば、()()他の攻略対象を選び放題になるからだ。


 全員婚約者がいる設定だったけど、所詮ゲームの世界だから関係ないはずだ。


 地味で陰キャだった私が人生で初めてイケメンにモテモテになるチャンスが巡ってきた。


 私は期待に胸を弾ませたのだった。


◇◇


 学園に行くと、『ヒロイン』であるはずの聖女は、宮野彩音そのままだった。


(見た目が同じだけとか?ううん、考えてみればモモ•ブランディアになる前に見た夢が妙にリアルだった。)


 それに、あの男の人も言っていた。『予想外のことが起きてしまって弾かれてしまった』と。


(つまり、()()本当は宮野彩音の中に入る予定だったのよね。)


 ずっと願っていた事が邪魔されたことが残念だったが、せっかく親友役になれたのだ。


 このチャンスを逃さない手はない。出来れば私は騎士団長の息子である『カイ』と恋人になりたかった。

 どことなく、少し佐渡君と雰囲気が似ているしね。


 私は数日間はゲームに出てきた元の『モモ•ブランディア』っぽく振る舞いながらも、宮野彩音の様子を探っていた。


 そして、ある日トイレでなるべくリア充っぽく見えるように話しかけてみた。内心は必死だった。


「ヒロインのアヤネだ!親友のモモになれるなんて嬉しい!ねー、アヤネはマティアスとリュクスとカイとシリウスなら誰にするの?その人と魔王討伐の旅に出るんでしょ?」


 すると、宮野彩音は困惑した顔をしている。


…あれ?日本から来た本人だと思ったから『恋剣』を知ってる前提で話しかけてしまったけれど。


 もしかしてゲーム、やってなかった?


「えーっと。そういう話は聞いた事がないけれど。あと、ブランディアさんと親友になった記憶もないけれど。誰にするのってどういう事かな。今言った人達、全員婚約者いるよね?聞かれたら誤解を招くような事言わないで欲しいんだけど。」


 あ、この喋り方。やっぱり間違いない。A高校2年4組の宮野彩音だ。


 少し心の中にイラつきを覚えながら必死に話す。


「ううん、私は貴女と親友ポジのキャラなんだよー。貴女がルートを絞ってくれさえすれば、貴女が選ばなかった攻略対象と私がくっついて4人でダブルデートとか出来るの。ちなみに私のお勧めはマティアス!彼を選んでくれたら私が他の攻略対象誰でも選べるようになるんだよね。これからよろしくね!」


よし。言いたい事は言えた。

 だから、さっさとマティアスを選んで他の攻略対象を私に回してね。


 どうせ貴女は誰も好きになんてならないんでしょ?だったら譲ってくれたっていいじゃない。


 それなのに、宮野彩音は、


「あー、ちょっと忙しいからすみません。」

と言って足早にいなくなってしまった。


◇◇


 宮野彩音からアプローチしたのは失敗だったかもしれない。

 

 私は次の日、食堂の窓際でマティアスの婚約者で『悪役令嬢』のニーナ•ムーンヴァレーを発見した。


 写真のような魔法で、鳥か何かを撮影しているようだった。


「ねえ、ニーナ•ムーンヴァレー。写真を撮ってたんだから今大丈夫よね?」


私が話しかけるとニーナ•ムーンヴァレーはムッとした顔をした。


 ゲームのキャラの癖になんだか腹が立ったので、言いたいことを言ってやる事にした。


「私、アヤネ様と同じクラスで親友なんだけど、マティアス様と彼女、最近いい感じなんだよね。」


そう言うと、彼女は一瞬キョトンとした後、少し小馬鹿にしたような表情になった。


「まあまあまあ!それは本当かしら。」


その表情が、私を見て『ださ〜い』とバカにしていた中学の時のクラスメイトの女子の表情と重なり、私は思わず食ってかかっていた。


「何よ、その表情!悪役令嬢のあんたなんかより、アヤネ様はマティアス様とお似合いなのよ!」


そう言うと、ニーナ•ムーンヴァレーは一瞬溜息を吐いたあと、ニヤリと笑った。


「失礼な事をおっしゃらないで!アヤネ様とお似合いなのはこの私よ!ホーッホッホッホッ!」


と高笑いを始めてしまった。


 なんだか、ゲームの内容とズレが生じている…?私は少し心の中で焦りを感じていた。


◇◇

 次の日、こうなったら周りから固めてしまおうと思った私は、わざと大きな声で、教室で宮野彩音に


「悪役令嬢のあんたなんかより、私の親友でヒロインのアヤネの方がマティアス様にお似合いだってニーナ•ムーンヴァレーに言っておいたよ。」


と伝えた。


 宮野彩音は目を見開いて固まっていたが、マティアスは満更でもなさそうだった。


 なんだ。なんだかんだで攻略進んでるんじゃん。

 

「殿下は陛下から異世界から来た私の庇護を頼まれているだけで、私達の間には何もない!ムーンヴァレー様におかしなこと言わないで!」


宮野彩音は必死で弁解したが、その日のうちにあっという間に噂は広まった。


◇◇


 しかしその日の夜、水鏡魔法でブランディア子爵夫妻、つまりモモの親から寮の自室に置いていた水瓶に緊急の連絡がかかってきた。


「お前は一体何をやっているんだ!


 ムーンヴァレー公爵家から正式な抗議が来た。

 令嬢に失礼な事を言ったばかりか、婚約者のマティアス様と聖女様の浮気の噂を流したのはお前だと言うのは本当か?!

 お前のせいで子爵家の一番よく使う交易のルートを一時的に断たれた!

 …お前は、兄や妹の事をきちんと考えられる優しい子だったはずなのに何でこんなことをしたんだ…。


 お前には卒業後は修道院に入ってもらう。それで公爵家に手打ちにしてもらう。残念だがもう決定事項だ。」


 そう言われて私は頭の中が真っ白になった。


(え…。私は攻略対象と恋人になるんじゃないの…。修道院なんて入ったら男子禁制だから無理じゃない…。あ、でも、所詮ゲームだから大丈夫か。でも…。)


 あれ…。私、そう言えば、戻り方、あの男の人に聞いてない。どうやったら戻れるんだろう。


 というか、私、意識を失う前、車にぶつかった…?


 じゃあ、私って、もう戻れない、の?


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