【50】一樹君との再会とお誕生日ケーキ作り
朝起きてカーテンを開けたら、いつもの見慣れた住宅街に戻ってきていた。
うーん、何度見ても不思議だね。
明日はなんとこうちゃんの2歳の誕生日である。今日は買い出しや料理をする予定だ。
あとは、ケネスさんから憑依者の調査を頼まれたので、スマホで有名な超能力者をピックアップしてみようと思う。
魔法もせっかくこうちゃんのお陰で使えるようになったのに、全然実践出来てないな…。
次の土日で家族で練習するか、平日なら人が居ない山奥にでも行って実践するしかないかもしれない。
今日のお弁当はスープジャーに昨日のカレーを入れて、違うタッパーにご飯を盛り付けるだけなので楽ちんだ。
カレーを温めながらノートに、
◇◇
『著名な超能力者リスト』
• ユリコ・ゲラー(金属を曲げる)
•ギーボ・アイコ(イタコ)
•サダオ・ヤマノ(千里眼)
◇◇
と早速書いていく。
ちなみにこの3人の中で誰かに当たるとしたら近所のスーパーで目撃情報のあるサダオからかな…。
イタコも憑依者としては怪しいけれど、青森まで行くのは大変だしね。
さて。カレー弁当が出来たので、朝ごはんを作る。
今日はタラコとチーズおかかのおにぎり、豆腐とわかめの味噌汁、だし巻き卵を作った。異世界に最初に来た日に作ったのと同じものである。
あとは、きゅうりと大根の浅漬けと納豆を出した。
「祥志、こうちゃーん!朝ご飯出来たよー!」
◇◇
祥志を見送ってから、こうちゃんと2人で大型スーパーにやってきた。
お誕生日のメニューは洋食か中華で迷っている。とりあえず実際に食材を見て決めようと思っている。
とりあえずフルーツと卵と牛乳と生クリームは絶対に買わなければ。
アンパンの顔のキャラのカートにこうちゃんを乗せて、食材売り場をウロウロする。
あ、苺がちょっと安い!お誕生日だから奮発してシャインマスカットとブルーベリーも買っちゃおうっと。
普段買わないお高いフルーツを買ってウキウキ気分で買い物していたら、こうちゃんが『なめこー!!!!』と叫んだ。
「あ、こうちゃん、なめこはまだお家にあるから買わないかな。」
必死で宥めるものの、
「なめこ、食べたい…なめこ、食べたい…。」
と言いながら泣き出してしまった。
他の買い物客にジロジロ見られて少し動揺していたら、聞き覚えのある優しい声がした。
「ほら、晃志君。これあげる。」
顔を上げるとジュースを持った一樹君だった。
うおお!助け方もイケメン!お好み焼きパーティー以来だね!
その後の近況も気になったので素早く会計を済ませてみんなでフードコートでランチをする事になった。
◇◇
「一樹君、その後ご両親は元気?」
私が天津飯を食べながら尋ねると、一樹君は笑顔で答えてくれた。うん、卵がトロトロでなかなか美味しい。ちなみにこうちゃんにはお子様ラーメンを頼んだ。
「はい!元気ですよ!本当立花さんのおかげです。本当にありがとうございました。
最近はlimeに送られてくる彩音の画像を見て家族で盛り上がってます。」
そう言って、あんかけ焼きそばを食べながら彩音ちゃんの近況画像を見せてくれた。
空を浮きながら大きな赤いドラゴンを聖剣で貫く彩音ちゃんの動画や、ニーナちゃんと2人で撮った自撮り、野営をしながら他の兵士の人達とご飯を食べる姿が映っている。
なお、動画の撮影者はニーナちゃんらしく、
「キャー!アヤネ!めちゃくちゃカッコいいですわああ!!!!」
と黄色い声援が入っている。そして、それに答えて彩音ちゃんはピースしている。
おお…。例のケネスさんがもう一つの町に現れたって言ってたモンスターってドラゴンだったのね…。流石にこれは車があっても倒せる気がしない…。
「ひゃー。彩音ちゃん、凄いね。この前鑑定したら既に凄いレベルになってたけど、さらに強くなってるんだろうなー。」
「何だか特撮みたいですよね。でも、頑張ってる彩音を見たら元気が湧きます。
僕も最近実習ですぐそこの大学病院にいるんですけど、なかなか大変で。
僕の担当でまだ高校生なのに植物状態の『モモちゃん』っていう患者さんがいるんですけど…。ご本人もそうですけど、ご家族が気の毒で。いつも疲れた顔をしていて娘に何か呟いているんですよね。どうにか元気づけたいんですけど、なかなか…。」
そう言って悲しそうに俯いた。
「あー、それは…。なんて声をかけていいかわからないね。…せめてみんなで『モモちゃん』が目覚めるように祈っておこうか。私も!知らない子だけどさ。」
私がそう言うと、『そうですね…。』と少し辛そうに微笑んだ。
あー…。優しいのはいい事だけど、深入りしすぎちゃってメンタルやられないか、おばちゃん心配だよ…。
◇◇
家に帰ってこうちゃんをお風呂に入れたら昼寝してくれたのでお誕生日ケーキ作りに取り掛かる。
まだ2歳なので、あまり生クリームを使いたくないのでスポンジの上にプリンが乗った『プリンケーキ』だ。公爵家でのおもてなし食事会でも作ったものだ。
バターを塗った底が抜けない型にカラメルソース、プリン液を入れて、スポンジケーキの生地を流し込む。不思議とプリン液の上にケーキ生地が浮いて二層になる。
天板に60度くらいのお湯と綺麗な布巾を入れた上に型を乗せてオーブンで150度で1時間蒸し焼きにして、2時間冷やせば出来上がりだ。
ケーキを焼いている間に夕飯の和風ハンバーグだねとお味噌汁と大根おろしとじゃこと豆腐と水菜サラダを作っておいた。
ちなみに、ハンバーグのお肉はこの前ルーナ村の近くの森で倒したレッドオークの肉をフードプロセッサでひき肉にしたものだ。今回は味噌とマヨネーズ、胡椒とナツメグ、卵、牛乳、パン粉を入れた。
サラダはちりめんじゃこをフライパンでごま油で炒ってお醤油で味付けする。使うお豆腐は木綿がおすすめだ。
◇◇
夕飯が出来上がった頃にはプリンケーキも焼けて、祥志も帰ってきたのでこうちゃんを起こして夕飯にする。
「「「頂きまーす!!!」」」
うん。ハンバーグ、ジューシーに焼けていて美味しい!
こうちゃんも美味しそうにサラダを食べてくれている。このサラダだけはじゃこ好きだから沢山食べてくれるんだよね。また作ろうっと。
「そういえばこれ、オーク肉なんだけど、わかった?」
「え、マジで?!全然気付かなかった。めっちゃ旨い。」
そう言って祥志が嬉しそうに食べてくれている。
「本当?!じゃあまた取りに行こー!」
そう言えば、ブラウンボアとキングクラブも解体しなくちゃいけないし、また、ルーナ村にも行ってみようかな。
◇◇
ご飯も食べ終わって、冷やしたプリンケーキを型から取り出した。
うん!なかなか美味しそうに出来ましたよ。スポンジがいい感じでカラメルソースを吸収している。
明日フルーツでデコレーションして食べるのが楽しみである。




