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【間話19】新しい幕開け〜ケネス•ムーンヴァレー公爵視点


◇◇ケネス•ムーンヴァレー公爵視点


「…これで、満足しましたか?」


フランク王太子はクリスピア陛下とリリス王妃が騎士によって無理矢理退出させられるのを見届けた後、ぶっきらぼうに言った。


「ああ。上出来です。…貴方には辛い思いをさせてしまった。」


きっと自分の母の醜悪な姿を見て、思うことがあったに違いない。

 隣でダイアナも同情するような目を向けている。


「いいですよ。とっくに知ってましたから。こうやって実際に見てしまうと、…まあ、きつい部分もありますけども。それに、私には隣国から嫁いで来てくれたしっかり者の妻もいますから。

 

 こちらも今までの王族の非礼をお詫びします。申し訳ありませんでした。


 条件も可能な限りは全て譲歩致しましょう。


 でも、約束して下さい。母のことを世間に流すことだけは勘弁して下さいね。」


そう言って苦しげに笑ったのだった。


◇◇


 私とアルバートはエーコ殿から『監視の魔道具』を受け取ってからすぐに行動を起こした。


 アルバートはすぐに文官達に対して聞き取り調査を行い、証言や署名を集めた。


 それが引き金となり、文官だけではなくメイドや騎士も含めた大規模なストライキへと発展した。


 メイドの中には彼氏を王妃に寝取られた者も多かったようだ。


 そして、アルバート経由で王太子にコンタクトを取り、事の次第を説明し、監視の魔道具の映像を見せた。


 はじめはフランク王太子も曖昧な態度を取っていたが、さすがに魔道具の内容を新聞社に持ち込むと脅すと、こちらの望むように動いてくれた。


 少々気の毒には感じたが、罪の無い民の血が流れなくて済むのであれば、これが最善の選択であったのだと思われる。


 …本当に証拠を押さえて下さった姉上には感謝しかない。


◇◇


 私達は、王太子の私室へと通され、部屋には防音の結界が張られた。そこでフランク王太子が淡々と話す。


「どうぞ。座ってください。ええと、まずは『王命』の権限についてですね。


 そもそも今まで理不尽な婚約や税制が適用されていたのは審査するはずの議会が陛下の傀儡になっていたからです。


 要は素通りしていたんですよ。


 だから一度議会を解散して、公正な立場の者から集めれば解決すると思います。」


これに私達も頷く。


「あとは、教会ですね。神官に関してはその領地ごとに対応させる権限を与えましょう。


 独立後の貴方達の国の教会に関しても同様です。ただ…。」


「ただ…?」

私が先を促すとフランク王太子は苦笑する。


「まあ、聖女や魔王の情報に関して、相談したい部分がありまして。

 もちろん貴方達には今話しますよ。むしろそれを踏まえてお知恵を頂いてもいいですか?


 全国民に話してしまうと国として立ち行かなくなってしまう部分がありまして。」


 フランク王太子はついに秘匿されていた内容を話し始めた。


◇◇


 話された内容は半分は予想通りで、半分は驚くべき内容だった。


 やはり、情報を秘匿して聖女の伴侶となる事で、王族は多大な恩恵を受けていた。


「しかし、本当に『願いを叶える宝珠』なんて存在していたなら、凄い話ですね。」


そう言って宰相であるアルバートが感嘆の声を上げる。


 魔王を倒す事で何らかのスキルを授かることは予想していたが、そんなアイテムが存在し、悪用されていたらと思うと鳥肌が立つ。


「本当のようですよ。まあ、願いを叶えると消滅してしまうみたいなのですがね。


 実際に歴史に少しずつ綻びが生まれてしまっていますし。


 立太子して、この話を初めて聞いた時は複雑な気分でした。これ程長く続いた王朝は初めてでしたが、まさかアイテムの力だったなんてね。」


そう言ってフランク王太子は自嘲気味に笑った。


「これが、知られたらおそらく国が立ち行かなくなってしまう。だから、それだけはご勘弁願いたい。あとは可能な限り友好的に独立を認めるので。


 あと、『進化』のスキル。あれは得体がしれないです。私は弟に与えたくなかった。」


「…なぜ得体がしれないと思ったんだ?メリットはあったんだろ?」


ライゼンが不思議そうに聞く。


「よくよく資料を読むと、『進化』したというよりも、別人になったと考えた方が納得がいく感じなんですよ。」


その言葉を聞いて、アルバートは息を呑んだ。


「まさか…。」


「ええ。代々の英雄となった王族は『異世界の知識を持つ誰か』に身体を乗っ取られてたのではと考えた方が納得がいく感じなのです。


 あんな弟でも自我がなくなるのはどうなのかと思っていて。…本人はちょっと残念な感じなので、何も考えていなかったみたいですけどね。聖女様だって…。」


そう言って、フランク王太子は次に言葉を続けるのを躊躇した。


「聖女殿がどうしたんだ?」

そう私が聞くと、フランク王太子は驚くべき事を言った。


「アヤネ様以外の代々の聖女様も、本当に『ご本人』だったのか、と。


 これはただの憶測ですが。


 資料を見ていたらどうも性格も振る舞いも全く同じ人が、『見目の良い器』の女性に乗り移っていたのではないかと思う言動が多いのですよ。


 私はそれを断ち切りたかった。もう、よくわからない力に振り回されるのはうんざりだ。」


 そう言ってフランク王太子は頭を抱えてしまった。


◇◇

 

 結局、いくつか制約を定めて、民の血を一滴も流す事なく友好的に私達三貴族と、領地内に邸を持つ『寄り家』の貴族はカーネル王国から独立することとなった。

 

 二国間は特に証明書等は必要なく自由に行き来ができる。


 独立国は協議の結果、『ムーンヴァレー王国』となる事が決まった。


 また、カーネル王国もクリスピア陛下とリリス王妃は引退し、フランク王太子が王となることとなった。


 王宮上層部の人事も一掃されて、働き方も改革されることとなった。


 独立日は来年度からということでお互いに合意した。


 ニーナ、シリウス、そしてカイの婚約は、解消となった。また、寄り家含め領地内の貴族の子女は卒業までカーネル王国の学園に希望すればこれまでと変わりなく通うことができる。



 聖女や魔王については機密事項としつつも、二国間の上層部で資料を共有し、調査を進めていくこととなったのだった。


 また、こちらには聖女もおり、これからカーネル王国の税収や武力が少なくなるので、魔王の対策や討伐はこちらで引き受けることになった。


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