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【46】夜のレトロ喫茶での告白とプリンアラモード。

 

 喫茶店に入ると、ピークを過ぎたのか結構ガランとしていた。レオナさんの顔が真っ青なので、目立たない端の方に座る。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」

そう言われて、私はメロンクリームソーダを頼むと、レオナさんに何にするか聞いた。


「こ、このプリンアラモードと、メロンクリームソーダと、いちごショートケーキと、ナポリタンと、コーヒーを下さい…。」


…レオナさん、具合悪そうなのに、めっちゃ頼むな。


「ええと。ここなら落ち着いて話せると思います。レオナさん、忘れ物の話をしたら急に具合が悪くなりましたよね…?差し支えなければ、あの魔道具の中に一体何が入っていたんですか…?」


すると、めちゃくちゃか細い声で何か言われた。


「…が、入っていたの。」


「…え?すみません、聞き取れなくて。」

私がそう言うと、レオナさんはヤケクソになったのか、今度はハッキリとした声で言った。


「…だから!!私のお気に入りのハレンチ動画コレクションが入っていたの!私!むっつりスケベなの!!!」


「む、むっつりスケベ?」


「うっ。だ、誰にも、し、知られたく無かったのにいい、、、」

そう言いながら泣き出してしまった。


「…何でそんなプライベートなもの置いてきちゃったんですか…。」

思わず脱力してしまう。もっと重大なものかと思った。


「うぅ、だって、何日か宿にいて、異世界ではハレンチ動画にもえっちなバナーにも困らないと思ったから元の世界のコレクションは卒業しようと思って…。え、エーコさんもきっと引いたわ、、引いたわよね…。」


そう言ってさめざめと泣くのでハンカチを貸してあげた。


「別に引きませんよ。単なる生理現象じゃないですか。」


そういうと、レオナさんは驚いて顔を上げた。

「それくらい誰でも見るでしょう。うちの夫も普通に見ます!女性だってみんな見ます!この世界には女性向けというジャンルがあってですね…。」


そう説明すると、目を丸くしつつも興味津々でレオナさんは聞いている。


「そ、そうなの。異世界は随分進んでいるのね…!」


「大丈夫ですよ。ケネスさん、レオナさんのこと大好きですから!レオナさんがむっつりスケベだからって嫌いになったりしないですよ!」


そう言うと、やっと落ち着いたらしい。


「そ、そうよね。…今日エーコさんに言えて良かったわ。初めて人に話したのだけどなんだかすっきりしたわ。ホッとしたらお腹が減っちゃった。本当に聞いてくれてありがとう!

 また良かったらご飯でも食べに行きましょう!その、私達、もう友人…よね?」


そう言ってくれたので、『勿論です!』と答えておいた。


 そのあと、レオナさんは注文したものを全部平らげて、プリンアラモードの美味しさに悶絶していた。

 

 昭和レトロなブリキの器には色とりどりのフルーツと硬めのプリンと生クリームに真っ赤なサクランボがのっている。


 ああ、いいですなぁ。このレトロな感じ…!


 なんだか今日の一件でレオナさんの素の部分が見れて仲良くなれた気がする。


 それにしても、レオナさんは初恋もまだで、エロ動画を見てたのがバレたくらいであんなに取り乱すのか。恋愛方面に関しては中学生くらい純粋な人なのかもしれない…。


◇◇


 次の日出勤すると、ジョゼフさんが声をかけてくれた。


「よお、タチバナさん、おはよう。せっかく来てもらったところ悪いんだけどよ。今日奥様と旦那様が朝早くから王宮の方に行っちまったんだわ。お子様方と聖女殿もモンスターの被害が出た村に討伐と治療の手伝いに行っちまったし。

 今日、やる事そんなに無いんだよな…。」



え、ええええ?!そうなんだ…。もしかして、独立に関して何か動きがあったのかな。


「あー…。それなら、ただでお金を貰うのも申し訳ないんで保存の効くものでも作っていきますね。そうすれば皆さん帰ってきた時召し上がれるじゃないですか。ついでにレシピも共有していきますよ。」


そう言うと、ジョゼフさんは嬉しそうに了承してくれた。


 私は普段皆さんの主食のパンに合うおかずと、冷凍が出来るおかずを何種類か作っておくことにした。


◇◇

『本日の作り置きメニュー』

•異世界野菜のピクルス

•『シュラプ』と『ピンキーマッシュ』のアヒージョ

•異世界ベリーのジャム三種

•『リモネ』のはちみつ漬け

•異世界ジェノベーゼソース

•『アージ』の南蛮漬け

•レッドオークベーコンの『イーモ』サラダ

•異世界産卵のマヨネーズ


『冷凍メニュー』

•レッドオークの肉まん

•レッドオークのハンバーグ

•異世界卵のバニラアイスとドライフルーツとナッツのアイス

•クッキー三種


◇◇


 ピクルスは色とりどりの異世界野菜を湯通しして、鷹の爪にそっくりな『レッドペパー』と、胡椒粒、酢、砂糖、ローリエっぽいハーブと一緒に漬け込む。


 異世界ベリーは火を通す前に砂糖に漬けて、水分が出てきたら煮詰めていく。


 『アージ』はそのままアジっぽい魚だ。それに小麦粉をまぶして揚げたものを異世界野菜と一緒に酢漬けにして漬け込む。


 マヨネーズは異世界卵2、塩小さじ1、オイル200g、酢30gで作った。手で乳化をさせるのが面倒だったのでブレンダーで一気にやってしまった。どんどんクリーム状になるマヨネーズをジョゼフさんは興味深そうに見ていた。空気が入らないようにすれば保存用の煮沸した瓶で1週間は保つ予定だ。ちょっと色味が卵の色のせいかピンクっぽい。


 『イーモ』のサラダはもちろんこのマヨネーズを使った。この前うちに来た時にケネスさんが気に入っていたので、胡椒をたっぷり効かせておいた。


 肉まんとハンバーグは昨日多めにレッドオークを挽肉にしたのでそれを使う。

 ハンバーグは玉ねぎと隠し味にナツメグっぽい調味料とマヨネーズ、パン粉とワインと塩胡椒、異世界卵で肉だねを作り、金属バットに一つ一つまるめてたものを入れて、氷の魔道具に収納した。


 肉まんはみんなで頑張って60個作った。肉だねには、ギネシュ、生姜っぽい『ジンジャ』という野菜を使った。

 でも、さすがに必要なごま油と醤油、ベーキングパウダーは持ち込みさせてもらった。


 アイスクリームは生クリームと卵黄、砂糖と異世界のバニラっぽい風味の強いお酒を数滴混ぜてメレンゲにした卵白とサックリ混ぜる。こうする事で数時間おきに混ぜなくても口当たりのよいアイスクリームになるのだ。


◇◇

 

 この日は午前中に沢山調理をして、みんなでお昼に肉まんを賄いで食べて退勤した。

 

 今回はフライパンで蒸し焼きにしたんだけど、底がカリッとジューシーでとっても美味しくできた!

挿絵(By みてみん)

 

 中華味は角煮以外で公爵家で作るのは初めてだったがスタッフの皆さんにも好評で何よりだ。ジョゼフさんは、今度はごま油っぽいオイルを探すと張り切っていた。


 公爵家の皆さんが帰ってきてから美味しく食べてくれるといいなぁ。




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