【44】彩音ちゃんとニーナちゃんの来訪
ケネスさんに休憩に入ることを伝えた私は、家で洗濯機を回し、お煎餅をバリバリ食べながら緑茶を飲んでいた。
ふぅー。久しぶりの仕事は楽しいけれど疲れるなあ。
祥志とこうちゃんはまだ帰ってきていない。もしかしてレオナさんと家具でも買いに行ったのかな?
お煎餅のお供に白の魔導書をめくる。
スキルを優先してたからまだあんまり読めてなかったんだよね。
昨日ようやく時間が出来たので、初歩的な回復魔法を覚えて切り傷を治せるようになった。手の痛かったひび割れが治って感動した。
けれど彩音ちゃんのように浮いたり聖剣を出したり出来ないから頑張らなきゃな。なんてったって家のローンが残っているからね。
そう思いながら『毒消し』の項目を読んでいた時である。
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴った。モニターを覗くと彩音ちゃんとニーナちゃんだった。
「こんにちはー!エーコさん、遊びに来ちゃいましたー!」
そう言って彩音ちゃんとニーナちゃんがニッコリ笑っている。おお、可愛い。
「どうぞ、上がってあがって。おばちゃんとお煎餅たべよっか。」
昨日掃除をしておいて良かったわ。2人にも煎茶を入れて、お煎餅を勧める。
「頂きますわ。さっき栄子さんの作ったチーズケーキも食べました。ベリーのソースと濃厚なクリームがマッチしていて絶妙でしたわ!このオセンベイもとっても美味しいです!」
そう言ってニーナちゃんはお茶を啜る。褒めてくれてありがとね。感無量だよ。
「やー、公爵邸に来てから食のレベルがめちゃくちゃ上がりました!って、あれ?栄子さん、それってもしかして白の魔導書ですか?」
彩音ちゃんがこちらを覗き込んでくる。
「そうそう。私も属性が『白』だからさ。魔王のところに行く前に早く読まなきゃいけないんだけど。彩音ちゃんは読み終わったの?」
私が尋ねると、彩音ちゃんは近況を教えてくれた。
「はい!なのでここ数日はニーナとシリウス君と修行してます。あと、公爵様が今忙しいので被害の出てる村へモンスターの討伐や治療を代わりに手伝いに行くすることにしました。
『白』はレベルさえ上がっちゃえばコツさえ掴めれば簡単ですよ。頭の中に公式や陣を練るようなこともないですしね。一応私、前の聖女の人が魔王を倒した時よりレベルが高いので、一通り使えますよ。」
すごいなぁ。もうそんなに戦えるのか。
「そうなんだ。あの、良かったら彩音ちゃんとニーナちゃんを鑑定させてもらっていいかな?」
「いいですよー。」
許可を貰えたのでグングルピクチャーを起動する。
パシャ。
『宮野 彩音(17)Lv121 聖女。A高校2年。インドの文化に興味あり。趣味はランニングとヨガ。憧れの人はダルシム先輩。好きな食べ物はフルーツ。属性は白。
【スキル】強制ログアウト』
だ、ダルシム…?日本人?インド人?
『ニーナ•ムーンヴァレー(17)Lv52 公爵令嬢。情に厚いが、敵に回すと恐い。趣味は写真撮影。宮野兄妹が大好き。好きな食べ物はお好み焼き。属性は火。』
お好み焼き…!気に入ってくれたんだ!嬉しい…!
「ひゃー。彩音ちゃん、レベル121なの?!100超えてる人初めて見た…。というか、スキルも持ってたんだね!」
一体何匹モンスターを倒したんだろ?というか、車もなしに自力で倒したとか、半端じゃないね…。
「え…スキル?」
彩音ちゃんはキョトンとしてる。
「…え?もしかして知らなかった感じ?」
私がそう言うと、何度も頷いている。おおお、そうなのか。
「…ニーナちゃん、この『強制ログアウト』っていうスキル知ってる?」
私が尋ねると、ニーナちゃんも首を横に振った。
「聞いたことがないですわね…。まず、『ログアウト』がなんなのかわかりません。」
…ここは、神様に相談だ。テレビをつけて、宛先をタッチして『強制ログアウトってどんなスキルなんですか?』と送っておいた。
そろそろ四時になったので、私は仕事の準備があるので2人には帰ってもらった。
彩音ちゃんになかなか勉強時間が取れなくて困ってることを伝えると、『白魔法で良かったら今度教えますよ?』と言ってくれた。
やったー。これからは都合が合えば彩音ちゃんに魔法を教えて貰えることになった。
◇◇
『本日の夕食 お品書き』
•海鮮ブイヤベース
•異世界野菜と『リモネ』とチキンのサラダ
•色々バケット ハニークリームチーズ、生ハムマーマレード、ジェノベーゼソース等
•ほくほくジャガイーモコロッケ〜オーク肉のミンチで
•異世界梨のコンポート
◇◇
さっきケーキを焼いている間ひたすらコロッケの中身を丸めておいたのである。ちなみに、異世界の芋は『イーモ』とちょっと伸ばすらしい。
ひたすら卵と衣を付けて揚げる!小さめに作って転がしながら揚げるといい色に揚がる。
私がコロッケを揚げている間にジョゼフさんが、チキンをグリルしてくれてたので野菜と『リモネ』と合わせてサラダにする。
ブイヤベースもイカに似た『クラーケン』や、エビに似た『シュラプ』、アサリに似た『サリア』から出汁が出てとても美味しく出来た。
賄いを食べたいけれど、もうすぐ午後6時だ。祥志とこうちゃんが待っているので帰ることにした。
ジョゼフさんが良かったら持っていけよ、と言ってお皿にコロッケを10個程のせてくれたので有り難く頂戴した。
クララさんがワゴンで食事をダイニングに運んでくれたので、私も一緒にダイニングルームに行って公爵家の皆さんと彩音ちゃんに挨拶をしてからお暇した。
皆さん食事を見て『おおー!』って歓声を上げてくれたから嬉しかったな。
どうか美味しく召し上がってくれていますように。




