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【間話17】姉上の無念は私が晴らす!〜ケネス•ムーンヴァレー公爵視点


◇◇ケネス•ムーンヴァレー公爵視点


 王宮との交渉は難航していた。


 姉上の救出の翌日、ムーンヴァレー公爵家•バルガン辺境伯家•ノーリッジ侯爵家は連名で王族に対して『最終通告』をした。


 求めたのは以下の条件だ。


•魔王、そして聖女召喚に関する詳細を開示すること

•貴族への『王命』発令の条件を見直しすること

•議会の人員を入れ替えすること

•教会の神官の実質独り占め状態を廃止すること。


『上記を認めない場合は、我々はカーネル王国を離脱し、三家合同で新たに国を興す。』


といった内容である。


 もしそれが実現すれば、実質カーネル王国の領土は現在の半分となる。


 しかし、王宮側の返答は


•聖女を速やかに返すこと

•求めた条件は全て認めない


という内容だった。


 そして、仮に勝手に独立しようものなら武力を行使するのも厭わない。


というものであった。


 話は並行線を辿り、解決の兆しは見えない。


 新聞社は保守派と独立賛成派に分かれ、センセーショナルに取り上げた。


 このままでは魔王の脅威が広がる中、内乱になってしまう。


 ただでさえ魔物の被害が広がる中で、なんとか罪のない人民の血が流れることは避けたい。

 

 試行錯誤を繰り返しつつ、緊張状態が続いていた。


 楽しみにしていた土曜日の昼食も、なかなか喉を通らず、4回しかおかわりを出来なかった。


 しかし、あのオーク骨スープは美味かった!あれならば、毎日紅茶の代わりに飲んでもいいくらいだ。


 『リモネ』を使った冷製うどんも大変美味で、独特の酸味と旨味が疲れた身体を癒やしてくれた。

 何よりも『ウドン』のコシと歯応えが最高だった!

 ああ、やっぱりもっと食べておけば良かった…。


 頭を抱えていた時に部屋がノックされた。

 

 入室してきたのはエーコ殿で、あの後の姉上の近況を丁寧に報告してくれた。


 うむ。やはり、タチバナ家に姉上を任せて良かった。『シャシン』に写った元気そうな姿に思わず頬が綻ぶ。


 そして、なんとその後『姉上の忘れ物』と渡されたのは、ペンダント型の魔道具だった。


 私の予想が正しければあるいは…。


 エーコ殿が退出してから、私はルーペでじっくりと渡された魔道具を調べた。


 そして。ロケット部分を開いて魔力でキラキラと輝く水晶を見てその予想は確信に変わった。


 これは『監視の魔道具』である。

 

 最近は外部だけではなく王宮内でも王族への不満は溜まっている。部署によっては優秀な文官程すぐに退職してしまう傾向であるらしい。


 あまり公にはされていないが、王宮内で深刻なハラスメントがあるのではと密かに囁かれている。


 ただ、余程高位の貴族がバッグについているのか、宰相であるアルバートの方でも調査をしていたものの、尻尾は掴めないでいた。


 19年間王宮内で仕事をしていた姉上。


 まさか、王宮内の秩序を乱していたものの正体を知っていたのでは…!?


 聡明で優しい姉上のことだ。もし現状を知っていたとしたら憂いていないわけがない。


 そして、もしこの魔道具にその証拠が納められていたとしたら、王宮を内部から崩していく手掛かりとなる。


 それは、もしかしたら内紛を防ぐ為の鍵になるかもしれない!


 私は防音の結界を張って、ロケットペンダントの映像を再生した。


 そこに映っていたのは…。


(…!!やはり!)


王宮に蔓延るハラスメント、そして大スキャンダルの証拠が詰め合わされていたのだ。


 私は姉上のあまりにも素晴らしい先見の明に舌を巻く。


 やはり、姉上は気づいていたのだ。王妃がハラスメントの元凶であるということに!そして、きっと私達高位貴族や内部で働く者達の我慢が限界であることに!

 

 王の伴侶である王妃。文官がどんな扱いをされていようとなかなか訴え出れるはずなどがない。下手をすれば、陛下の怒りを買ってしまうのだから。


(アルバートに連絡をしなければ…!!)


私は急いで水鏡魔法でアルバートに連絡をした。


 詳細を話すとアルバートは顔色を変えた。


『なんということでしょう。王妃様がハラスメント行為をしていたとしたらそりゃ叩いても出てこないはずです…!!」


 急ぎ宰相の権限で陛下や王妃にはわからぬように王宮内で聞き取り調査を行うことを約束してくれた。


 ああ、姉上!姉上の無念は必ず果たします!


 そして、願わくば無血で我らの独立を果たさん事を!


 私は手の平の中でクルクルと光る姉上の想いが詰まった魔道具をグッと握りしめたのだった。



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