【43】完成!異世界うどんと異世界ベリーのチーズケーキ
「出来たー!!!!」
あのあと、往復でなんとか1時間以内で帰って来た私はジョゼフさんと『異世界うどん』を完成させた。
しかも、手打ちですよ、手打ち。何度か趣味で作ったことがあって本当に良かった。
スープは鶏ガラスープとオーク骨スープの2種類。
豚骨の方にはニンニクにそっくりな『ガーリク』という野菜を大量にすりおろして入れる。
トッピングにはオーク肉の角煮と『ギネシュ』というネギそっくりな野菜を白髪ネギ風にしてのせた。
鶏ガラスープの方は塩レモン味である。正確にはレモンにそっくりなら『リモネ』というフルーツだが。
トッピングには低温調理した柔らかい蒸し鶏と輪切りにした『リモネ』をのせて、冷たい状態で召し上がって頂く。
◇◇
『本日のランチ お品書き』
・異世界野菜の天ぷら
・じゅわっと沁みるだし巻き卵〜異世界出汁で
・オーク角煮うどん〜白髪ギネシュをのせて
・さっぱり冷たい塩リモネと蒸し鶏のうどん
◇◇
平日の間、ガーリク、ギネシュなど日本の野菜に似たものを見つけて来たばかりか、色んな魚を燻してカツオに似た『カッツン』という魚を発見してくれたジョゼフさんは本当に凄いと思う。昆布に似た『マコブ』という海藻も隣国から大量に取り寄せしてくれた。
侍女のクララさんが『そろそろお昼の時間ですが準備は大丈夫ですか?』と来てくれたので、ワゴンに出来立てを載せて持って行ってもらった。
さて、今日の賄いは公爵家のみなさんにもお出ししたオーク角煮うどんだ。
ずるるるるっ。
「おお、美味い!まさかオークの骨がこんなに上手いスープになるとはよー。まあ、匂いがすごいのだけは難点だけどな。」
本当は醤油とか味噌と合わせても美味しいけれど、これはこれで上出来である。
他の厨房スタッフも頷きながら食べている。
執事のスティーブンさんやクララさん。他の侍女さん達にもすこぶる好評だった。分厚いオーク肉の繊維にぷるぷるの脂身の食感が皆さんには新鮮だったようだ。
ただ、今回は塩角煮である。やっぱりお醤油味が美味しいよね。
お昼は麺だから、夜はパン系かな。お昼がお肉だったから、お魚なんかもいいかもな。
ちなみに米はこの世界でまだ、見たことがない。スティーブンさんに米のことを話すと、探してくれると張り切っていた。
さあてと、おやつと夕飯の仕込みをしますか。
明日の仕込みも少しして、ちょっと暇な時間は抜け出して明日は家族で異世界ドライブでもしようっと。
◇◇
賄いを食べて15分休憩したらおやつと夕飯の準備をする。
クララさんによると、うどんも大好評だったらしい。
今日のおやつは『異世界ベリーのベイクドチーズケーキ』だ。せっかくだからジョゼフさんに探してもらった『リモネ』を有効活用したいねという話になり。
なお、砂糖は流石に持ち込ませてもらった。こちらの世界では砂糖は大変貴重らしく全然取れないらしいので。
シュガービーツの種が普通にネットでも売っているのでケネスさんの許可を貰って、気候条件の当てはまる公爵領内の農家さんで栽培してもらおうという話になった。
お砂糖は料理にも使うからね。蜂蜜はこちらの世界にもあるけれど、やっぱり使い勝手は全然違う。
本当はレアチーズケーキも作りたかったのだけど、それにはゼラチンが必要である。
ゼラチン作りはオークやボアの骨はすぐに用意できそうだが、石灰処理に2、3ヶ月かかってしまう上にそのあと水洗、濾過、抽出、乾燥などの工程がある。
機械化しないと厳しいだろうな。ケネスさんに先ずはどんな工場を作るか相談しないと。
今は国から独立する調整をしたりで忙しいだろうし、タイミングを見て話さないとな。
さて。それでは作っていく。
土台は塩のあまり効き過ぎていないビスケットを砕いて溶かしバターを混ぜて型に敷き詰める。
その上に異世界産の色んなドライベリーを敷き詰める。目にも鮮やかだ。
チーズケーキの部分はクリームチーズ200gにお砂糖70g.を合わせ、薄力粉30g、生クリーム200ml、『リモネ』の搾り汁30g、卵黄2を泡立て器で丁寧に混ぜる。それを土台に注いで180度に予熱したオーブンで40分焼く。
最後は焼いてる間に異世界産のベリーにお砂糖を混ぜて、ブレンダーで砕いて煮詰めればソースの完成だ。今回はブレンダーを持参してきたけど、調理器具ももう少しあるといいな。ついでに夕飯の下拵えもしておいた。
出来た!
切り口のベリーの色が鮮やかで満足の出来である。
さて。今は2時半。これから2時間休憩が貰えるので一旦ケネスさんに挨拶してから家に戻る。
◇◇
コンコン。
ノックをすると、『入ってくれ。』と言われたのでケネスさんの執務室に入室する。
「おお、なんだエーコ殿か!」
入った途端ケネスさんが破顔する。あー。大分お疲れだな…。
「これから2時間休憩なんで一旦家に帰らせてもらいますね。お食事はいかがでしたか?」
「ああ!最高に美味かった!!あのオークの骨のスープというのが特に気に入った!!」
おお、そんなに気に入ってくれてよかったよ。
「それなら今度私の国であのスープがベースの料理を食べに行きましょう。もう少しで運ばれてくるチーズケーキもきっと美味しいですよ。
それと、レオナさんの家が決まりました。今日は夫と晃志に付き添ってもらって引っ越しです。元気です!」
そう言って焼肉屋さんで3人で撮った写真を見せる。
「おお、そうか!良かった、本当に感謝する!」
ケネスさんは嬉しそうだ。
「あ、それからですね。これ、レオナさんが宿にお忘れになったらしいのですけど、魔道具…ですよね?
私達の世界にはないものだったのでちょっと気になって。取り扱いがよくわからないんですけど、普通に置いておけば大丈夫ですかね?
次会った時にはお返ししようとは思ってるんですけど。」
そう言って忘れ物の魔道具をケネスさんに見せると顔色が変わった。
「…これは!!…すまない。これは私の方で預からせては貰えないだろうか。」
あれ?もしや公爵家に伝わる何かだったのかな?私はもちろん頷いて、ケネスさんの部屋を後にしたのだった。




