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【41】涙の親子うどん事件〜王宮調査官現る。


 はぁー!めちゃくちゃ疲れた!


 でも、結局とんこつラーメンは私達の分もレオナさんが出してくれた。


 今は午後8時半。


 レオナさんと解散したあと、コンビニで朝ごはんを買って家に帰ってお風呂に入ってビールを飲んで、今ベッドに突っ伏している。


 疲労感が半端じゃなかったのでこうちゃんのお風呂は祥志に任せてしまった。

 

 今日は物凄い濃い1日だったなぁ。明日は祥志のお昼ご飯は外食してもらうことにしたから、8時半くらいまで寝ちゃおうっと。


 こうちゃんと二人で普通のシングルを二台並べて繋げたキングサイズのすのこベッドの上に大の字になる。


 あー、布団が気持ちいい。私はうつらうつら夢の世界へと旅立っていった…。


◇◇


 ピンポーン。


 22時過ぎにインターホンが鳴った。


(はあー?!こんな夜中に誰っ!!こっちはつい最近まで乳飲児だった一歳児がいるっていうのに!というか、寝てたのに!!)


 無視していたら、もう一回ピンポンしてきたので、仕方なくモニターを覗く。


(くぅー…面倒くさい。祥志は…。あー、一回寝たら起きないもんね。)


 そこには賢そうだけどちょっと大人しそうな、茶髪で20歳くらいの男性が申し訳なさそうに突っ立っていた。どこかで見た紺色の制服を着ている。


『夜分大変申し訳ありません…。

 私は王宮調査官のデニス•ウォッチャーと申します。今日中の公爵家内の調査を命じられておりまして。申し訳ないですが、こちらの建物で最後なんです…。すぐにお暇するので!中を拝見させて頂いて宜しいでしょうか。』


うえええええ。そっか、この制服、モニカさんの制服を男版にしたような感じなんだ。


 公爵家に調査官が来るとは知っていたけれど、まさか、この家にまで来るとは!面倒臭いようー。


 …まあ、人を隠せるような場所全てを見なくちゃいけないんだろうな。


 でも、敷地内に入ってこれたということはおそらく王族の息のかかった人ではないということなんだろうな。だって、家のセキュリティが反応しなかったって事だもんね。


『わかりました。今開けますね。』


そう言って、ガチャっとドアを開ける。


 するとモニター越しではわからなかったけど、大分疲れた顔をしている。


 …まあそうだよね。


 普段王宮で働いている人がいきなり普段の業務もある中で、当日中に180キロも距離がある公爵家にレオナさんがいないか見に行け!と無茶振りされた訳だもんね。


 そして、今は22時過ぎ。…あ。

 何かを察してしまった…。この人、ちょっと可哀想な人だ…。お勤めご苦労様です…。


「どうぞ、見て行ってください。子供と夫が寝てるので足音は立たないように。」


 そう言って、靴を脱いでもらって家の中を案内する。


 デニスさんはめちゃくちゃ申し訳なさそうな顔で、一つ一つの部屋を確認しながら報告書のようなものに書き込んでいっている。


 疑われると逆にまずいので、ちゃんと湯船の中や押し入れやクローゼットなど、隠せそうな所も丁寧に見てもらった。


「本当すみません。助かります…。本当やんなりますよ…。部署で一番僕が若いからって押し付けられちゃって。」


うん、そんな感じだってわかってたから何も驚かないよ。


 これで偉そうな態度だったらさすがにはっ倒してやろうかと思うけど、さすがにね…。


「おまけに、今日締切の仕事が3つもあったのに、今日中に180キロも離れた公爵家に行けだとか…。信じられます?僕が一番信じられないですよ…。」


 ああ、見ず知らずのおばちゃんに愚痴ってしまう程きついんだね。


 私も仕事がキツイときに見ず知らずのタクシーの運転手さんによく愚痴ってたな…。知らない人だからこそ話せる事ってあるよね…。


「最近、陛下にゴマを擂ってばっかりの仕事の出来ないジジイとババアばっかり残って、若くて優秀な奴ほど辞めちゃう感じなんですよねー。」


ああ、もう止まらなくなってきたよ。


「大変なんですねぇ…。」

そう相槌を打つとさらに愚痴は加速した。


「そうなんですよ!しかも今日僕、昼から何も食ってない上にこの時間にこれから近くの村まで行ってトイレも共同の宿に泊んなきゃいけないんですよ?!自腹で立て替えて!しかも申請しても陛下や王妃様の決済がなかなか通らないから3ヶ月くらいお金が戻ってこないんですよ!」

おお、止まらない、止まらない、カッパ煎餅…。


「お、おおお。そうですか。しかし、アレだね。王宮の上の人がだらしない…のかな?」


「そうですよ!王妃様なんて、王宮の若いイケメンに手を出しまくってるだけの癖に仕事が遅いのなんの!


 実質側妃様が仕事を肩代わりしてたから判子押すだけなのにですよ!この前同期がアソコをさり気なく触られてゾッとしたって愚痴ってました!」


お、おお。なんか今凄いこと聞いたぞ?


「…良かったらうどんでも食べてきます?」


思わず気の毒になり提案してしまった。


◇◇


「うまああーい!何ですか!これは!」

そう言って、デニスさんは鍋ごと食い尽くす勢いでズルズルうどんを食べている。

 

 今日のうどんは親子うどんだ。麺を別に茹でて、だし汁にみりんとお醤油で味付けした汁に鶏もも肉と、卵を投入して、合わせて丼に注ぐ。

 最後に三つ葉を飾れば完成だ。


(…栄子?もしかして誰か来てる?)

あ、祥志やっと起きた。

(それが王宮調査官の人が来ててさ。この時間までご飯抜きで働かされてたみたいで愚痴が止まんないから、ご飯あげてたよ。あ、うどん食べるー?)


(あー、もらおっかな。)


そう念話が飛んできたあと祥志が起きてきて、なぜかデニスさんとうどんを食べながら酒盛りし始めてしまった。


 せっかくなので、簡単に叩ききゅうりの塩昆布和えにごま油を垂らしたおつまみと、タラコを炙ってあげたらデニスさんが泣き出してしまった。


 だいぶ鬱憤がたまっていたらしい。


(栄子、奥の空いてる和室にコイツのために布団敷いてやって…。)

 

 何故か、職場でおばさんに仕事を押し付けられてる祥志と意気投合したらしく、そのままデニスさんは和室に泊まっていった。


 翌朝7時半。


「色々ありがとうございました!!僕、この案件が終わったらヴァレッタの役所に転職しようと思いますー!引っ越してきたらまた飲んでくださいねー!!!!」


と言ってデニスさんはいい笑顔で去っていった…。




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