【39】彩音ちゃんの今後
ふぅー、お腹いっぱい!今日はお腹がはち切れそうな程食べた。
久しぶりのもんじゃがなんだか凄く美味しく感じたなぁ。近々また作ろうっと。
大満足でジャジャエールを飲んでいたら彩音ちゃんに話しかけられた。
「栄子さん、色々ありがとうございました。
私、家族とも公爵家の皆さんとも話し合ったんですが、このまま王宮に戻らずに、ムーンヴァレー公爵邸にいようと考えてます。
ニーナも私もシリウス君も、独立が完了するまでは学園を休学することになりました。今、王都に戻ったら無理やり王宮に連れていかれる可能性もあるので。
今後王宮とのやり取りは公爵様が窓口になって下さることになりました。
本当は家に戻りたいですけど、魔王の問題も私が日本で発見された際にどう伝えるかという問題もまだ解決していないですしね。」
確かに今宮野家に戻って誰かに目撃されちゃったら大炎上待ったなしだしその方が良いだろうな。
「そっかぁ。学校休むのなら、彩音ちゃんもニーナさんもうちにいつでも遊びに来てね!公爵邸にいるなら敷地内だしさ。」
ジョゼフさん、出汁作りを頑張ってくれているけれど、醤油や味噌は公爵邸でも今の所は手に入らないから日本の料理も恋しいだろうしね。
「はい。それでなんですけど。
親がたまに私の顔を見たいと言っていて。立花さんのお家をその時通らせて頂くことになっちゃうと思うんですけど…。お邪魔しちゃっても大丈夫ですか?」
彩音ちゃんが遠慮がちに尋ねてきた。
「そりゃ勿論大丈夫だよ。あれ、そう言えば彩音ちゃんのスマホって家族と繋がらないの?」
私と彩音ちゃんはlime出来てたからね。
でも、もしご家族も連絡取れてたらそもそも行方不明で心配とかされてない筈だし。
「はい。栄子さんとは違う世界にいても繋がるんですけど、召喚後はどこにいても家族と繋がらなくて…。」
やっぱり!!
「彩音ちゃん、ちょっとスマホ借りるね。こうちゃーん!!ちょっとこっちきて!!」
こうちゃんを呼んで彩音ちゃんのスマホを渡した。
「まんまー。なあに?」
「このスマホを握ってね、彩音ちゃんが、彩音ちゃんのパパやママ、お兄ちゃんとどこにいてもスマホでお話できますようにって祈ってみてくれるかな?」
そう言うと、『わかったー。』と言いながらスマホを握って目を閉じた。
パアアアア!
すると、一瞬彩音ちゃんのスマホが光った。
おお、これは『最適化』が成功したんじゃないかな。
「彩音ちゃん、試しに家族のlimeグループとかあったら何か送ってみて!」
そう言ってスタンプを送ってもらうと。
ピコン、ピコン、ピコン、と一樹君、宮野さんご夫妻のスマホに通知音が鳴った。
3人がスマホを見て、驚きで言葉を失っている。
「…嘘!なんで?!届いてる!!!」
そう言って、彩音ちゃんは泣きそうだ。
「こうちゃんのスキルだよー。不具合を最適化出来るの。」
「ありが、ありがとうございますっ…!これで彩音といつでも連絡が取れます…っ。」
そう言って宮野さんの奥さんが泣いている。いやー、そうだよね…。娘が一人異世界に残って、しかも連絡も取れないんじゃ心配だよね。私がその立場なら心配で心配で夜も眠れないだろうな。
「お母さんっ、お父さん、お兄ちゃん!!私、いっぱい写真送るから!!元気な顔いっぱい送る!だからもう心配しないでねっ。」
そう言って彩音ちゃんが泣き笑いしている。
ちなみに、グングルピクチャーやマップも私達と同じように使えるようになり彩音ちゃんのテンションが爆上がりだ。
まあ、さすがにショッピングは使えないみたいだけど何かあれば私が注文してあげようっと。
「こうちゃん!本当にありがとうっ!!」
彩音ちゃんにぎゅうぎゅう抱きしめられてこうちゃんは嬉しそうだ。
ケネスさんの方を見たら頷いている。
よかった、彩音ちゃんが公爵家に残るように説得を頼まれていたけどするまでもなかったね。
◇◇
「さてと。それじゃあ…そろそろですかね?」
片付けが終わり皆で談笑していたけれど、なんだかんだでもう夕方近い。
そろそろレオナさんを日本に連れて行かないと調査官に遭遇してしまうかもしれない。
「…ああ。名残惜しいが。
姉上、今度立花家を経由してニホンに顔を見に行かせて頂きます。どうか、ご無事で。」
ケネスさんが立ち上がってレオナさんとの別れを惜しんでいる。
「大丈夫よ。ケネス。お姉ちゃんはどこでも元気に頑張れるわ。
貴方も国から独立したり、魔王の影響を受けた場所の対処だったり忙しいだろうけれど、身体を壊さないようにね。」
そう言ってレオナさんはニッコリ笑った。
「ご都合さえ合えばいつでも日本で会えますよ。今度は軟禁される訳ではないですし。ケネスさん、是非レオナさんに会いにきてください。」
私がそう言うとケネスさんは感慨深そうに頷いた。
「ああ。そうだったな。私も異世界に是非行ってみたい。そうだ、エーコ殿。姉上の家を探したり、宿を取ったり、食事を用意したり。きっと何かと入り用だろう。とりあえずこれで足りるだろうか?」
そう言って白金貨を30枚渡された。
日本円で300万。大金である。
これだけあれば、ひと月の家賃が15万以上の結構いい家を借り家具を用意しても、暫く生活するには十分だろう。
「全然足りると思います。ありがとうございます。」
そう言って受け取っておいた。
まあ、こちらで宿を取ったりご飯を用意する分には使わせてもらうけど、それ以外はレオナさんの銀行口座が作れたら全部入れておいてあげるつもりだ。
何よりこんな大金を持ち歩くのはチキンな私には怖すぎる!
とりあえず落とさないようにアイテムボックスに入れておいた。
これから行く世界が違うので、彩音ちゃんと公爵家の皆さんには先に家を出てもらった。ケネスさんがドアを開けると公爵家の見事な庭園が広がっている。
「それでは皆さん、また何かあれば連絡を取り合いましょう。」
皆さんが手を振って公爵邸に入っていくのを見届けた後、一旦ドアを閉めて、今度は私が玄関のドアを開けた。
すると、外には見慣れた住宅街が広がった。
レオナさんは、
「…!!これが異世界、ニホン…!」
と驚いている。まあ確かにこの世界とは全然違うよね。
宮野さんご夫婦と一樹君、レオナさん、立花家で外に出る。
祥志とこうちゃんもレオナさんが宿泊するホテルまで一緒に送りに行ってくれるらしい。
こうして、彩音ちゃんとレオナさんは新たな門出を迎えたのだった。




