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【間話15】願いを叶える宝珠〜クリスピア•カーネル王視点


◇◇クリスピア•カーネル王視点


 レオナが消えた。


 その知らせを聞いて私は嫌な予感がした。




 10年程前からムーンヴァレー公爵領の税収が、各領地から数%ずつを納められていた王家の収入を上回ってしまった。


 今や、仕事を探しに王都に若者が訪れていたのは過去のこと。


 より華やかな都、ムーンヴァレー領ヴァレッタに出稼ぎに出る者が多くなっていた。


 王族の権威が少しずつ、少しずつ、まるで砂時計の砂が落ちるようにゆっくりと落ちてきた。


 少しずつ勢力を拡大するムーンヴァレー公爵家が私の父の代から『目の上のたん瘤』だった。

 

 父は、私とレオナを結婚させて裏切りを防ぎ、後ろ盾にさせようと画策した。


 だが、私達2人の相性は最悪だった。


 レオナは私を少しも見ようとはしなかったし、私も歩み寄ろうとはしなかった。


 そんな中、若かった私は、私を一番に持ち上げ愛を囁いてくれるリリス•ダルミアに恋をした。


 そして、リリスを正妃にする為に、レオナを人質にしつつ仕事を押し付けることを考えた。


 それが、今も語り継がれている卒業式での断罪事件である。


 私は数家の貴族家の弱みを徹底的に調べ上げ、レオナの悪事を捏造し、証言するように求めた。


 そしてそれは成功した。


 もちろん、後から冤罪だったことが公爵家によって証明されたが、王家はあくまでも『臣下の証言を信じてしまった』というスタイルを取り、罪をなすりつけた。


 それ以来、私は公爵家と『和解』するよりも『搾取』することを選んだ。


 長男で王太子であるフランクは優秀だったが、次男のマティアスは少し傲慢な発言をする所があった。


 そこで、評判の良くない次男は公爵家に押し付けてしまうことにした。それに、こうすれば金を毟り取りやすいと考えたのだ。


 最初は抵抗する姿勢を崩さなかったムーンヴァレー公爵家も、レオナを盾にすることで黙らせることができた。


 特殊な法案を作り、目障りな貴族の領地の税率も上げて金蔓にしてきた。


 他にも彼等を縛り付ける為の婚約をいくつも結ばせた。


 だが、そうすることで反抗的な態度を示してくる貴族が日に日に多くなってきた。


 そんな中、魔物がおかしな発生の仕方をしていると、軍部から度々報告が上がるようになった。


 どうやら魔王が誕生したらしい。


 私はこの()()に感謝した。


(これで聖女召喚に理由をつけることが出来る。)


 王家に密やかに伝わる伝承によると、どうやら聖女の伴侶となり、『聖剣』を『愛の聖剣』に進化させることにより、その者はスキル『進化』を手に入れることが出来る。


 『進化』のスキルにより、伴侶となった者は『異世界の知識』を持った者に進化してきた。


 伴侶となった者はこの『進化』による功績から『英雄』と呼ばれていた。

 

 王家は代々その知識を使い、国を繁栄させてきたのだ。


 さらに、『願いを叶える宝珠』によって都合の悪い真実を書き換え、その政権を長い間維持してきた。


 カーネル王政の維持には宝珠の存在が不可欠だったのだ。


 万が一宝珠の存在が知られれば、他の貴族家から何としてでも聖女の伴侶になろうとする者も出てくるに違いない。


 だから臣下に知られぬよう、宝珠の存在は聖女召喚や魔王に関しての詳細を含め代々秘匿されてきた。



 そして、召喚は成功した。


 しかし、何故か()()は傀儡となるような頭の悪い聖女ではなく、計画は難航した。


 せっかく綺麗な顔に生まれたというのに小娘一人、口説き落とすことの出来ないマティアスに私は正直辟易とした。


(くそっ!あの役立たずめ!)


 だが、それに加えて何度も歴史を改竄したせいで、綻びが生じていた。


 実際に、マティアスを通して、聖女召喚の詳細に関して開示するよう現在ムーンヴァレー公爵家に求められている。


 それに、さすがに違和感を感じる貴族も多いのか、今回の聖女召喚に対して疑問の声を投げかけられることも多い。


 本当の事がバレてしまったら、王族のこれまでの歴史そのものが覆されてしまいかねない。


 貴族家の反発が高まっている今、私はなんとしてでも宝珠を手に入れようと目論んでいた。


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