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【36】潜入!


「これはこれは…!!タチバナ様、ですかね?助けて頂きありがとうございます…!」


 馬車の中から眼鏡をかけてカッチリした紺色の制服を着た可愛らしい女の子が出てきた。


 18歳くらいかな?


「とってもお強いんですね…!感動しました…。」

キラキラした目で私を見てくる。


うん、とってもお強いのを私も今知って自分でびっくりしました…。


◇◇

 

 迎えにきてくれた女の子は宰相秘書でモニカ•ルピシアさんというらしい。今年で19歳だそうだ。


 なんと、アルバートさんの息子さんの婚約者だそうだ。


 あぁ、なるほど。そりゃ誰よりも信頼できますね。


「私も独立の話はアルバート様から聞いているんです。私、二年前から秘書として働いているんですけど、私もこの国には不信感しかなくて。


 私も家族を連れてこの国から出て行きたいと思っています。」


 そ、そうなんだ。ケネスさんからあまりにもサラッと独立するって聞いたから


(ふーん。そんなもんなのか。)


くらいにしか思ってなかったけれど。


 確かに私達の世界でも独立する為に戦争になったりするくらいの大事になっている。


 あれ…?もしかして、結構物騒な事になってない?


「今回はタチバナ様にこれに着替えてもらいます。そして、給仕をする振りをして側妃様の部屋にあえて堂々と入って頂きます。そして、さりげなく近づいてすぐにテレポートして下さい。」


 そう言って出されたのはフリフリのメイド衣装だった。まあ、コスプレと違ってちゃんと丈とかは長いやつだけど。


 まさかこの歳になってメイド服を着るなんて思わなかったよ…。


◇◇


 王宮の検問で、モニカさんが


「宰相秘書のモニカ•ルピシアです!ただいま外勤から戻って参りました。」


 そう言って、IDカードのような金属のプレートを見せるとすぐに入れてもらえた。


(すごおおおおおい!これが王宮か!)


公爵邸も凄かったけれど王宮もやっぱりすごい。


 石造りの荘厳な建物は古い歴史を感じさせる。


(あああ、今度祥志とこうちゃんにも見せてあげたいなー。そしたらきっと大興奮だろうな。)


 そう思いながら城の内部に入っていく。庭師や、メイドさん、洗濯をする人、兵士や文官など色んな人が見える。あ、あれは魔法使いかな?


「ここで待っていて下さい。」


そう言われて5分くらい待っていると、人の良さそうなメイドさんがモニカさんとこちらに向かってきた。


 ボソッとモニカさんに耳元で

「大丈夫。彼女は味方です。」

と囁かれた。


「こんにちは。貴女が()()新人さんね。私は側妃様のメイドをしておりますハンナと申します。実家はノーリッジ家の寄家の男爵家ですの。宜しくお願いしますわ。」


そう言って艶やかに笑った。


「今日は側妃様の昼食の給仕をお手伝いして下さるんですものね。もう、食事は概ね出来ているわ。さあ、一緒に行きましょう。」



◇◇


「レオナ様はね。もう、何年も今から行くお部屋に住まわれているの。王妃様は元平民なのでマナーや言語がからっきしなのだけど…。お部屋から出て来れるのは、王妃様の代わりに外交に出られる時くらいで。」


ハンナさんと話しながら厨房へ向かう。


「即位されてから、私はあの方が気の毒で気の毒で仕方なかった。それなのに、レオナ様は私達はもちろん、リリス様付のメイド達にまで気を遣って時々贈り物までして下さるの。

 前は私達にはクリームを、リリス様付のメイドにはキラキラした素敵なお守りを下さったわ。」


そう言ってハンナさんは寂しそうな顔をした。


「あの方がいなくなってしまうのは寂しいけれど。正直言ってレオナ様に幸せになって欲しいから今日の計画を聞いた時はホッとしたわ。


 いい?2人でワゴンをひいてレオナ様の部屋に入るでしょ。そして、あなたがある程度レオナ様の近くに行ったのを確認するわ。そしたら私がわざとスープ皿を落として護衛の目を引きつけるから。


 その隙にレオナ様をどうか、どうかお願いね。」


私が『勿論です!』

と頷くとハンナさんは嬉しそうに破顔した。


そうこう言ってるうちに厨房に着いた。


「メイドのハンナよ。側妃様のお食事を取りにきたわ!」


ハンナさんが言うとすぐにお食事の乗ったワゴンのところに案内されたので2人で運ぶ。


ガラガラガラガラ…


ガラガラガラガラ…


 ぴたっとハンナさんが足を止めた。門の前には兵士が2人立っている。


(ひええええ、リアル兵士!)


「ここが側妃様のお部屋よ。2人とも、ご機嫌よう。今日は新人のメイドも一緒なの。昼食を運んできたので開けてもらえるかしら?」


そう言うと、兵士が2人でドアを開けてくれた。


 中には30代くらいのどこかケネスさんの面影を感じさせる美人で銀髪の女性が机で仕事をしていた。


 私達を見ると、こう言った。


「ありがとう。そこの机に食事を置いてもらえるかしら。」


チラッとハンナさんの方を見ると頷かれたのですぐに腕を掴める距離まで近づいてサラダを置く。


 次の瞬間。


ガシャーーーーン!


ハンナさんがスープ皿を落とし『何事だ!』と兵士がそちらに気を取られた瞬間。


私はレオナ様の手を掴んだ。


「?!」


レオナ様が驚いた顔で私を見たと同時に、スキル『送信』を発動させる。


ブウウウウン



シュン!!!



◇◇


 こうして、レオナ•カーネルは王宮から突然姿を消した。


 兵士の目の前で、忽然と消えてしまった側妃。

 

 その日王宮は騒然とするのだった。


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