【間話14】わたしの知られたくない秘密〜レオナ•カーネル視点
◇◇レオナ•カーネル視点
私がクリスピア殿下の婚約者になったのは、まだ5歳の時でした。
本来であれば公爵家を継ぐ予定でしたが、彼が王太子だった為私が嫁入りすることになりました。
そして、早々に王太子妃教育が始まったのです。
そんな中で早々に私は気づいてしまいました。
自分が虐げられれば虐げられる程、興奮するということに!
王宮での教師はとてもとても、厳しかったです。
そして、罵られるほど快感を感じる私は、鞭で叩かれながら、こう思っていました。
(もっと!もっとムチで叩いてぇえええ!)
いつしか私は王太子妃教育に没頭しました。
クリスピア殿下は顔が良く、頭も良い素敵な王子様でした。
少し腹黒いけれどそんなところが学園でも女子生徒に人気なご様子でした。
(そんなんじゃ物足りない!!もっと!もっと下品な男に私は貶められたいのっ!)
ああ、教育担当の教師が女性ではなく、もっと下品なら男性だったらいいのに。
しかし、こんなことは家族に知られる訳にはいきません。なので、私は必死に頑張る努力家の姉を演じました。
そして、王太子妃教育に没頭し自分にあまりときめかない私を、クリスピア殿下はあまり好いてはいないようでした。
しかし、そんな私達の内心とは裏腹に、周囲の評価はこんな感じでした。
『金髪碧眼の王太子と銀髪の美しい公爵令嬢』
『2人で並び立つとまるで太陽と月のよう。なんてお似合いなんでしょう。』
(全然お似合いじゃない!!私はもっと、下品な人がタイプなのに!)
銀髪の美少女の私に、粗野で脇の匂いを嗅いだら少し匂ってきそうな男性が下卑た笑みで無理矢理迫ってくるのを妄想して、密かにキュンとしてました。
どう考えても金髪イケメンの王子様は私のタイプではなかったのです。
◇◇
そんな中、王立学園卒業まであと二年を切った春。
男爵家に庶子として引き取られた元平民だった女子生徒が編入してきました。
彼女の名前は、リリス•ダルミア。
ピンクブロンドで異性の庇護欲をそそるような小柄な令嬢でした。
彼女は男女の恋愛のテクニック的なものが貴族令嬢に比べて優れていました。
そして、高位貴族の令息達をあっという間に虜にしてしまったのです!
(…まあ。綺麗なお顔の方がお好きなのね!私とはタイプが真逆だわ!)
そして、何故か私は度々リリス様が、あんなこと、こんなことをしているのを目撃してしまったのです。
中庭の人のいない物陰で侯爵家の令息と。
屋上に登る立ち入り禁止の階段で伯爵家の令息と。
女子トイレの個室の中から上気した顔で出てこられる子爵家の令息とリリス様。
(きゃー!!!!ハレンチだわあああ!)
そう思いながらも、顔を手で隠した時の指の隙間からガン見してしまう私なのです!
私もお年頃なのです。見れるものは見たいのです!
しかし、彼女が虜にした人物の中にクリスピア殿下がいました。
(あらあら、殿下は気づいているのかしら?ちょっとお可哀想…。でも、気付かないのもどうなのかしら。)
思わず、呆れた目を向けてしまいます。
そのあとも、体育館の倉庫の中や、人気のないシャワールームの中でリリス様のあられもない声が頻繁に響いておりました。
しかし、どうもお相手は殿下ではないご様子でした。
…え?ここまでそんな現場に遭遇するのは不自然ですって?
そんな、私がわざと見物しに行ってるわけなんてないじゃないですか。
…まあ、でもせっかくなので見れるものは見ておいただけです。
リリス様、いつもご馳走様です!
◇◇
そして、卒業式で事件は起こってしまいました。
なんと、私がリリス•ダルミア男爵令嬢に在学中危害を加えていたとクリスピア王太子が断罪し始めてしまいました。
(え?!まさか出歯亀していたのがバレていたのかしら?!)
お互いの為か、あんなことやこんなことは伏せられていますが、私を見つめるリリス様の目からは確かに何かを感じ取りました。
そりゃ怒りますよね。
あんな汚い顔とマヌケな格好でうふんあはん叫んでいるところなんて見られていたら恥ずかしいですもんね!
そして、何人もの生徒が証言台に立ちました。
(あ、あれは体育倉庫でリリス様と◯◯していた伯爵令息!あれは、トイレの個室からリリス様と満足気な顔で出てきた子爵令息!!!!)
私は彼らの逆襲に戦慄するのでした。
そして、王家から我が家に突きつけられた選択肢は3つでした。
身一つで国外に追放すること。
一家で責任を負って爵位を返上すること。
すぐに『側妃』としてお飾りの妻として能力を王家に還元すること。
これを見た時私は『やった!!』と思いました。
これからも側妃としてリリス様のめくるめくはしたない生活を出歯亀出来るなんてご褒美でしかありません!
私は部屋に警護が付くと聞き、急いで監視の魔道具を買いました。
そして、リリス様の侍女の中で一番天然そうな子と仲良くなり、『これ、リリス様の為のお守りですの!』と言って鞄に仕込んで貰いました。
これで私は毎晩のオカズに困ることはないでしょう。
ただし、私には一つだけ心配事がありました。
それは、二つ年下の可愛い弟のケネスが、私の事をめちゃくちゃ心配していたことです。
まさか、私が虐げられるのが好きな上にむっつりスケベだったことはさすがに言えないので、側妃となるその日、
「大丈夫よ。お姉ちゃんは元気だから。そんな顔しないで。ケネスは絶対幸せになって。」
と元気ですアピールをして嫁いで行きました。
結婚式は教会で書面にサインをするだけの簡素な式でした。
しかし、今更クリスピア殿下とチューとかしたくなかったので逆に私には有り難かったです。
◇◇
婚姻後の大量の政務は、私にとっては天国でした。
遅れると罵られることを想像して、私はゾクゾクしていました。
…まあ、実際は遅れたことはないんですけどね。遅れて国民が困ったらまずいじゃないですか。
むっつりだけど、意外と真面目な私なのです。
でも、さすがに19年も軟禁されると飽きてきました。
あー、誰か粗野で荒々しい男性が私を無理矢理さらってくれないかしら。
…きゃ♡




