【34】餃子で決起会&出発の朝
「さて、餃子が出来たのでみんなで焼きましょう。祥志、こうちゃん起こしてきてー!」
ホットプレートに餃子を並べる。今回は200個作りましたよー。頑張った。
余ったらお土産にしてもらおう。ニーナちゃんやダイアナさん、シリウス君も気に入ってくれるといいな。
味は普通の餃子、チーズ入り餃子、チーズだけの餃子の3種類を作った。
水を入れると『じゅわ〜!』っと音がした。焼いている間にコーンと卵のスープと、白米を準備する。
「ケネスさん、お好みでこの5種類をブレンドしてタレを作って下さいね。」
そう言って出したのは、ポン酢、醤油、酢、胡椒、ラー油だ。
ちなみに私は酢と胡椒だけで食べるのが好きだが、祥志はポン酢派である。
ビールを片手に乾杯だ。なお、こうちゃんはトマトジュースである。
「美味い!この皮から湧き出るジューシーな肉汁が何とも言えないほどクセになるな。」
そう言いながらケネスさんはバクバク餃子を食べる。
「友達と連絡は取れたんすか?」
祥志が聞くと、ケネスさんが餃子を頬張りながら答える。
「ああ、大丈夫だ。ただ、王宮までクルマで行くことは出来ぬからな。
10時半頃に馬車で近くまで迎えがくる。あとで地図を渡すから、そこで待機してくれ。
そのあとのことは、迎えの者から説明させてもらう。
姉上と会えたらスキルを使って公爵邸に連れてきて欲しい。すまないが宜しく頼む。」
「わかりましたよ。しかし、180キロもあるってことは、ニーナさん、この前学園から帰ってくる時大変だったんじゃないですか?」
私が聞くと、ケネスさんが転移陣について教えてくれた。
王宮から各地の教会に繋がっている転移陣。基本的には王族しか使えない。
しかし、王族をもてなす為など、何か理由があれば使用可能らしい。もちろん申請して許可が出ればの話だけどね。
今回転移陣はもちろん使えないので、車を運転するしかない。
信号もないし、特に山なども挟んでいないと言うのでおそらく3時間もあれば余裕を持って着くだろう。
それでも、朝7時には家を出た方がいいかな。長距離運転なんて久しぶりだから頑張らねば。
ケネスさんは1人で餃子を80個程食べたので70個くらいしか余らなかったけれど、タッパーに詰めて持って帰ってもらった。
相変わらずよく食べるなぁ。私達は3人で60個だったのに。
痩せてるのに不思議…。まあ、ここまで食べっぷりが良いと気持ちいいけどね。
◇◇
次の日の朝は6時に起きて、準備した。こうちゃんは危ないので祥志とお留守番だ。
今日は時間がないのでトーストをもしゃもしゃ頬張り、眠気覚ましに珈琲を飲んだ。
寝る前に祥志に『急速充電』でガソリンを満タンにしてもらったので、王宮までは十分持つだろう。
この前ルーナ村で買った現地人っぽいベージュのワンピースを着て、魔道具の機能も付いたミスリル短剣も借りた。
ピンポーン
あ、ケネスさんが迎えに来た。
ドアを開けてもらうとそこには見慣れた住宅街ではなく公爵家の庭園が広がっている。
「おはよう。エーコ殿。今日はどうか姉上を宜しく頼む。」
そう言ってケネスさんに頭を下げられた。
いやいやいや!あなた公爵様で私の雇用主じゃないですか!そんな頭を下げないでくださいって。
恐縮していたら、祥志が声をかけてくれた。
「気をつけて行ってこいよ。もし、モンスターに遭遇してヤバくなったら逃げろ。」
「うん、もちろん。全力で逃げるわ。行ってくるね。」
ぱたん。
庭園には、ケネスさんの他にニーナちゃん、彩音ちゃん、シリウス君、ダイアナさん、それに宮野さん家族もいた。
そっか。宮野さん、あれからずっと泊まってたんだね。家族でいっぱい団欒出来たかな?
「エーコさん、気をつけて。どうかこれを!」
そう言って公爵家の皆さんと彩音ちゃんが自分の魔法の入った球のアイテムを差し出してきた。
わお!有難い。これなら心強いわ。
「それと、これも持って行って下さい。」
そう言ってシリウス君が差し出してきたのはポーションが3種類だった。
回復、毒消し、麻痺消しだそうだ。至れり尽くせりですな。
(よし!いっちょ頑張りますか。)
「皆さんありがとうございます!お昼頃には帰ってきますね。いってきます!」
そう言って公爵邸を私は後にしたのだった。
どうか強いモンスターが出ませんように!




