【33】念話とケネスさんの訪問
「じゃあ今度は俺のスキル、『Wi-Fi』で念話してみようぜ。半径100m以内まで行けるらしいからちょっとすぐそこの『ゆあばすけっと』にでも行ってて。」
と言われたので、家を出て、『ゆあばすけっと』までやってきましたよ。
せっかくだから買い物して帰ろうっと。今日の夕飯は何にしよっかな。
お店に入ってすぐにお肉コーナーがあったので、挽肉を大量に籠に入れる。ハンバーグか餃子もいいなぁ。
そんなことを考えながら15分くらい食材を見ていたら、祥志から念話が入った。
(おーい。栄子。聞こえるー?)
おおお、すごい!
(聞こえる聞こえるー!ヤバい、近くならスマホいらずだね。)
(今度屁が出た時にでも意味もなく念話するわー。)
(あ、それはしなくていいわ。)
(…実は今家にジャイアントが来てるんだわ。)
(ジャイアント…?ああ、ケネスさんかー。家近くなったもんね。ご飯食べてく感じかな?)
(あー、食ってくんじゃない?)
(じゃあ多めに食材買ってくわー。)
(おー、じゃあまた後で。)
ふぅー。便利だな、念話。
戦ってる時作戦とかバレずに動けるんだろうな。まだ大した戦いはしたことはないけどね。
ケネスさんいっぱい食べそうだから餃子にしよっと。
家に帰ると、ケネスさんと祥志が、わさび味のポテチを食べながらコーラを飲んでいた。
こうちゃんはようやくお昼寝したようだ。
相変わらず美味い美味いと言って食べていたけれど、なんかちょっと顔が疲れているような…。
◇◇
餃子を包みながら3人で話す。
「ケネスさん、今日はどうしたんですか?あ、神様からのメールの件ですか?例の魔王の。」
「ああ、それもある。が、それ以外にも相談したい事があってな。」
なんと、ケネスさんの公爵領と他に二つの領地が、国からの独立を考えているらしい。
あとは、王族の人達が聖女召喚をしたのが魔王を倒す為というより、私利私欲の為じゃないかと疑っているとのことだ。
上記の理由で、このままだと彩音ちゃんが王家に強制的に何かさせられる可能性が高いので、このまま公爵邸に引き留めたいらしい。
「あー、それで彩音ちゃんが王宮に帰らないように説得する時、後押しして欲しい感じですか?」
私が聞くと、ケネスさんが頷く。
「そうだ。あと、実はな…。」
なんと、ケネスさんのお姉さんが王様の側妃らしい。ただ、独立の時に酷い事をされないか心配なので逃してあげたいこと。
「…ということで、姉上をもし無事に保護出来たら、立花家の方でしばらく預かって貰えないだろうか?」
「え?!うちでですか?!」
うーん、協力はしてあげたいけど、期間によってはちょっと大変だな。こうちゃんも小さいし。
それに、この家は公爵家内にある。逃げる場所としてはあからさま過ぎるのでは…。
「あ、もちろん家にずっと、という意味ではない。そちらの世界はモンスターもおらず、随分平和だという話をアヤネ殿に聞いたのだ。
なので、そっちの世界にしばらく雲隠れさせて貰えないだろうか。もちろん、必要な資金等は出す!遠慮なく言ってくれ。」
(栄子どう思う?)
祥志から念話が飛んできた。
(要は日本で生活する為の基盤を整えてやって欲しいってことだよね。うーん、それなら全然いいかな。OKしてもいい?)
(おー。)
「あ、それなら全然大丈夫ですよ。」
お許しが出たので答えておいた。
「そうか!かたじけない。」
ケネスさんが破顔した。
「…でも王宮から脱走とか大変そうっすね。うまくいくんすか?」
祥志が聞くと、ケネスさんが眉を下げた。
「宰相が友人なのだがな。彼が脱走の際にアシが付かなそうなスキルを持つ者を探しているのだ。しかし、なかなか見当たらなくてな。」
あー、だよねぇ。脱走中に何かあったら怖いし、そもそもあまり引き受けたい人もいないだろうな。
一瞬でどこかに移動出来るような神のような魔法でもあれば…。
…アレ?一瞬で移動?
…!!
私のスキルで出来ちゃうじゃん!そういえばこの前新千歳空港に行ったばっかりだった。
でもなー。王都とか遠いんじゃ…。
(祥志。私のスキルでテレポート出来ちゃうんだけどどう思う?ただ、行ったことある場所しか行けないから、行きは車で行かなきゃいけないわー。)
(うーん…。130万もらったばっかだしなー。ジャイアント、いい人だし協力したいけど。テレポートするだけならあんま危なくないんじゃね?)
(私、今餃子の皮で手が粉だらけだからさ。祥志グングルマップで王宮まで何キロか見てくんない?)
(おっけー。あ、180キロだって。意外と近いね。)
(…じゃあ行ってあげますかー。)
(朗報。俺のスキルの『急速充電』車にも使えるっぽい。)
(マジ?じゃあガソリンいらずじゃん。そしたらさ。家ごとアイテムボックスに入れてくわ。トイレとか行きたくなるかもしれないし。)
ちなみに、異世界で家をアイテムボックスに入れても日本の家はそのままなのだ。
なので、平日だったら持って行っても関係ない。
そして、祥志は明日も有給。
「ケネスさん、急ですけど私のスキルならなんとかなりそうです。手引きしてくれる友達にすぐ連絡取ってくれますか?出来たら明日行っちゃいたいんですけど、どうですかね。」
そう言うと、ケネスさんは目を丸くしていた。




