【間話13】三家会議②〜ケネス•ムーンヴァレー公爵視点
◇◇ケネス•ムーンヴァレー公爵視点
「クソッ!胸糞わりぃ話だ。」
ダンッとライゼンがテーブルを叩く。
「そうだ。姉上を人質に取られたあの日から我が公爵家は王家に強く出られなくなってしまったのだ。」
私は顔を手で覆う。
「ケネス。友として言います。何故もっと早く話してくれなかったんですか。」
アルバートが痛ましそうな顔で言う。
「すまない。だが、これは我が家の問題であると認識していた。それに2人を巻き込むことは出来ないと思っていたのだ。」
私達の家は優秀だった。
…優秀過ぎたのだ。
他の2家も、ただでさえ目を付けられているのに、巻き込むことは出来なかった。
すると、アルバートが口を開いた。
「…レオナ様を逃す為の手引きは私がします。だが、逃した後にバレずに、安全に過ごせる場所の確保が必要ですね。」
「…いいのか?」
私が顔を上げる。
「ええ。なるべく足が付かないスキルを持つ者を他国を含めて探してみましょう。」
そう言って我が友アルバートは微笑んだ。
「だがよぉ、逃した後はどうすんだ?金を渡して他国に逃したとしても、今は魔王の影響で高ランクのモンスターがウジャウジャしてやがる。今、安全かつバレずに住む場所なんてあるのかよ。」
ライゼンが困惑したように言った。
「それは、私がなんとか探す。友が協力してくれるんだ。絶対に成功させねば。」
私は決意を胸に答えた。
「あとは、教会の件ですね。教会以外に兵士達の治療が出来る者がいれば良いのですが。」
アルバートが心配そうにライゼンの方を見る。
「そうなんだよなぁ。聖女殿も今王宮にいるみたいだしよ。せめて白魔法を使える人間が魔王が落ち着くまで治療に協力して貰えれば大分違うんだが。」
ライゼンが残念そうに言った。
「…!実は聖女殿は今我が公爵邸にいる。たまたま昨日客人としていらっしゃって、そのままお泊まり頂いたのだ。」
私はタイミングの良さに感謝した。
「本当か?!それなら何とか王宮に戻らないように説得出来ないか?!」
ライゼンが少し興奮したように言う。
「ああ、もちろんだ。」と答えるとホッとした顔をしていた。
するとアルバートがポツリと漏らす。
「…でも、私、思ったんですよ。聖女という存在を召喚したのは本当に魔王を倒す為なのかと。私は聖女を本当に欲しているのは王族なのではと思っています。」
「ああ、それは俺も思ってたぞ。でも、まあ自己顕示欲が強い第二王子が聖女の伴侶になりたがるのは理解できる。でも、陛下と王太子がそれを全面的に支援しているのはわからねぇ。」
ライゼンもそれに同意する。
そこで私は娘に聞いた不可解な言葉を思い出した。
「…愛の聖剣。」
「「は?」」
「娘が聖女殿から聞いたそうだ。なんでも、聖女殿が学園で『真実の愛』を見つけ、その相手と聖剣を『愛の聖剣』に進化させないと、魔王は倒せないと陛下がおっしゃっていたと。」
「…それは、もしかしたらそれが発動条件で、伴侶となった者に何か王族にメリットがある『スキル』か『魔法属性』が与えられるのではないでしょうか。」
アルバートが思案する。
「ああ、その可能性が高いな。それを恐らく臣下である貴族達に隠しているのだろう。」
私も頷くと、ライゼンが困惑した顔になる。
「何を隠してるんだ?俺にはさっぱりわからねぇ。」
「恐らく洗脳系か、王政の維持に直接影響するようなものだろうな…。」
そう私が話すと、2人が真顔になる。
「それなら尚のこと、王宮に聖女様を返さない方が良いでしょうね。」
3人で頷き合うと、私は宣言した。
「腹は決まった。
私達三貴族家は合同で、カーネル王国からの脱却、独立を目指す。
娘、息子達の婚約は準備が整い次第、無かったこととするよう求めよう。
まずは聖女殿を公爵家に留まるように説得し、姉上を助け出す。
さらに神殿に頼る以外の兵士の治療方法を普及させよう。
魔王については我が家で引き続き情報を集める。
アルバートは王家の隠しているスキル、または魔法の情報収集を頼む。
ライゼンは、兵士の治療の代替案を調べて欲しい。」
「わかりました。何か分かったらまた水鏡魔法で連絡します。私は王宮内部を探ってみます。」
アルバートが答える。
「おうよ。やっと王族に一矢報いる時がきたぜ。」
私達は王家に立ち向かうことを決意した。




