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【間話11】三家会議①〜ケネス•ムーンヴァレー公爵視点


◇◇ケネス•ムーンヴァレー公爵視点

 

 聖女殿とマティアス王子と食事会をした次の日。


 私は隣接した領地を持つ旧友であるライゼン•バルガン辺境伯とアルバート•ノーリッジ侯爵と非公式に集まっていた。


 場所はムーンヴァレー公爵領都、ヴァレッタの高級レストランの個室だ。


 二人の息子はシリウスと同じくマティアス王子の側近でもある。


「よお。お二人さん。お互い歳を取ったな。」


 ガハハ、と笑いながら豪快に肉を口に放り込んだのはライゼンである。なお、ライゼンは騎士団長を兼任している。強靭なその肉体は座っているだけで威圧感を感じさせる。


「ああ、単なる楽しい食事会ではないのが不本意だがな。二人とも、時間を作るのは大変だったであろう。」私がワインを飲み干しながら答える。


 今日は宰相であるアルバートの希望で集まった。


 理由は明白である。


 高位貴族である我がムーンヴァレー公爵家、バルガン辺境伯家、ノーリッジ侯爵家は何年も前から王家に対して静かな怒りを感じていた。



 それが今回の聖女召喚を機に頂点に達したのであった。



「今回集まって貰ったのは他ではありません、私はもうこの国の臣下であるということに誇りを待つことが出来ないのです。

 王も無能、王子も無能。それなのに我々の足を引っ張ろうと画策する。

 息子から色々話は聞きました。

 何故貴方達が黙っているのかわからない。もう沢山だ。」


 そう述べたのは宰相であるアルバートだ。強い語気とは裏腹に、飲んでいたコーヒーを静かにテーブルに置く。


 ノーリッジ家は代々カーネル王国の頭脳としてこの国を支えてきた。


 そして、今代の宰相に一族から選ばれたのが一際優秀なアルバートだった。


 そんな彼の足枷となっていたのは施政者としては無能な王と王妃であった。


 今回の聖女召喚も王の独断で強制的に行われてしまったのだ。


「俺だって黙っちゃいなかったぜ?特に『王都の金食い虫』と有名なロンパース家をカイとの婚約に乗じて押し付けて来やがっただろ。


 あれは、いざという時に辺境伯家が反旗を翻すのを防ぐ為だって気づいてた。


 だがなぁ、神殿を盾にして、脅してきやがったんだよ。」


 騎士団と神殿との繋がりは深い。


 特に医療が発達していないこの国では聖女以外で高度な治癒魔法を使える神官は重宝されている。


 彼らは怪我の多い兵士や騎士団員にとってはなくてはならない存在だが、神殿で全て管理されている。


 そして、神殿は王族の管轄だ。


「ああ、なるほど。あの陛下の考えそうなことですね。だが、国を守っている兵士の治療を盾に脅すなどあってはならぬことです。」


アルバートはため息を吐く。


「ケネス、貴方はどうなのですか?


 娘の婚約で王家の傀儡である第二王子を押し付けられた。さらに、今度は息子まで評判の良くない家との婚約を押し付けられた。


 相手のご令嬢本人は殆ど社交界に出てはいなかったが、蓋を開けてみたら常軌を逸しているそうですね。

 

 それにマティアス殿下は聖女に懸想して貴方の娘を蔑ろにしていると評判だ。

 

 私達はまだしも。本来であれば公爵である貴方だけは突っぱねることだって出来たはずですよね?


 なのに、そう出来なかったのは、姉君であるレオナ様が人質に取られているからですか?」


 ヒュッと思わず息を飲んでしまった。

 

 私は重々しく口を開く。


「…そうだ。」


 娘の婚約は、あくまでも王子の婿入りであった。


 だから私が娘を不幸にさせぬよう、直接監視できるのでは、と自分を無理やり納得させて、涙を飲んで受けたのだった。


 しかし、マティアス殿下とニーナの相性は蓋を開けてみれば最悪で、殿下の態度もちっとも改善されなかった。


 何度も娘に心の中で頭を下げた。


 そして、息子の婚約もどうにかして突っぱねたかったが出来なかった。


 だから、万が一婿入り先で苦境に立たされたその時は他国でせめて研究者となれるように密かに準備をしていたのだ。


 だが、強く言えない理由は他にもあった。それが、私の2つ歳上の姉、レオナだった。


 レオナは、白い結婚ではあるものの、クリスピア陛下の側妃である。


 そしてもう19年も王宮に軟禁されている。


 


 彼女は、王妃に変わって政務だけを淡々とこなす『お飾りの妻』なのである。

 

 我が家は彼女を人質に取られて、度々王家に脅されていた。



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― 新着の感想 ―
無能なだけじゃなくたちの悪い王族か。 クーデター待った無し?
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