【4】ザクザクシュークリームと世知辛い現実。
「いやー、立花さんの奥さんの料理はいつも美味いっすね。」
ナポリタンを美味しそうに頬張りながら褒めるたなぴょん。ふふふ、もっと褒めてもいいですよ。
褒められて気をよくした私は、幸いたなぴょんと祥志がこうちゃんと遊んでくれているのでデザートを作ることにした。
本日のデザートはザクザクのシュークリームだ。皮がフニャッとしてるよりも歯応えあった方が好きなんだよね。
まずはシュー皮と、カスタードクリームの材料を計量して分けて、オーブンを200度に予熱しておく。
まずはカスタード。小鍋に卵黄と砂糖を入れて泡立て器でよく混ぜてから小麦粉を振るい入れ、牛乳を入れて火にかける。フツフツするまでゴムベラで混ぜる。バニラオイルとバターを入れて、漉しながら金属製のバットへ。冷やしたら出来上がり!
次はシュー皮だ。材料を順番に鍋に入れて手早く混ぜる。ゴムベラから垂れる生地が三角形になるように混ぜ続けるのがポイントである。
カスタードとほとんど同じ材料なのに調理方法で全く違うものになるから面白いよね。
ちなみは私はザクザクにするために小麦粉は薄力粉と強力粉を混ぜている。
あとは絞り器で一気に六つ分天板に絞って霧吹きして、ナッツを乗せて、予熱したオーブンで焼く。カスタードと生クリームを詰めれば完成だ。
ちなみに生クリームに少しラム酒かラムレーズンを入れると美味しいよ。
◇◇◇
「うわ、このシュークリーム!サクサクでめっちゃ美味い。」
たなぴょんが大袈裟に褒めてくれて、こうちゃんも
「おいちぃ〜」
と喜んでいる。こうちゃんのはラムレーズンなしだ。はぁー、我が息子ながらかわいい。
祥志はチョコ味が良かったのに、とブツクサ言っていたが、口に入れたら美味しかったみたいで黙って食べていた。ふふん。
たなぴょんが手土産に美味しいコーヒー豆を持ってきてくれたのでシュークリームのお供に入れた。
私もシュークリームを齧る。ザクザクのシュー皮からたっぷりのカスタードクリームとラムレーズン、生クリームが溢れて口の中でとろける。
そして、美味しいコーヒーを一口飲んでさっぱりしてまたシュークリームを齧る。
ああ、幸せ、最高。
朝は異世界に来たってわかって焦ったけれど、正直スマホも使えるし、宅配便も届くし、害獣へのセキュリティもしっかりしてそうだし、何よりたなぴょんが来れたから全然大丈夫じゃない?そう思うとより何でも美味しく感じられてお菓子が進むー。
塀のそばに熊の死体がチラ見えしているのは気にしない。
◇◇◇
「あ、もう4時なんでそろそろ帰ります。」
…そういえば。日本から来れるか知りたくて呼んじゃったけど、たなぴょん、ちゃんと帰れるよ、ね?
ちなみに彼から窓から見える森にも熊の死体についてもツッコミもなかった。普段通りの景色が見えていたらしい。
「田中さん、今日は来てくれてありがとう。俺らも丁度買い物に行こうかなって思ってたから一緒に出るよ。」
祥志ナイスアシスト。
実は、家ではたなぴょんと呼んでるくせに本人の前では呼べないチキンなぽっちゃり夫婦。
急いで抱っこ紐つけて、たなぴょんに玄関を開けてもらって外に出ると、家の敷地外にちゃんと森ではなくいつもの住宅街が広がっていた。
ドキドキしながら敷地外に踏み出すと。
出れた!普通に出れた!
やった!いつもの街に戻って来れた!祥志の方をチラッと見ると、こっちを向いて頷いている。たなぴょんありがとう!
たなぴょんと別れて家族3人でドラッグストアとスーパーでお買い物して、仲良く公園で滑り台してから家に帰った。
「うふふふふ!」
「あはははは!」
「まんま、ぱぱー!あいすー!!」
3人ともテンションが最高潮だった。
だが、家に帰ってガラス戸から外を見ると、また森の中だった。
「いや、なんで?」