【21】車の中でおやつタイム〜襲われていた馬車
冒険者ギルドから出たらもう12時を回っていた。
ただ、服装が日本のものなので、道中変な人にまた絡まれるといけないので、服を買おうということになった。
村にある古着屋さんに行って、店員のお姉さんに色々教えてもらう。私は無難にベージュっぽい色の麻のワンピースと革の靴と帽子とカバン、祥志は茶色い麻の服の上下と茶色い革靴とショールを買って、早速着替えた。全部で金貨1枚で買えた。
こうちゃんの服はサイズがないのでもう一つ大きなショールを買って服を覆うことにした。
また、癪だけどガイさんのいう通り、ハンマーと鎌じゃもしモンスターが現れたら心許ないので武器も買った。
まずは剣の持ち手に付いている魔石に魔法を溜め込むことが出来る魔道具の機能も付いたミスリル短剣を1本(白金貨2枚もした)買った。
祥志が魔法を覚えるまでは近距離の攻撃手段がないからだ。
これで攻撃すると斬撃の他に魔法の効果も与えられるらしい。
丁度、祥志のスキル【急速充電】で魔道具に魔力を補充できるとのことで奮発した。ちなみにスマホも充電できるとのことだ。
確かにこっちでスマホは鑑定したり地図を見たり、魔道具のようなものだもんね。
ちなみに、【Wi-Fi】のスキルは、指定した相手と、何もなくても安定して通信が出来て、半径100m以内ならモノにも力を加えられるというものだった。所謂、『念話、念力』のようなスキルらしい。
あとは木製の杖を小さいのと大きいのを2本買った(合わせて金貨5枚)大きいのは私で、小さいのはこうちゃん用だ。
「こうちゃんもこうちゃんも!」
と欲しがったので使えるかわからないけど買ってあげた。
盾は重たいので買わなかった。
◇◇
村から出て暫く歩いて、人がいないのを確認してからアイテムボックスから家を出す。
あー、なんかホッとする。
さっきまで着ていた服を急いで洗濯機に放り込んでおいた。
疲れたので本当は家で休みたいけどここから公爵家まで行かなければならない。
トイレを済ませてから車庫から車を出して、再び家だけアイテムボックスに収納した。
グングルマップにケネスさんに確認した公爵邸の場所を入力すると、ルートと距離が表示された。
えーっと。70キロちょっとか。思ってたより近い。馬車って思ってたより遅いんだな。これなら飛ばせば結構早く着けるかも!
あとは人とモンスターに会わないよう気をつけるだけである。
◇◇
「あー、車快適!!」
道中、3人でリュックに用意したつぶつぶ蜜柑ジュースを飲む。これは祥志の好物だ。ジュースの中に果肉が入ってたら確かに嬉しいよね。
プレッツェルの中にチョコが入ったお菓子をつまみながら走る。
手を汚さず食べられるのでドライブの時はいつも買う。あー、チョコが疲れた身体に染み渡る…。
「いやー、しかし、さっきの食堂美味しくなかったな。やっぱ日本のお菓子うめぇー。」
お菓子をぽりぽり食べながら祥志が言う。
「本当だよ。あれで、あのおじさん、ここの料理は旨いとか言ってたんだよ?やばいよね。」
あれで美味しい方だと言うなら、多分全体的に美味しくないんだろうな。
ケネスさんがウチでご飯を食べてテンションが爆上がりしていた理由がわかった気がする…。
こうちゃんは疲れたのかママの腕の中でスヤスヤと眠り出した。
ううう、今日はいっぱい怖い目に合わせてごめんよー。
砂漠のような道を超えて、平野に入った。道も舗装されており、あと10キロくらいで公爵家に着く。
「車だと結構近いねー。」
「んだな。文明の利器に感謝だわ。」
そんなことを話しながらのんびりドライブしていたら。
遠くの方で馬車が牛の魔物に襲われているのが見えた。その横で護衛っぽい人が戦っている。
「…どうする?助ける?ただこうちゃんもいるし、私達が力になれるか微妙だよね。」
「うーん…。モンスター怖いから無視したいけど、あの人達に何かあったらモヤるよな。」
『ブラウンボアLv.17状態:興奮
生態:雑食。異世界『サムシングワールド』に存在するカーネル王国、ムーンヴァレー領に生息する牛の魔物。Cランク。毛皮は一体日本円で15万円程度。肉はA5ランクレベルの味で美味しい。」
念の為にグングルピクチャーで鑑定したら、前のブタの魔物より弱く、肉も美味しそうだ。
これを倒したら高級ステーキ食べ放題…
「やっぱちょっとお肉取りに行ってくるわ。こうちゃん抱っこしてて。剣借りていいかな?」
「あー、わかった。無理すんなよ。」
50m近くで車を停めて貰い、走って行く。
護衛の人がなかなか苦戦している。
さっき祥志に充電してもらったミスリルの剣を力一杯投げる。全然違う方向に飛んでいくけれど…。
【転送】!!
ブウウウン
その瞬間ブラウンボアの背中付近に突如剣が現れた。
剣はそのまま突き刺さり、雷撃を喰らわせた。
祥志が【充電】すると、どうやら雷属性なので、その効果が出るようだ。
ブラウンボアはビクビクと震えた後そのまま動かなくなった。
「大丈夫ですか?」
「はい、危ない所を…。本当にありがとうございます。」
護衛に声をかけると、かすり傷を追っただけで大丈夫そうだった。しかし、馬車が壊れてしまっている。
すると、馬車の中から銀髪の美少女が出てきた。
「トムス、大丈夫?」
どうやら護衛の人はトムスさんと言うらしい。
「お嬢様!この様な失態を犯してしまいまして申し訳ありません。私は無事ですが、モンスターに馬車が破壊されてしまいまして。この方が倒してくださったんです。」
「まあ。初めまして。ムーンヴァレー公爵家が娘、ニーナと申します。この度は助けて頂き本当にありがとうございます。」
あれ?この人、ケネスさんの娘さんじゃない?




