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【20】初めての異世界ご飯とお肉の解体。


 早速食堂に3人で座り、メニューを見ながらウェイトレスさんが来るのを待つ。


 うーん、ワクワクするなぁ。


 書いてあるのは異世界の文字なのに何故だかスラスラ読めるのが不思議である。


(えーっと何なに、ポテトと干し肉の炒めもの、フィッシュフライ、サラダ、パン、野菜スープ、おつまみナッツ、ハムの盛り合わせ…)

 洋食が中心でつまみ系からご飯ものまで一通り揃っているが、デザート系だけはないようだ。


「お待たせしました!ご注文は何にしますか?」


「えーっと、このサンドイッチと、紅茶を2つと果実水と、ポテトと干し肉の炒め物と、ボアのステーキをいただけますか?」

なんとなく無難そうなメニューから選ぶ。レッドオークの皮が手に入るし、お金はあまり気にせず頼んでしまった。


「かしこまりました。」


3人で料理を待っていたら、隣のガタイの良い40代くらいの髭面の男性が話しかけてきた。


「よう。見ない顔だな。お前らもシルバー・ベア目当てでこの村に来たのか?」


…え、その熊、うちの前に先週まで転がってたやつじゃん!


「いいえ、そういうわけではないんですけど。ここら辺によくシルバーベアは出るのですか?」

森でまた会わなくて本当に良かった…。


「ああ、そうだ。最近一頭は誰かに倒されちまったらしいが、魔王が出現してから満月の度に数匹生まれるそうだ。毛皮がとっても高く売れるんでな。噂を聞きつけて冒険者がこの通りよ。村も間接的に俺らに守って貰えるし、一石二鳥ってやつだ。」


なるほど。ちなみに、多分その1匹を倒したのは私の家です。


「ところで、お前らの武器ってそれか…?それじゃあそんなに戦えんだろう。向こうに武器屋があるからちゃんとしたの買った方がいいぞ。子供もいるんだしな。あっちに武器屋と防具屋がある。」

男性の目がハンマーと鎌に向けられている。


「あ、ありがとうございます。行ってみますね。」

お礼を言うと丁度ご飯が来た。取り分け用の小皿も持ってきてくれたみたいだ。


「お待たせしましたー。」

おお、来た来た!まずはサンドイッチを食べよう。 


「「「頂きまーす。」」」

ぱく。モグモグ…。


(え、なんか、微妙。)

なんて言うか。パンもぼそぼそだし、味が塩味しかない。ポテトと干し肉の炒め物も芋がベチャベチャだし、干し肉はベーコンかと思ったら何か違う肉だった…。ステーキはさすがに大丈夫だと思ったのに一切れ取り分けて食べたらめっちゃ硬い!これ、筋切りしてないじゃん。


「…いらない。」

こうちゃんがしかめっ面でご飯を食べるのをやめてしまった。こ、こうちゃーん。

 唯一果実水は普通の味だったので飲ませる。


 祥志をチラッと見たら、目を見開きながら無表情で食べている。あ、これは美味しくない時の顔だ。


(ちょっとこれは食べきれないかも…。)

 食べ物をどう処理しようか悩んでいたら、さっきのおじさんが話しかけてきた。


「おい、お前ら。情報料、まだ貰ってねぇぞ。そのステーキよこせや。」


 チラッと祥志を見ると頷いている。


「あ、良かったら全部どうぞ。気が効かなくてすみません。取り分けてるので直接手はつけてないので。」


笑顔で言うと、おじさんのテンションが上がった。


「こんなにいいのか?悪りぃな。ぐへへ。ここのメシはうめぇもんな。いやー、エールでも奢らせようと思ったけどよ、これで勘弁しといてやるよ。」


命名、残飯処理おじさん。


「タチバナさん。もう解体できたそうです。」

 席を立とうとしてたら丁度さっきの受付のお姉さんに呼ばれた。


「…あ。じゃ、私達そろそろ行くんで。」

良かった、いいタイミングである。


「おう。頑張れよー。」

残飯処理おじさんが手を振っている。


◇◇

「大丈夫でしたか?」

歩きながらお姉さんが心配した顔で話しかけてきた。

「へ?」

「あの人、ジャンさんって言うんですけど、よく新人に話しかけてご飯を奢らせるんですよ。」

あ、やっぱりそっち系の人でしたか。


「ああいう感じの人、結構いるんですか?」

祥志がお姉さんに聞くと、頷いている。


「気をつけてくださいね。あなた達、珍しい服着てるからお金持ってそうに見えたのかも。あ、着きましたよ。」


解体室の台にはお肉がデン!と載っていて、毛皮も切り取られている。解体してくれた男性が、ニコニコと笑いながらこうちゃんに手を振ってくれたので、頭を下げておいた。


「えーっと、お肉は持って行くんですよね?毛皮と素材は買い取らせて頂きまして、全部で登録料と食事代を差し引いて白金貨4枚と金貨8枚、銀貨9枚になります。どうぞ、こちらになります。」


おおお、日本円で48万9000円!ありがたく頂いていきます。


 お金とお肉にアイテムボックスの指輪をかざすとスゥッと吸い込まれていった。


「…さっきから思ってたんですけどそれ、アイテムボックスですよね。高かったのでは。」


お姉さんが呆れたような顔をしている。


「えーっと、貰い物です。」


「いいですか。それ程容量が大きいものは珍しいのであまり人前では出さない方がいいですよ、盗まれちゃいますからね。。レッドオークが3体余裕で入るものだったら、白金貨150枚はするかと思います。まあ、私と彼はギルドの職員なので口外しないですけれど。」


ということは、1500万円?!本当は家も入ってるくらいの容量だから、もっともっと高いよね…。


「す、すみません。」


「謝ることじゃないですけどね。でも普通に危ないですから、気をつけてくださいよ。詮索はしないですが。」


…アイテムボックスを人前で使うのはやめておこう。


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