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【間話6】公爵令嬢の本音〜ニーナ•ムーンヴァレー公爵令嬢視点


◇◇ニーナ•ムーンヴァレー公爵令嬢視点


 わたくしとマティアス第二王子の婚約が決まったのは共にたった7歳の時でした。


 公爵家で丁度同い年、私が長子だったということで王家の方から命じられたのです。


 高位貴族の中で少し傲慢な所がある、と評判の第二王子。しかしムーンヴァレー公爵家は家臣としてそれを受けざるを得ませんでした。


 父と母は政略結婚だったものの、お互いに人柄もよく仲睦まじい夫婦として社交会でも有名です。


 なので、私も例え政略結婚だったとしてもきちんと交流して仲を深めていけばきっと良好な関係が築けるはず、と思っておりました。


 金髪の髪に美しいサファイアのような青い瞳のマティアス様。初めての彼に会った時、私は彼の美しさに純粋に目を見張りました。


 しかし、当人から出たのは

「ふん。確かに顔は美しい。しかし、銀の髪とは、まるで老婆のようだな。」


という残酷な言葉でした。

 

 大好きなお父様の色である月のような銀の髪と紫色の瞳は私の誇りでした。


 なので、その言葉で酷く傷つくと同時に、いくら王命とはいえこんな人と家族にならなければならないのか、と落胆したのを覚えています。


 とりあえず腹が立ったので心の中で100回程ぶん殴ってやりました。


 周りの護衛の者も例え7歳の子供であったとしてもさすがにまずい発言だと思ったのか、後日正式に王家から謝罪の文書が送られました。


◇◇


 それでも月に一度は我が公爵家で交流のお茶会は行われておりました。


 なんとか関係を改善しようとこちらが話題を提供しても、マティアス様は馬鹿にしたように悪態をつくだけでした。


 歳を重ねても一向に変わりません。


 父がなんとか婚約を解消しようと手を尽くして下さいましたが、王家によってそれは退けられました。


 一度、夜会でマティアス様のお兄様であるフランク殿下にこう言われました。


「弟がすまないね。私の方でもよく言って聞かせるから。」


 そんな事を私に言うくらいであれば婚約解消を受け入れてもらえるようにあなたも何か役に立ちなさいよ!


 と思いつつ、心の中で王太子も30回程殴っておきました。


 あんな人が将来我が公爵家の人間になるというのが嫌で仕方ありませんでした。


◇◇


 13歳になり、私達は王立学園に入学致しました。国の法律で、王国内に住む王族は必ずこの学園に入学する事が義務付けられているのです。


 マティアス様は口では努力している、と言うものの実際には自発的に何か探求したりはされません。


 婚約者として近くで見ていても、与えられたものを嫌々こなしているという印象でしかありませんでした。


 それが学園入学後は顕著になりました。定期的な学力試験が行われた際、マティアス様はせいぜい10位前後、私が首席、という事態が続いたのです。


 その頃から前まではどちらかというと臣下の娘である私を下に見ているような目が、憎々しげなものに変わっていったのでした。


 その後、弟のシリウスがマティアス様の側近に任命されました。表面上は殿下を持ち上げている弟も、心の中では線を引いているようでした。

 

◇◇


 そんなある日のことでした。再びこの世に魔王が出現したというニュースが国中に飛び交ったのです。


 今までは発生しなかったBランク以上の魔物が次々と発生するようになりました。


 我が公爵領でもシルバーベア等の高ランクの魔物が発生するようになってしまい、お父様自らが討伐に行く事も増えました。


 そして、このままでは国政に支障が出てしまうとのことで国から神殿に聖女召喚の命が下りました。


 古からこの儀は行われているものの、何故か聖女様に関する文献は民衆に出回らず、王家のみに受け継がれておりました。


◇◇


 召喚されたのは私と奇遇にも同い年の黒髪の美しいアヤネという少女でした。


 学園に編入されたアヤネ様。歩くたびにキラキラとまるで光を放っているような神々しいお姿に思わず見惚れてしまいます。また、とても気さくで学力査定も満点であったことも知っておりました。


(お、お友達になりたいわ!)


 私はこっそりとアヤネ様を目撃した時は、お母様から遺伝した火の魔法をコントロールして上質な紙に素敵なお姿を転写して愛でておりました。


(ああ、尊いですわ!)


 私のアヤネ様アルバムはこれで三冊目になります。

 

 アルバム制作の為に睡眠を削り目にクマを作っている私の姿を何故か父が過剰に心配そうな目で見てきますが、まあ良いでしょう。


 もっと色んなアヤネ様のお姿を拝見したいですが、マティアス様や側近達の庇護に入ったというアヤネ様は、トイレや着替え以外は誰かに付きまとわれ…付き添われており、なかなか話しかける事は出来ません。


 そんな彼女の事をマティアス様は庇護という言葉を振り翳して、鼻の下を伸ばして追いかけ回しておりました。また、他の生徒が意図せずアヤネ様に近づこうものなら血相を変えて牽制するのです。


 淑女教育を受けた私にはわかります。にこやかに答えつつも本当はアヤネ様のお顔がかすかに嫌そうに引き攣っているのが。


 あんな男にロックオンされているのがお可哀想でお可哀想で。ついつい同情したような視線を送ってしまっておりました。


◇◇


 ある日、アヤネ様のお姿をこっそり念写しようと人気のない食堂の窓際で張り込んでおりましたら、自称アヤネ様の親友と名乗る子爵令嬢が無礼にも私に話しかけて参りました。


 ずっとアヤネ様を心の中で愛でていた私にはわかります。この女は嘘をついていると。


(アヤネ様のこの世界で初めての親友はこのわたくし!私がなるのですわよ!)


 しかも、この女は、

『アクヤクレージョーのあんたなんかより、アヤネ様はマティアス様とお似合いなのよ!』


と宣ったのです。


「失礼な事をおっしゃらないで!アヤネ様とお似合いなのはこの私よ!ホーッホッホッホッ!」


と嘲笑ってやりましたら、尻尾を巻いて逃げていきましたわ。


 ところが、この子爵令嬢が今度は人目のある所で空気の読めない発言したそうで。


 アヤネ様とマティアス様が恋仲であるという噂が流れてしまいました。


 腹が立ったので、この子爵令嬢の家の一番よく使う交易のルートを我が家の力でその日のうちに絶ってやりましたわ。


 オーホッホッホッホッ!


◇◇


 その後何かを勘違いをした寄家の者達がアヤネ様に危害を加えてしまいました。


 しかし私はその者達に厳重に罰を与えることを約束すると共にちゃっかりアヤネ様を我が家に招待することに成功したのです。

 

 ついでにバカ王子も誘ってしまいましたが、態度がまた悪かったら無視してしまえばよいですわ!


 はぁー、お母様にアヤネ様との姿を沢山念写してもらうのが楽しみで仕方ありません。


 これで私達が親友になるのは、きっと間違いありませんわね。


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