【18】おもてなし会議〜楽旨豚バラ巻き
さて。もう少しでこうちゃんが起きてしまうので急いで夕飯の準備をする。
今日のメニューは楽で美味しい、レンチン豚バラ巻と枝豆、湯豆腐、だし巻き卵、ほうれん草のお浸し、桜エビと筍の炊き込みご飯である。
まずはお米を研いで目盛りよりちょっと少なめにお水を入れた後、お酒と顆粒出汁、醤油、刻み生姜、桜エビと筍の水煮を入れて炊飯予約する。
このレシピは私が独身の時行きつけだった飲食店の大将が教えてくれたレシピである。
お店では土鍋で炊き上げているのだけど桜エビの出汁が本当に美味しい。
次は湯豆腐を作る。小鍋に水を入れて乾燥昆布と顆粒だしを入れて豆腐を切って一丁入れて出来上がり。
ほうれん草のお浸しも沸騰したお湯に茎の方から入れて茹でて、水を切って食べやすい大きさに切って鰹節と醤油をかけるだけ。
枝豆は冷凍のものを流水解凍しておく。
そして今日のメインはレンチン豚バラ巻きである。
まずは耐熱皿に砂糖を大匙1、酢を大さじ2、おろし生姜とおろしニンニク、醤油を大さじ2、ごま油をたらりと入れて、一分半レンチンする。これでタレが完成だ。
あとは千切りしたキャベツを豚バラで巻いて耐熱皿に並べていく。これを食べる直前に8分半レンチンする。
最後にレンチンした豚バラ巻きにブロッコリースプラウトをのせて、タレをかければ完成だ。
レンチン以降の作業は祥志が帰ってきてからやるので豚バラ巻きを並べるまで下拵えして冷蔵庫に入れておいた。
◇◇
「「「頂きまーす!」」」
六時半に祥志が帰ってきたので晩御飯にした。
「おー、豚バラ巻きだ!俺、これめっちゃ好きだわー。」
冷えたビールと一緒に食べるとまた美味しいんだよね。今日は大変だったから沢山食べて飲んで下さいな。
「ままー!ご飯おいちいー!」
こうちゃんは桜エビと筍の炊き込みご飯が気に入ったようだ。
私も豚バラ巻きを頂く。豚バラって脂っぽいけれど、これは蒸しているからさっぱりと頂ける。
野菜も沢山取れるのが嬉しい。レンチンだけで凄く美味しいので主婦の味方である。
◇◇
食後にみんなで新千歳空港で買ったチーズケーキを食べながら紅茶を飲んでいたら、紅茶が震え出した。
あ、もう午後8時か。
『ショージ殿、エーコ殿、コージ。夜分すまない。ケネスだ。』
紅茶の水面にケネスさんの顔が映っている。
祥志は初めて魔法を見たので、すげー!と言って感動している。
『早速だが、日曜日の食事の件についてだ。マティアス王子は肉類がお好きで、聖女殿は果物を使った身体に良いデザートをご所望とのことだ。私達の家族は基本的にもてなす側なので何でも良い。エーコ殿の料理は何でも美味いからな。』
わー、ナチュラルに褒められるとなんだか照れますね。
「ありがとうございます。ちなみにどういった趣旨の会なんですか?お菓子よりお食事メインにした方がいいですよね?」
『そう…だな。その方が良い。趣旨は、何というか、娘の意向なんだ。』
「そうなんですか。婚約者の王子様を呼ぶのはわかるのですが、聖女様を呼んだのはその…何か力を領地の方に使って頂く為にご招待した感じですか?」
聖女様って確か病気を治したり、疫病を治すのがテンプレよね?
『いや…。そういう訳ではないのだが。実はな…。』
そこでケネス様が話してくれたのは予想外のお話だった。
なんと王子が娘さんと婚約しているのにも関わらず、学校で『聖女様と王子が浮気している。』と噂になっているらしい。
一応、ケネスさんの息子も王子の側近をしているが、聖女様に関しては基本的に主である王子の指示に従っているだけなのだそうだ。
ただ、弟さんの目からも聖女様と王子が恋仲であるようには見えなかったそうだ。
ケネスさんとしては王族側から何の説明もないが、当然王子にいずれ将来婿に入ってもらうつもりで動いていたので困っていたそうだ。
仕方なく自分達で調査したところ、どうやら聖女様は潔白だったけれど王族側が何を考えているのか結局わからなかった、との事だった。
そして、丁度調査が終わる直前の時期に公爵家の寄り家の子女が噂を信じて聖女様に危害を加えてしまったそうだ。
なので、そのお詫びと称して王族側と聖女が何を考えているか知る為に食事をする機会を作ったのだという。
(何だかアレだ。公爵令嬢を婚約者に持つ王子が異世界からやってきた聖女様と浮気だなんて、ますますラノベでよくあるような話だな。実際は聖女様にはその気はなかったようだけど。)
「…となると、話がゆっくり出来るような料理を用意した方が良さそうですね。あ、ちなみに鮮度の問題はどうにか出来そうなので食材は全部こちらで用意しますね。」
とりあえず、ブッフェ形式とかはやめた方がよさそうだな。
『わかった。宜しく頼む。』
「じゃあ、お料理の件はこれで大丈夫です。あと、実は私達の方から込み入った話がありまして。結構深刻な話なので家族全員で、会った時に直接相談させて頂いても良いですか?土曜日に前泊することになってますよね?その時にでも。」
『…ん?わかった。構わないが。では3人で泊まれるように部屋を用意しておこう。』
よーし、出発までに頑張るぞ!スキルはともかく魔法を身につけたり、料理を考えたり大変だけどね。




