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【間話3】人生とは諸行無常である…が!〜聖女アヤネ視点


◇◇聖女アヤネ視点


 かの釈迦は言った。『人生とは諸行無常である』と。しかし、これはないんじゃなかろうか。


 王は私に要約すると、「魔王を倒せ!魔王を倒したら元の世界に帰れるかもしれない!知らんけど!ついでに学園にも行ってくれ。」という事を威厳がありそうな感じで言って満足そうに去っていった。


 人生は常に変化している。確実なものなどない。事実この世界に召喚されて、私の状況は大きく変わった。

 

 しかし何故魔王を倒すのに学園に通うだろうか。そのまま倒しに向かえばいいのでは。というか、なぜ部外者である私がそんな事せねばならないのか。


 まあ、確かに沢山の人が困ってるなら協力するのも吝かではないが、一方的に召喚するというのはいかがなものか。


 しかも、帰れるかわからないのに死ぬ可能性もある魔王討伐をしろとは横暴ではなかろうか。


 私は王宮で保護されたのだが、なぜか王宮でも学園でもマティアスという第二王子と周りの側近が金魚の糞のようにまとわりついてくる。

 

 一回、ついてこないでほしい、とやんわりと美少女スマイルで言ったのだが、

「君を庇護するのが僕達の仕事だから。」

と言ってやめない。


 ついてきてるだけで何もしてないのに、庇護とは一体何であろうか。


 ああ、渋々通い出した学園でのこの人達の婚約者の女の子達の視線が痛い。


 違う!違うんですよー!


 まとわりつかれてるせいで日課だったランニングもなかなかできない。ついでにこの世界はご飯も不味い。最悪である。

 

 ああ、1人になりたい!ついてこないでほしい。


(…お兄ちゃんとお父さんとお母さん、どうしてるかな。)


 もう2ヶ月半も経ってしまった。恐らくとても心配しているであろう。しかし、帰る術がないので私にはどうしようもない。あ、もしかして、こっちで死んだら戻れるのだろうか。でも違ったら笑えないしなー。


 最初希望が少しでもあるならと思い、早めに魔王を倒してしまいたかったので、すぐに魔法も覚えた。王宮に歴代の聖女が使っていた白の魔導書が保管されているのだが、それで勉強し、実践するだけで良いらしい。


 正直そこまで難しい内容もなかったので、1週間程で全部覚えた。応用も覚えた。


 魔導書はダルシム先輩(仮)に想いを馳せながら、アドームカヴルクシャーサナのポーズで読ませて頂いた。


 結果、腕が疲れた。


 試しに魔法を発動させてみたら簡単に出来た。


 なのでそろそろ出発したいですと伝えたのに、学園で『真実の愛』を見つけないと、魔王は倒せない、と謎な事を言われてしまった。


 向こうも1週間で魔法を覚えると思っていなかったようだ。そして、現状である。勘弁してほしい。唯一良かったのは私がどんどん強くなっており、歴代聖女が魔王を倒していたレベルを既に超えたことだ。



◇◇

 ある日、眼鏡をかけた女子が、学園のトイレでいきなり話しかけてきた。確か同じクラスのモモ•ブランディア子爵令嬢だ。


「ヒロインのアヤネだ!親友のモモになれるなんて嬉しい!ねー、アヤネはマティアスとリュクスとカイとシリウスなら誰にするの?その人と魔王討伐の旅に出るんでしょ?」


思わず目を丸くする。


(…なんで今初めて話したのにこの人私のこと親友だと思ってるんだろう。それに、昨日までとなんだか雰囲気が違って怖い。というよりヒロインて何?)


「えーっと。そういう話は聞いた事がないけれど。あと、ブランディアさんと親友になった記憶もないけれど。誰にするのってどういう事かな。今言った人達、全員婚約者いるよね?聞かれたら誤解を招くような事言わないで欲しいんだけど。」


 ちなみにマティアスは第二王子だがそれ以外は側近の名前だ。リュクスは宰相の息子、カイは騎士団長の息子、シリウスは公爵令息で、同じ学年のニーナ•ムーンヴァレーの一つ年下の弟である。


 ニーナはマティアスの婚約者なのだが、怒っているというより悲しそうな目でこちらを見てくるので申し訳なくて居た堪れない。


 とはいえ、王族を皆の前で邪険にするのもまずそうだし、どうしたら良いのか。


 公爵令嬢を呼び出して、違うんですよー、と言うのもおかしいし。本人は陛下やマティアスからはきちんと何か言われてるのだろうか。


「ううん、私は貴女と親友ポジのキャラなんだよー。貴女がルートを絞ってくれさえすれば、貴女が選ばなかった攻略対象と私がくっついて4人でダブルデートとか出来るの。ちなみに私のお勧めはマティアス!彼を選んでくれたら私が他の攻略対象誰でも選べるようになるんだよね。これからよろしくね!」


(…この人色々やばい人だ。)


「あー、ちょっと忙しいからすみません。」


なんだか気持ち悪かったのでダッシュで逃げた。普段鍛えていてよかった。脆弱な子爵令嬢じゃついてこれなかったようでホッとした。


◇◇


 次の日、登園したら、教室でいきなりモモ・ブランディアに驚愕する事を言われた。


「悪役令嬢のあんたなんかより、私の親友でヒロインのアヤネの方がマティアス様にお似合いだってニーナ•ムーンヴァレーに言っておいたよ。」


私は一瞬この子が何を言ってるのかわからなかった。


え、この子、子爵令嬢だよね。公爵令嬢に何を言ってるのだろうか。


 そしてそれを聞かれた。クラス中のみんなに。

 

「殿下は陛下から異世界から来た私の庇護を頼まれているだけで、私達の間には何もない!ムーンヴァレー様におかしなこと言わないで!」


すぐに我に返って否定したが後の祭りだった。


 もちろん信じていない人も多かったが、ゴシップ好きな人は面白おかしく噂を広めてしまうのだ。


 こうしてマティアス第二王子と私が浮気をしているという噂が学園中に広まってしまったのである。


 私は常に努力は続けている。

 日本に居た時はそれに見合った羨望の眼差しを受けていた。多少心の中に奢りはあったかもしれないが。


 しかし、今は針の筵である。


 私の頭の中でゴーンと、祇園精舎の鐘の声が鳴った気がした。

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