【13】コッコ壱カレーと宮野さんのお兄ちゃん。
夜中の4時ごろに三回目の授乳をしていたらピカッとカーテンの外側が光った。
そういえば外が森になってた日も光ってたな。今思うとアレ、ハイビームじゃなくて異世界転移したからだったんだな。
シャッとカーテンを開けると住宅街が広がっている。あーよかった。無事戻ってきてる。知ってたから驚きはないけれど。
こうちゃんが寝たタイミングでのそっと起きて弁当と朝食を作りに行く。今は午前4時20分。
今日は豚バラ丼。でも眠くてとてもフライパン使う気にならないので、薄切りを重ならないようにアルミに敷いて、コンロにぶち込んで、お肉の端っこがカリッとするまで焼くだけ。こうすると、汚れないから洗い物もいらないし。
焼いている間、小鍋に顆粒コンソメと熱湯、刻んでタッパーにストックしてあるネギと豆腐を入れて、あったまったら溶き卵をいれる。最後に乾燥わかめとごま油を入れる。
これで卵とワカメのスープが出来た。
麦茶を水筒に注いで、スープはスープジャーに入れる。お弁当箱にお米を盛り付けて豚バラをのせる。最後に醤油と胡椒で味付けして、豚バラ丼の完成である。
残ったお米はしらすと梅干しを入れておにぎりにした。
はぁー。疲れた。ペンギンのイラストが書いてある付箋に、
『祥志へ。スープ飲むならセルフであっためて。洗濯物回しといてくれると助かる。仕事頑張って!』と書いて、オニギリの隣にお弁当の入ったバッグを置いておく。
はぁー。寝よ寝よ。今日は20分くらいで全部できた。
最近は授乳の合間に弁当作って、朝は寝かしておいてもらっているけど本格的に断乳しないと倒れそう。。
◇◇
起きたら9時半だった。一緒に着替えてこうちゃんとアンパンのキャラのアニメを見ながらオニギリとスープを飲んだ。
こうしていると昨日まで異世界にいたのが夢のようだ。
テレビを見てこうちゃんが大人しくしてる間に洗濯物を干してお風呂を磨く。
洗面台を磨いていたら、
「まんまー!お外ー!」と言ってぐずり出したのでお散歩に行った。
お散歩帰りにスーパーで買い物してたらお昼になった。カレー屋さんの前を通るとプーンとスパイスのいい匂いがした。
「まま、カレー!カレー!」
とこうちゃんが動かなくなってしまったので今日のお昼は『コッコ壱カレー』にする。
◇◇
こうちゃんにはゼリーとコーンと唐揚げが付いたお子様カレーを注文し、私はアサリとほうれん草、クーポンでハーフチーズをトッピングしたカレーを注文した。
トッピングの種類がめちゃくちゃ多いんだけど、最近はパリパリチキンか今日の組み合わせが気に入っている。
「はぁー!美味しいー!(おいちぃー)」
2人でカレーを黙々と食べる。
濃厚なルーにトッピングがマッチしてめちゃくちゃ美味しい!
ここ、子供を連れてくと紙エプロンもくれるから嬉しいんだよね。
大満足で会計して、子供用のガチャガチャをしていたら、ふとこっちを見つめる男の人と目が合った。
「あれ?一樹くん?」
なんと先日話題になった、行方不明の宮野彩音ちゃんのお兄さんである。
一樹君は、一昔前の少女漫画に出てくるインテリイケメンを立体化したような青年である。
体育会系イケメンが本命のヒロイン…の『当て馬』として出てきて、『俺にしとけよ!』と言って壁ドンして、読者投票では、ヒーローよりうっかり人気が出てしまう系男子だ。
作中ではメインヒーローが金髪なら、髪の毛をベタ塗りされているような感じの。
「立花さん、こんにちは。晃志くん、大きくなったね。」
まさかオバチャンに当て馬系イケメンだなんて思われているとは知らず、ニッコリ笑ってくれたけれど(ご馳走さまです。)なんだか目が引っ込んで疲れた顔をしている。
「もうすぐ2歳になるからね。一樹くんは、えーと、、色々大変だったでしょ。お母さんとお父さん、大丈夫?」
すると、寂しそうに微笑んだ。
「まあ2人とも教師なので、やはり休んだりはなかなか出来なくて。それに、敢えて忙しく働くことで現実逃避出来てる感じですかね。僕も実習が始まって忙しいですし。それに…」
「うん?それに?」
「僕にとっては勿論可愛くて大事な妹なんですけど…。彩音にとって自分はどうだったのかなって。もし、本当に出ていってしまったのだとしたら。僕らの事が嫌いになってしまっていたのだとしたら。会うのが少し怖いんです。まあ、命が無事なら、嫌われていてもいいんですけど。」
…いきなり重い話をぶっこんできましたよ。まあそうだよね。。あんだけネットで叩かれたらなぁ。彩音ちゃんが美少女だったから余計変な感じで炎上したんだよね。
話、誰かに聞いて欲しかったのだろうな。
結局そのあと15分くらい立ち話をした。見つかるかもわからないのに安易な事は言えないけれど。
力になれる事があれば…と言って別れた。




