【93】真実を見つける旅④〜あの日のやり直し編
80年前から戻った私はこうちゃん、メイアさん、アメリアさん、そして三浦太朗(外見はクリスピア3世)と一緒に現在のムーンヴァレー家でケネスさんと対峙していた。
そう。私がアメリアさんにお願いしたのは、『三浦太朗と一緒に現代の日本に来て欲しい。』だった。
「いやー、まさか死んでから未来の大日本帝国が見れるとは!!私は果報者であるなぁ!!」
と三浦太朗はむしろ大乗り気だった。
だ、大日本帝国…。すみません、敗戦して民主主義に生まれ変わったんですよ、日本は。けれどそこら辺はまだ言えていない…。
ちなみに何度かタイムスリップしてわかった事がある。
どうやら自分がタイムスリップしていた時間分現在に戻って来ると時間が経過しているらしい。
ちなみに現在の時刻は午前11時半である。
メイアさんに遭遇したのが今日の朝7時。
魔王討伐で経過したのが2時間。(当時の時刻で午後3時半から5時半)
70年前の号外が出た日にクリスピア•カーネル邸で過ごした時間は2時間半なので、現在の時間は4時間半経過して11時半という訳である。
「ケネス様、使者の証をありがとうございました。お返し致します。」
そう言って、ムーンヴァレー家の家紋が入った宝石を返す。
「うむ。栄子殿、コージ、無事帰ってきてくれて何よりだ。アメリア殿、太朗殿、…そして、メイア殿。
遠いところ、そして遠い時代からよく来てくれた。」
そう言って歓迎の意を示してくれた。
その言葉にメイアさんが息を呑む。
「どうして…。私は貴方の家に害を及ぼそうとしたっ!それなのにどうして歓迎してくれるの!」
すると、ケネスさんはフッと笑った。
「…決定的な証拠は今の其方の発言だけだ。私は聞かなかったことにする。だからどうか今後は我が家と友好的に接してくれないだろうか。」
ケネスさんがそう言うと、メイアさんは少し黙り込んだ後に小さく頷いて、
「…申し訳、ありませんでした。」と言った。
色々と勘違いしていたんだもんね。メイアさんのやった事は恐ろしいが、ケネスさんなりに彼女を同情していたのだろう。
実際に公爵家がスタンピードにならなくて本当に良かった。
アメリアさんは驚愕の表情でキョロキョロしている。
「凄いわ…!!本当にムーンヴァレー公爵邸だわっ。それに、ケネスさん。貴方、私の弟にそっくりよ。」
「まさか私も自分の先祖に会えるとは思っていなかった。ゆっくりと過ごしてくれ。」
そう言ってケネスさんは笑った。
「ケネスさん、それでですね。先日いらっしゃったサダオさんのお母様が『コピー』のスキルを持っているらしくて。早速クリスピア3世の肉体を作ってこようと思います。」
私がそう言うとケネスさんが頷いた。
「ああ。早く解決して来るが良い。今日は夕食のシフトも休んで良いからな。」
そう言ってくれた。
この時、私は小声でケネスさんにある事をお願いしたら、『わかった、絶対にどうにかする。』と言ってニヤリと笑った。
よーし、じゃあお昼ご飯を食べたら桜さんの所に行きますか。
私はlimeでレオナさんに連絡するとすぐに『伝えておく』と返事が来た。
私は太朗さん、アメリアさん、メイアさんを率いて自分の家に来た。
「祥志ー!ただいま!」
私は玄関のドアを開ける。
「おー、おかえりぃー。…というか、今回も随分大人数で来たな。で、解決しそうなん?」
祥志にそう言われて頷く。
「うん、やる事はまだ沢山あるけどねー。とりあえずお昼だから帰ってきた。午後も出かけるけど、夕飯までに帰って来れるように頑張るわ。」
「おー、わかった。」
さてと、ランチの支度をしなければ。
「皆さん、何か食べたいものはあります…?」と聞くと、食い気味で太朗さんが
「和食!!」と言った。
なので、ブラウンボアの牛丼とお味噌汁、胡瓜の漬物、出汁巻き卵を作ることにした。
お米を炊いている間にお味噌汁とだし巻き玉子を作る。
牛丼の作り方は簡単だ。みりんとお醤油と刻んだ玉ねぎとブラウンボアの薄切りを一緒に炒めるだけである。
出されたメニューを見て太朗さんは
「牛めしか!」と言って大興奮だった。
ちなみに太朗さんには生卵と納豆と明太子も出してあげた。
ずっと和食が食べられないのは可哀想だもんね。
「美味い、うまい、」
と泣きそうになりながら生卵をご飯にかける夫を見て、アメリアさんが
「貴方がずっと食べたがっていたのはこれだったのね。」
と目を丸くしていた。
メイアさんは黙々と食べた後で小さな声で
「…美味しい。」
と言った。
◇◇
この後、桜さんの所に行く予定だが現在の日本の景色を見たいと太朗さんが言った。
転移でも行けるけれど、みんなで車に乗ろうという話になった。
祥志は車が定員オーバーになるので留守番である。
「まあ、ブロックでもやってゆっくりしてるわー。」
と言っていた。
車庫に行って愛車の『フィックス』を見た途端、太朗さんが大興奮だった。
「これは、この流線型の美しい自動車は!!ドイツ帝国の工業デザインに影響を受けているのだな!」
そう言ってペタペタ車のボディを触りまくっている。
「どうなんでしょう。でも、量産のしやすさや機能美は考えているでしょうね。
きっと街に行ったらもっと驚くことがいっぱいありますよ。」
そう言うと太朗さんは嬉しそうにアメリアさんと後部座席に乗りこんだ。メイアさんは助手席で、こうちゃんはチャイルドシートに乗せる。
こうして私達はサダオさんの実家に向かうのであった。




