【91】真実を見つける旅②〜魔王vs聖女編
「ま…ママ…?」
メイアさんは呆然としている。
「シー!!!静かに。これから魔王と聖女の戦いが始まりますよ。」
そう言うと、丁度クリスピア3世が叫びだした。
「魔王よ!私は伴侶である聖女キヌと瘴気を撒き散らし世界を混乱させる貴様を倒しに来た!!さあ、ドアを開けろ!」
すると、
「さすがクリス…!!男らしいわ!」
と聖女キヌがヨイショする。
…なんか、多分王宮で洗脳されてたんだろうけどさ。
ラミダスさんが病気だと知っている身としてはやり切れないな…。
すると、暫くするとラミダスさんと思われる黒髪の男性があからさまに具合の悪そうな顔で
「はい…。」
と言って玄関先に出てきた。ちなみに、ちょっと顔立ちはヨルムさんに似ている。
…あー。。顔が青白い。大丈夫だろうか?
すると、クリスピア三世が、『やっと出てきたか!臆病者め!』と煽っている。
いや、臆病者じゃなくて病気なんだよ!!気づいて!!
すると、ラミダスさんが
「そうか。俺を倒しに来たのか。…まあ、ある意味、寿命がきたと言う事なんだろうな…。」
そう言って寂しそうに笑った。
すると、カップル2人は手を握り合って聖剣を発動させた。おお、眩しい!
「「愛の聖剣!!」」
…お、おおおおおお。
これは、正直言って恥ずかしい…。しかも実は何の効果もないのをロキさん本人に聞いてるから余計に…。
チラッとメイアちゃんを見ると何とも言えない顔をしている。
さらに2人の背後によく見ると、ロキさんがいつの間にかヌッと出現してきているではないか!!
え、ちょっと何してんの?!
ロキさんはワクワクした顔で気配を消しつつ、2人の聖剣の間からいそいそと黒い光を撃つ準備をしている…。
え、ええええええ!!!!めっちゃアナログ!!
力を与えたって言うか、ただ後ろで思いっきりドサクサに紛れて例の黒い球打とうとしてるだけじゃん!!!引くわ!
(あんなの当たったらラミダスさんが死んじゃう…!!あと、ついでにキヌさんが分離してもバレないように目潰ししないと!)
そう思って焦っているとこうちゃんが目に入る。
…こうちゃんはあの光を消せるんだった…!!!
思い出してボソボソと小声で話しかける。
「こうちゃん!ママ、この前一緒にすき焼き食べたあのお兄さんが黒い光を投げたら、光を『曲げる』から!!!
こうちゃんは曲がってきた光を消してもらっていい?」
「うん!わかったー。」
幸いクリスピア3世とキヌさんは格好つけて意味もなくゆっくりラミダスさんに近づいてきている。
普段だったら絶対イラついたけど、格好つけててくれて良かった!!
だからまだ発射されていない。
私はアイテムボックスから軍手と長めのトング2本とペットボトルと鏡を出す。
軍手を装着し、急いで右手にトングでペットボトルを構える。そして、左手にはトングで掴んだ鏡を構える。
その瞬間クリスピア3世と聖女キヌとロキさんが
「「「ハーーーーーー!!!!」」」
と言って聖剣から光を撃ったので、慌ててロキさんの黒い光に当たるようにペットボトルを差し込んだ。
すると、ロキさんの黒い球はペットボトルに上手く命中して光が屈折した。
よかった、小学校の時に通った実験教室の知識がこんな所で今花開きましたよ。
そして、『愛の聖剣(笑)』の光は鏡に反射させて上手いことカップル2人を目潰しする。
ここに、満足げに攻撃したのに目潰しされたカップルと、後ろでイタズラするロキさんと、必死でペットボトルと鏡を両手で伸ばす主婦の図が誕生した。
その横でどうしていいかよく分からない顔をしているメイアさん。そして、ボール投げのボールをキャッチするかの如く曲がってきた光を受け止めて笑う二歳児、こうちゃん。
なんだかもうよく分かんない空間である。
これが80年前に魔王を倒したと言われた日の真相である。
屈折した光は露散し、殆どはこうちゃんが打ち消した。
大分弱くなった光が少しラミダスさんに当たったが死んではいないようでホッとする。
魔王の目の前のカップル2人はまだ眩しくてよく見えていないようだ。
次の瞬間。
聖女キヌが2人に分裂した。
「え…?は…?!!!!」
それを驚愕の表情で見つめるメイアさん。
うん、まあ、私も知らなかったら悲鳴を上げてたかも。
出てきた方のキヌさんはカップル2人が目潰しされているのを幸いに、具合の悪そうな魔王ラミダスさんを抱えてどこかに飛び去ってしまった。
光が止んだ次の瞬間。
「…ま、魔王が消えたわ!」
「きっと俺たちが勝ったんだ!!!」
「…キヌ…!!!」
「…クリス…!!!」
そう言いながら聖女キヌとクリスピア3世は抱き合っている。
…うん、君達、本当は特に大した事してないからね。病人を無理矢理引っ張り出して、『愛の聖剣(笑)』って、アホな事言って格好つけて、私に目潰しされただけだからね。
そして、ロキさんがまるで、『今来ました!』とばかりに出てきてこう言った。
「よくぞ魔王を倒したね。
僕はこの世界の神のようなもの…かな。ご褒美としてこれをあげるよ。『願いを叶える宝珠』だ。三つまで願いを叶えられるからよく考えてね。」
…あ、、ロキさん、『神』って言ったらきっとお兄さんに怒られるからフワッとした言い方したな。絶対…。




