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【88】『あの子』が欲しかったものって何だろう。


 あれから一旦現在の山野家に戻って皆さんに挨拶した。ローブの15歳くらいの女の子について報告すると、皆複雑そうな顔をしていた。


 ちなみにお昼のお礼にビエネッタを一箱お土産に置いてきた。昨日の今日だったからお土産を買ってこれなかったからね。


 桜さんが『これ大好きなのよー!』と言って喜んでくれたのでよかった。


 レオナさんはサダオさんの実家で夕飯もご馳走になるらしいが、私は祥志も帰ってくるので転移で家に帰ることにした。


 …なんだか今日は疲れたなぁ。


 こうちゃんをお風呂に入れて、神様にメールを打ってから夕飯の準備をする。例のちょっとグロい回復動画を添付して『聖女キヌの娘っぽい人を見つけたけど、これ、なんですか?』という内容である。


 今日はダルいからパスタ鍋にしようっと。


 土鍋にバターを引いてみじん切りしたニンニクと鶏もも肉、玉ねぎを塩胡椒で炒める。そこに白ワインを振りかけて、コンソメを入れて、ホールトマトと水を入れて、乾燥バジル、オリーブオイルで味を整える。さらに野菜はにんじん、きのこ、キャベツ、ナス、ピーマンなどを用意した。

 

 ちなみに鶏ももではなくアサリや海老、ホタテ、タコなどシーフードなどにしても絶品である。


 具材を切っていたら祥志が帰ってきた。


「おかえりー!今日はパスタ鍋だよー。」

「ただいまー。やったー。」


お腹が減っていたらしくすぐにご飯にする。

「「「いただきまーす。」」」


まずはスープだけで頂く。うん!!色んな野菜やお肉の出汁が効いていて美味しいー!!!


 食べている間にパスタを鍋に入れる。

 グツグツ、、、15分くらい煮込むとめちゃくちゃ美味しいパスタが出来る。途中で乳化させるためにオリーブオイルも入れる。


 最後にとろけるチーズを入れて混ぜれば完成だ。


「うまーい!!!!」濃厚で美味しいパスタができた。鍋の底のちょっと焦げてるパスタも美味しい。


 簡単でとても美味しいのでぜひおすすめである。

 食べ終わってこうちゃんを寝かしつけてテレビを見ながら晩酌タイムである。


 今日のことを祥志に何気なく報告した。


「そういえばね、40年前に行ってサダオさんとそのお母さんが玄関先で襲われた日にこうちゃんと行ってきたよ。」


「おー、そうなんだ。で?どうだったん?」

そう言いながら祥志はグイッとビールを飲んだ。


「ローブを捲る機会があって、見てきたんだけどさ。この子だった。」


そう言ってスマホで撮影してきた女の子を見せた。

「は?若すぎね?しかしハーフか?綺麗な子だな。」


「38歳のはずなんだよ…。しかもね、これ見て。」

そう言って例のちょっとグロいお腹が再生される動画を見せる。


「え、なんだこれ。…栄子もこれ出来んの?」

そう言って困惑している。


「出来るわけないじゃん。もうびっくりしちゃってさ。そもそも白属性ってさ。()()()()()治したり浄化したり、無効化したりは出来るんだけど、自分を治す魔法ってないんだよね。」


「ふーん、しかし、()()()()()魔法かー。しかも気を失ってなんだろ?それって自分の意思で働いてるんかね?」


そう言いながらポテチをバリバリ食べている。


「あ、確かに!無意識だと思う!!…そもそもさー。こんだけ不憫な目にあってるその『娘』さんって。どうやったら助けられるんだろ?私、わかんなくなってきたよ…。


 あの子が()()()()()()()()()って何だろう?」


そう言って頭を抱えたら祥志がキョトンとした。


「へ…?そんなん決まってるじゃん。


 両親から、あるいは他の誰かからの無償の愛情じゃない?


 だって、父親に我が子だと思えないって言われて、母親にあんた誰?って言われたんだろ?


 もし家族3人で仲良く暮らしていたらこうなってなかったんじゃない?」


あ…!!確かに。


「でもさー。お父さんのクリスピア三世はもう憑依されちゃってるわけじゃん。」

お母さんは行方不明だって言うしね。


「俺、思うんだけどさ。憑依された元々の肉体の持ち主ってどうなるんだろ?その…キヌさんはずっと肉体の中にいて、意識はあったらしいじゃん?


 ニーナちゃんに、元々のモモちゃんがどうなったかとか聞いてみたら?」


そうだった!!!どうなったんだろ?


「聞いてみる!!今電話してみるわ!!!」

そう言ってlimeのテレビ通話で電話してみる。


 トゥルルル…出るかな?


『はい!えっと、栄子さん…ですわよね?ごめんなさい、ちょっとまだデンワに慣れてなくて。どうしましたの?』


「えっとね。桃花ちゃんが元の世界に戻った後のモモ•ブランディアさんってどうなったの?


 憑依者がいなくなった後の身体の持ち主がどうなったか知りたくて。」


そう言うと、ニーナちゃんは納得した顔をする。


『あ、言ってなかったですわね。普通に元のブランディアさんに戻りました。


 何度も泣きながら申し訳ございませんって謝罪されたので、まあ、許してあげましたわ。ついでに修道院に行く予定でしたが、寄り家の伯爵家の令息と縁談を組んで差し上げました。


 まあ、婚約するかどうかはわかりませんけれど。』


おお、さすがニーナちゃん!仕事が早い!!…じゃなくて。


「そうなんだ。じゃあ意識があったのにずっと何もできなくて自分がやらかすのを見てたってこと…?」


それはそれでホラーだな…。


「ええ、そうみたいです。でも安心してくださいまし。今は縁談を組んで差し上げた私のファンですわ!!ホーッホッホッホ!!…あら、やだわ、私ったら栄子さんの前で!うふふ。」


あ、おばちゃん高笑いしてるニーナちゃん、初めて見たよ。まあこれはこれで可愛いからいいんじゃないかな。


 じゃあ『ミウラタロウ』に乗っ取られてたクリスピア3世は一連の流れをずっと見てたって言うことか。


それはそれで辛かっただろうな。なんとかこの人も助けてあげたい。


(…そういえばロキさんが『ミウラタロウ』は有名な学者だって言っていたな。)


ふと思い出してグングってみると、ちゃんと出てきた。


『三浦太朗 〜1872-1947年 没。

 札幌農学校(現、北海道大学)在学中からジャガイモ、タマネギ、とうもろこしなどの研究を行い、何百種類もの交配を研究した。


 現在の人気ブランドの原点とも言えるような品種など、様々な研究成果を残し大正天皇より勲章を授与されている。』


 あ。多分この人だ。


 …でも、この人1947年に亡くなっている。


 恐らく当時の人としては長生きな方だし、植物状態に一時的になっていたとしても、寿命を全うしたと思われる。


 1945年に聖女召喚が行われたということは、彩音ちゃんの『強制送還』だと元に戻ったら死んでしまう。


 それにミューラ伯爵家も無くなってしまう上、ムーンヴァレー家に農業の知識が入ってこなくなってしまう。


 キヌさんみたいに肉体をコピーして、2人に分かれたら人格も1人ずつになる可能性も高いし、それが最善かもしれない。


 ただ、『コピー』のスキルを持つ人を探さなきゃいけないな…。


 クリスピア3世がもし再び聖女キヌ(憑依の方)のところに戻れば何かが変わるかもしれない。


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