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【86】サダオさんの実家訪問。


 今日は朝からサダオさんの車で、レオナさん、私、こうちゃん、サダオさんの4人でサダオさんの御実家に向かっている。

 

「へぇー!こっちの方は初めてきました!」

私は窓から見える広大な畑に心を弾ませる。あぁー、春だなぁ。緑の絨毯に心が癒される。


「まあ、確かに特に観光するようなところもねぇからなぁ。登山客がたまに来るくれぇだ。」


そう言ってサダオさんはハンドルを切る。


「そう言えばレオナさんに聞きましたよ。お二人がお付き合いを始められたとか。おめでとうございます。」


そう言うと、レオナさんが照れ出し、サダオさんの耳が後部座席から見て少し赤くなった。


「あ…ああ。まあ、俺と付き合ってくれるなんて、ありがてぇこった。」

サダオさんがそう言うと、レオナさんが

「まあ!サダオさんはとってもカッコいいわ!!」

と言い出した。


 はいはい…。今が付き合い始めで一番楽しい時期かー。思う存分惚気てくださいな。


「あ、そう言えば、limeの件なんですけど、狭間を通れるのって一人で来たとしたらやっぱり白属性の人だけらしいんですよ。私と彩音ちゃんではないし。


 サダオさんの家族じゃなかったら、憑依した方の聖女キヌ本人か、その娘か、その子孫くらいなんですよね…。まあ、だから詳細分かればすぐ特定出来そうで。


 日付が分かればこうちゃんに連れて行って貰えば顔が見れるかもしれないし。


 だから、どの人物だったか特定出来て安全が確保出来ればサダオさんも井戸の上で生活できるんじゃないですかね。」


私が言うと、レオナさんが難しい顔をした。


「ねえ、サダオさん、当時の事って覚えてるかしら。」


「…何せ5歳くらいだったからなぁ。確かもう40年くれぇ前だ。覚えてるのはローブを被った怪しい奴で、声が女だったって事だけだ。そんで、そいつがいきなり竜巻みたいな魔法を使って鍬とスコップを俺に飛ばしてきたんだよ。


 そっからは記憶がねぇ。」


 なるほどね。ということはまだ生きているサダオさんのお母さんに聞くしかなさそうだな。


◇◇


「おやまぁー!!!サダオがまさかこぉんなべっぴんさん連れてくるとはねぇー!!!!」


サダオさんの実家に着くと、サダオさんのお父さんとお母さんが出迎えてくれた。70代にさしかかったくらいの年齢だろうか。


 お母さんの桜さんはくっきりした顔立ちで若い頃美人だったんだろうなという感じだ。お母さんが農家を継いで、お父さんが婿入りしたらしい。


 桜さんの上にお兄さんが2人いるとのことだが、1人は独身で沖縄に移住してバーを経営しているらしい。


 おお!沖縄かぁ。いいなぁ。いつかそのバーに行ってみたい。


 もう1人のお兄さんは産地の窯業試験場で働いた後、青年海外協力隊でインドネシアに行き、それからは職人として働いているらしい。現在は常滑で奥さんと2人で暮らしているそうだ。


 サダオさんのお父さんは随分ガタイが良く、猟友会の方だとのことだ。行政から依頼があれば今も鳥獣被害を防ぐ為に頑張っているらしい。


 サダオさんはお父さんにそっくりである。


「いやぁー、もういつでも嫁にきていいからなぁー。孫の顔も早く見てぇしよー。ガハハ!!!」

と言って豪快に笑っている。


 なんか、挨拶する嫁と紹介する息子みたいになってしまっている。いや、全然いいんだけど、話も聞かねばなるまい。


「すみません、部外者の私も来てしまって。実はお話がありまして。」


「いいわよぉ。なぁに?」


そう言われて、私はレオナさんとサダオさんが将来的に井戸の外で暮らせたらいいなと思っているが、サダオさんが子供の時攻撃されたことがあるので、狭間から侵入者が来ることを心配していて、と伝える。


すると、桜さんは目を見開く。

「あんた…。なんであんな変なとこに家建てたんだろうと思ってたけど、そうか。あん時のこと覚えてたとはねぇ…。」


そう言われてサダオさんは何とも言えない顔をする。

「そりゃあな。子供ながらに鍬が飛んできたのはなかなか衝撃だったからな。」


「で、私の方で狭間を通れる人の条件を調査したんですけど、『異世界との狭間』は白属性の魔力持ちの人じゃないと通れないらしいんです。


 その上で思い出して欲しいんです。当時狭間から来た人ってどんな人でしたか?あと日付や時間なんかも教えて貰えると嬉しいのですが。」


 すると、桜さんは驚愕の表情を浮かべる。


「『異世界との狭間』のことを知ってるって…。お嬢さん、一体何者なの?」


そう聞かれて、私も自分のことを話す。


 家ごと異世界に転移して神様から私は白、夫は雷、息子は時間属性を与えられた事。


 現在は聖女キヌとクリスピア三世の『娘』について調査を命じられていること。


 クリスピア3世に日本の学者が憑依した事で人格が変わり、キヌと娘は屋敷を出て行き、キヌは行方不明、娘は辛い人生を送った事で白の能力を悪用するようになってしまったということも。


 すると、桜さんが固まる。


「え…。もう一人のお母さんに『娘』なんていたの…?」


「はい。いたみたいです。丁度クリスピア3世の屋敷をもう一人のキヌさんが出て行った時にお腹にいたみたいで。」


私が言うと、桜さんが蒼ざめる。


「…もしそうだったとしたら、あの女の子があんな風になった理由がわかった気がするわ。


 母が言ったのよ、あの子に。


 『あなた、どなた。』って。

 

 元々同じ肉体だったのだから、その子のお母さん、私の母と同じ顔…だったのよね?」


そう言うと部屋がシーンと静まり返ってしまった。


 それは…お父さんには自分の子だと思えないって言われてお母さんだと思った人に『どなた?』って言われたってこと?


 それは、きつい。。きつすぎる。


「それとね。私、サダオに鍬とかスコップとか飛ばされたもんだから、思わずその女の子に当時はなんでそんな事するのかわからなかったから、その。。反撃しちゃったのよ…。聖剣で。


 普通の人間だとは思わなかったし。そしたら気を失っちゃったから死んじゃったらなんとなくモヤモヤするし、慌てて傷だけは塞いでおこうとは思ったんだけど。


 消えちゃったのよ。忽然と。」


あー…。まあ私もこうちゃんが同じ目に遭ったらそうしちゃうかも。


 それにしても、なんで消えちゃったのかな?


「と、とりあえずその日の日付とかわかりますか?大まかな時間とかも。」


「…ええ。わかるわ。1985年。昭和60年4月3日よ。訪問があったのは午後5時くらいかしら。その日の写真もあるわ。昼間にサダオとビニールハウスの苺を収穫したの。ほら、この写真よ。」


そう言って写真を見せてくれた。おおお。めちゃくちゃ昭和臭がする写真である。サダオさん、ずんぐりしてるけど子供っぽい感じでほっぺが赤くて可愛い。


 レオナさんがそれを見て『可愛いですわあーーー!』と言って興奮している。


 しかし、40年前か。私も生まれる前である。

 

 ん?80年前聖女キヌが異世界召喚されたということはさらにその40年前。…1945年ってこと?!


 丁度ポツダム宣言を受諾したり広島に原爆投下された年じゃん!!


 …日本が一番辛い時期に聖女召喚された人達、か。


 サダオさんのお婆さんのキヌさんや、憑依者の方のキヌさんは日本でどういう人生を送った人だったのだろうか。



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