【85】ヨルムさんの帰還と竜族のお祝い飯。
彩音ちゃんが日本に帰ってきた次の日、私はヨルムさんを病院まで迎えに行った。
「竜崎さん、退院おめでとうございます。あと、血液のご提供ありがとうございます。」
そう言って黒川先生も見送ってくれる。ん?血液?
疑問に思っていると、
「黒川さんの血液、血小板の他に皮膚などを再生させる地球にはない謎の物質がいっぱい入ってたんですよ!!!実際、驚く程のスピードで術後の傷がふさがりまして。そして、それをすこーしだけ採血させて頂きまして…。」
そう言って、目をキラキラさせている。
えー、なんか凄いな。
「細胞の回復スピードが著しいんです!成分がわかれば色んな病気の治療にも役立ちそうで!本当、龍人の方を解剖する機会があれば是非ご連絡下さい!」
あ…、解剖って…。興奮する先生をその場に残し、私達は病院を後にした。
帰り道に例の絶品プリンのお店に寄る。
「凄い!!全部美味しそうだ!!よーし沢山買うぞっ!!!」
そう言ってヨルムさんはプレーン、チョコ、イチゴ、抹茶、キャラメルなど全種類を家族分買ってホクホク顔である。
「さて、じゃあヨルムさん。家族がいる方の家に帰りましょうか。」
そう言うと、ヨルムさんは嬉しそうに頷く。
車で家に帰る途中色んな話をした。サダオさんやその家族にも会いたいって言っていた。そうだよね。サダオさんのお母さんは叔父さんの娘だから従姉妹ってことか。
結構近い親戚だな。確かムーンヴァレー公爵家で自分の家族について話してたけど桜さんって名前だった気がする。
私達は家に着いてすぐにヨルムさんのご実家のある島に転移した。
どうやらセキュリティが働いていてお城の中には転移出来ないらしい。
魔法陣に乗って、すぐにお城の中に行く。
執事っぽい人が慌ててヨルムさんの家族に帰還を知らせに行く。
「…坊ちゃま!!!よう戻られました。ではご病気は…!」
すると、ヨルムさんがニヤッと笑う。
「うん。無事完治したよ。」
そう言うと、ワアアア!!!っと歓声が上がる。
興奮して炎を吐いて花火みたいなものを吹き抜けに打ち上げている竜人までいる。
おおお!綺麗…じゃなくて建物の耐熱性は大丈夫なのだろうか。チキンな私はどうしてもそこら辺が気になってしまう。
「ヨルム!」
息を切らして最初に駆け付けたのはお母様のインバさんと、リーヴァちゃんだ。
「母さん!リーヴァ!!僕治ったよ!!!」
そう言うと興奮して何故か3人とも半獣みたいな感じになって火を吐き出した。皆さんどうやらメチャクチャ嬉しい時喜びをちょっとワイルドに表現するらしい…。
…おやおや、そんなにダイナミックに火を吐いてたらプリンの紙袋に引火しちゃいますよ…。
私とこうちゃんはめちゃくちゃ感謝されて駆け付けた族長のお父様やご兄弟に胴上げされそうになったので必死でお断りしておいた。
何故かジャンベのような太鼓でドンコドンコとリズムを取りながら皆踊り出した。皆さんテンションが高い。
そして、お昼ご飯には庭園でグルングルンと豚を炙ってくれた。
めでたい時に食べるご馳走らしい。
せっかくだしお昼ご飯もまだだったので豚肉を頂いてみた。うん、ジューシィで美味しい。
豚肉の近くの鉄板でシェフがなんとタイ米っぽい細長い米だが炙った豚肉と青物野菜を一緒に炒めている。
これは、焼豚炒飯ではないか!!絶対美味しいやつ。シェフの人はパインをくり抜いた器によそって目玉焼きをのせてくれた。
結構美味しかったのでこうちゃんと二人で沢山食べた。
うん、アレだな。竜族の人は嬉しすぎるとパリピになるんだな…。喜ぶみなさんを微笑ましい気持ちで見る。
とりあえず魔王問題はこれで一件落着である。
◇◇
ふぅー。食べた食べた。
お土産にドラゴンフルーツやパイナップルまで貰ってしまった。
こうちゃんと『ニャンパトロール』を見てオヤツでも食べようとテレビを点けたら、神様からメールが返ってきていた。
『Re: お問い合わせにつきまして』
『立花様
先日は美味しいすき焼きをありがとうございました。お問い合わせ頂いた件についてご回答申し上げます。
狭間は誰でも通ることが出来るのか、というご質問ですが、答えはNOです。
白魔法が使える者とその人に仲間と認定されて、且つ白魔法を持つ者と一緒にしか通ることができません。
何十年か前に狭間から謎の人物が出てきたとのことですが、その人物は一人で来たなら白属性の魔力を持っていたかと思われます。
管理者より』
…え、白属性の人とその仲間しか通れないの?!
私は頭の中に白属性の人は誰がいたか思い浮かべる。
まずは、私、彩音ちゃん、キヌさん本人や、サダオさん含む山野家の人達。
(そして、その他にあり得るとしたら…。憑依者の方のキヌさんか、クリスピア三世の娘さん…じゃない?!)
だとしたら、実際に会った人に話を聞くに限る。
私は『チャリの練習⭐︎』というサダオさんとレオナさんと三人のlimeグループにメッセージを打った。
『レオナさん、サダオさん。
狭間を通る為の条件を神様に確認したら、白属性の人か、その人の仲間(しかも白属性の人と同時に)しか通れないらしくて。
もしかしたら、昔サダオさんを襲ったというローブの人、憑依者の方のキヌさんの娘さんじゃないですか?
一度、当時その人物に居合わせたというサダオさん、桜さんからお話を聞きたいです。』




