【83】報酬と願い事
無事、原始時代から戻り私は公爵邸でムーンヴァレー家の人達と彩音ちゃん、ライゼンさんと対峙していた。
ライゼンさんは何やら用事で暫くムーンヴァレー家に滞在するらしい。
「まずはこの度魔王との和解、本当に感謝している。こちらは報奨金だ。納めて欲しい。」
そう言われて白金貨を1000枚ドン!と机の上に置かれた。
いっ、いっせんまいー?!!!!一億円じゃないですか!!ど、どこの宝くじ当選者ですか!!!
「え、え、え、こんなに頂けませんよ!!」
私は動揺し過ぎてブルブル震えてしまった。
ちなみに彩音ちゃんは自分はついて行っただけだから!と断ったけれど1000万円分押しつけられたそうだ…。
「いや。これでも少ないくらいだ。
何せ魔王の脅威が去り、魔瘴結石という新たな病気を発見したのだからな。それに、この報酬は我が領だけではなく、ムーンヴァレー公爵家、バルガン辺境伯家、ノーリッジ公爵家、そしてカーネル王国と合同で出した。」
そう言ってケネスさんは譲らない。
だけどチキンな私は冷や汗がダラダラだ。
もし一億円も貰ったら。
脳裏には祥志が退職してしまって、家でオナラをしてポテチを食べてダラダラ何もしない姿。こうちゃんが高校生くらいになって学校をサボって焼肉食べ放題してる姿が思い浮かんでしまう。
そして、大した仲も良くないのに急におフランス料理の高いランチに誘ってくる幼稚園のママ友に奢らされて…。(※まだこうちゃんが2歳なので出来てもいないけど。)
そして、タワマンママに『あらぁー、栄子さんの所は二階建てなの?私は70階に住んでるんざますー!!!』とマウントを取られる未来…それが見える気がする…。
「せ、せめて半分にしてください!!あとは…、そっそうだ!!!ビニールハウスを開発したり医療の発展に使ったり観光に使ったり!!!ムーンヴァレー王国の公共事業に使うのはどうでしょうか!!そうだ!それがいいです!」
と一気にまくしたてる。
すると、シリウス君が感無量の顔をして
「栄子さん…!!!」と瞳をウルウルさせている。
「いや、しかし…。」ケネスさんは悩ましげな顔をしている。
「じゃあ一回頂いて!寄付します!国に!それならいいですよね?!」
そう言うと、ケネスさんは目を見開く。
「な、なんということだ。こんなに立派な志を持ってくれているなんて…。」
そう言って感動している。ライゼンさんは、
「栄子殿偉いなぁ。俺なら取り敢えず豪遊するけどな!ハッハッハ!!!アルバートにもまあこの件は伝えとくわ。」
と言って笑っていた。
あ、ああ、よかった。。半分でも十分多いけど。このお金はこうちゃんの学費と老後の備えにしよう…。
そして、私はこの前limeでケネスさんにまだ伝えてなかったことが二つあることを思い出した。
「そうだ!ケネス様。あの、神様達が来てクリスピア三世と聖女キヌの娘を探して助けて欲しいと言われた話をさせて頂きましたよね?」
「ああ、聞いた。我が家に石を投げ入れた可能性が高いと言うことも。」
それから私はレオナさんに聞いた話を皆さんにすると、段々皆さんの顔が曇っていく。
「確かにそれは気の毒だが過ぎてしまった時間はどうしようもないからな。積み重ねた人生はもう取り戻せない。」
そう言ってケネスさんが複雑そうな顔をした。
時間か…。確かになー。もうおばあちゃんだもんな。人生巻き戻したり昔に戻ったりなんて出来ないし…。
ん????
私は思わずこうちゃんをガン見する。こうちゃんは出された紅茶に手を突っ込んで『混ぜ混ぜー♪』と言いながらスプーンで引っ掻き回して遊んでいる。
ああ、皆スルーしてくれててありがたい…じゃなくて!!!
「ケネスさん。あのー、ムーンヴァレー家の令嬢とクリスピア三世が結婚したという日はいつかわかりますか?」
私がそう聞くと、ケネスさんは豆鉄砲を喰らったような顔をした。
「ああ、当時の新聞を見ればわかると思うが。図書館あたりには恐らくあるだろう。我が家の使用人に調べて来てもらうことは出来るが。」
「確かその翌日にキヌさんと、『その子』が来たってレオナさんがミューラ伯爵に聞いたらしいんです。このお屋敷に!」
そう言うと、ケネスさんは目を見開く。
「なるほど!その日に行ってみたらどんな顔か娘の顔が見れるというのだな。」
「ええ!ちょっと私こうちゃんと日にちが分かり次第先ずは様子を見に行ってきます。あと、それとですね。神様が来た時に実はお土産を貰ったんです。」
そう、これが言いたかったのだ。
「願いを叶える宝珠で、3つ願い事が出来るらしいんですけど。」
「なん…だと?本当に実在しているのか?」
そう言われて私はドヤ顔でアイテムボックスから『願いを叶える宝珠』を取り出す。
すると、ダイニングが虹色の眩い光に包まれる。
「これは…!!」
「なんて神々しいの…!!」
皆宝珠に目を奪われて呆然とする。
「それでですね。
願い事の1つは、関係者以外の日本の人達の『彩音ちゃんが行方不明になった』っていう記憶を改竄する、でもいいですか?」
そう言うと皆が息を呑む。
彩音ちゃんの声が震える。
「栄子さん…!!!それって。」
「うん。今度こそ彩音ちゃん、元の世界に帰れるよ!!日本に一緒に帰ろう。」
そう言うと泣きながら彩音ちゃんが抱きついてきた。
「…ありがとうございます…!!!!!」
もちろん、皆さんは快諾してくれた。




