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【79】ヨルムさん、初めてのMRI〜病院後の昼飲み焼き鳥


 一樹君から連絡を受けて、私達家族とヨルムさんは例の先輩の病院に来ていた。

 

 今日の朝、慌ててヨルムさんの身分証を適正化して、保険証をこうちゃんに作ってもらった。

 ちなみに、『竜崎ヨルム』という名前になっていた…。


「あ!栄子さん。こちらが昨日お話しした先輩です。」

一樹君の隣にはすごく頭の良さそうで、優しそうなメガネをかけた先生が立っている。


「こんにちは。担当医になる予定の黒川誠一です。君が宮野君の友人の石が出来たという患者さんか。…よし、それじゃあ、今日は休診日だから裏口から入って。」


 おおお、病院の裏口なんて初めて入るよ。ワクワクしながら入ると、従業員向けのトイレや休憩できる部屋や自販機等があり雑多な感じである。


 歩きながら会話する。

「えーっと痛みとかはないんだよね?」

と先生が問うと、ヨルムさんが頷く。

「成る程。とりあえずMRI撮ろうか。宮野君、手伝って。えーっと竜崎さんはこの検査着に着替えてね。ご友人の立花さんはちょっと出ててねー。」


 そう言われて部屋の外は出て、持ってきたジュースを飲みながら3人でアマンゾで『虎えもん』を見ながら待つこと1時間弱。


「立花さん、終わりました!」

と呼びに来た一樹君と一緒に話を聞きに行く。


「胆石症だねー。でも、手術で石を取りさえすれば根治出来るから。腹腔鏡下胆嚢摘出術でやります。でも、流石に入院してもらうから、明日また来て貰える?今日は看護師さんいないから。」


と言って黒川先生は笑った。


「先輩、休診日に本当にありがとうございます。」

一樹君がお礼を言うと、何やら意味ありげな顔をする。

「いいよ、別に。卒業後は宜しく頼むよ。それに、僕も異世界の人を診る事なんてほぼ無いと思うから楽しかったわ。」


 え!?先生知ってたの?…まあ、そりゃそうか。普通の人間だと思って調べたら身体の構造が全然違ったらビックリするもんね。なるほど、それで騒ぎにならないように万が一を考えて休診日に診てくれたのか。


「…ちなみに僕の体って結構ニホンの人と違いましたか?」

そうヨルムさんが聞くと、

「んー…ほぼ、同じだね。ただ、心臓がちょっと違ったかな。何か未知のモノを捉える器官があったよ。いやー、実に面白かった!」

そう言って目をキラキラさせている。


 おおお。なんか、先生本人も楽しんでくれて良かったよ。それより、心臓のそれって恐らく神様がテレビで説明してくれた魔力を捉える弁のことなんだろうな。いやー、人間の進化って面白いな。


 一樹君は卒業後この病院に就職して週2で働くらしい。ん?週2?


「他の日は、僕、異世界で開業しようと思って。でも、日本でも流石に勤務は経験しておきたくて。


 功績をあげて、ニーナちゃんとのことを公爵様に許して貰おうと思ってます。」


おおおお?!なんと!!そんな話になってたの?!!!凄い。

 

「ふふふ。実は、宮野君が日本で勤務してる二日間は僕が異世界で交代で勤務しようと思ってて。僕も行ってみたいんだよね、異世界。」


そう言って黒川先生はニヤッと笑った。それを聞いて、一樹君は慌てて、


「あ、勿論僕、就職したら家は異世界との間になってる土地を選ぼうと思ってるので!!先輩にはそこを通ってもらうから立花さんのお手は煩わせないです!」


と言った。


 おお、でもそうなると、異世界の医療のレベルもグッと上がりそうだね。


 そして、外科手術が出来るようになれば魔王が発生しなくなるってことか。それってもしかしなくても物凄いことでは。


「とりあえず、竜崎さんは明日から入院ね!色々買い出しとかしておいてね。」


と言われて必要なものリストを渡された。

 洗面道具や歯ブラシ、パジャマやお金、下着や着替え等結構揃えなきゃいけないものが多い。

 スマホも持っていた方がいいだろうし、今日はこれから忙しいな。

 

 一樹君と黒川先生とは一旦解散して、私達一家とヨルムさんはお昼ご飯を食べに行くことにした。


 祥志が近くのお店をスマホで調べてくれている。

「ヨルムさん、お昼ご飯何がいいですか?」

「僕、お酒も飲めるところがいいなぁ。」

そう言われたので、昼飲み出来る焼き鳥屋にやって来た。


 店内はお年寄りのプチ飲み会や意外にマダム達が結構入っていた。


 私と祥志はノンアルコールビールを頼み、こうちゃんはオレンジジュース、ヨルムさんは生ビールを頼んで串を何種類か頼んでとりあえず乾杯した。


「カンパーイ!」

あー、美味しいー。ノンアルだけど。

 まずはねぎまと豚串を食べる。あー、何で炭で焼いたお肉ってこんなに美味しいんだろう。


 こうちゃんも美味しそうに鳥串を食べている。


「それにしても良かったですね。黒川先生の話だと入院も2〜3日で済みそうですし。」


「うん。自分でも実感がまだ湧かないよ。もう死ぬのを覚悟してたのにあと三日後にはあっさり石が取れちゃうなんて。」


そう言ってヨルムさんは嬉しそうに笑った。

「本当ですよね。石が取れたら、ヨルムさん何かしたい事とかあるんですか?」


祥志が聞くと何かを考え込んでからこう言った。


「うーん、そうだな。僕、こんなに大病をしたからこそ、今度は助ける側になりたくて。カズキさんと黒川さんがもし本当に僕らの世界に病院を作ったら弟子入り出来たらいいなと思ってる。」


「それは素晴らしいですね。とりあえず退院したら、竜族の島に一旦戻る感じですか?」

そう私が聞くと頷いた。


「うん。そうだね。あ、もし君達が何か困ってる事とかあったら言ってね。僕達で出来る事ならなんでも協力する。」


それは有難い。


 私達は焼き鳥の後、鳥ラーメンやサラダ、だし巻き玉子、お刺身などを堪能した。


 ヨルムさんにスマホを作り、入院に必要なものを買い物して、帰って来たのは夕方だった。


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