【76】ヨルムさんと一緒にランチ〜蟹のトマトクリームパスタ
「さて!じゃあ私は昼食の準備をします。ヨルムさん、好きな食べ物は何ですか?」
私が聞くと嬉しそうに答える。
「僕、甲殻類とお酒が好きなんだ。伊勢海老とか蟹とか海老とか。」
おおおお、これはいいタイミングで蟹があって良かった。
「…あ、ちなみにヨルムさん成人はされてますよね?」
祥志がそう聞くと、少し固まったあとヨルムさんは何故か笑い出した。
「…ぷっ。ハハハ!!!ちなみに僕、何歳に見えてるの?」
そう聞かれたので、みんなが口々に答える。
「20歳くらいに見えます。」
と彩音ちゃんが言うと、ライゼンさんが負けじと
「18歳くらいじゃねぇか?」
と言った。祥志が
「うーん、ラミダスさんが叔父さんってことは種族も違うし、60歳くらいだったりして。」
と言うと、ヨルムさんはニヤっと笑った。
「ふふ、正解は216歳だ。僕達は寿命が長いんだよ。」
えっ!!思ってた10倍の年齢だった…。
皆さんのお喋りをBGMに私はランチを作る。
今日は蟹のトマトクリームパスタ、サラダ、ポトフである。大人にはワイン、未成年にはりんごジュースを用意した。
ちなみに祥志に私が料理をしている間、神様に『魔瘴結石の治療法を教えて欲しい』とメールしてもらった。
文字通り、困った時の神頼みである。
ついでにケネスさんにもlimeで経過を報告してもらった。やっぱりこっちから連絡を取れるのは便利だなぁ。
バターでニンニクを炒めて、ホールトマトとコンソメを入れて、茹でた平麺生パスタとほぐした蟹をたっぷりと加える。隠し味に蟹味噌も入れる。
最後に生クリームを加えて混ぜて、黒胡椒を振ったら完成だ。
ポトフは細かく千切りしたキャベツとローリエ、ウインナーとオリーブオイル、コンソメで作ったシンプルなものだ。キャベツが細かいと味がしみしみで美味しいんだよね。
サラダはこうちゃんも好きなオレンジとベビーリーフとミニトマトの入ったサラダだ。ドレッシングには蜂蜜とレモンとオリーブオイルと塩が入っている。上にスライスアーモンドものせてみた。
おつまみにちょっといいチーズも出しちゃいました。
乾杯の音頭は祥志に任せた。
「それではヨルムさんの病気が早く治るのを祈って!!!カンパーーーーイ!」
そのセリフを合図に皆が嬉しそうにグラスを合わせた。
「!!!美味しい…。クリーム系のパスタとワインって凄く合うね。」
そう言ってヨルムさんが美味しそうにパスタと一緒にワインを飲んでいる。
「ヨルムさん、このチーズと赤ワインも合うんで良かったら食べて下さい!」
祥志がちょっと高かったチーズをクラッカーにのせてヨルムさんに勧めると、感動したようにワインをグビリと飲んだ。
「本当だ…!!チーズが濃厚だからスッキリとワインが飲めるね!!」
「俺は普段はエール派なんだがよ。ワインもこうやってよく合うつまみと一緒に飲むとうめぇな。」
ライゼンさんも気に入ってくれたみたいだ。
「栄子さん!この蟹めちゃくちゃ美味しいですっ!!!贅沢ですねっ!!」
そう言って彩音ちゃんも悶絶している。
こんなに蟹を使ったパスタはなかなか食べれまい。本当に食べきれない程あるからどんどんお食べ。
こうちゃんも
「おいちいー!!!こうちゃんかに、だいすきー。」
と言って喜んでいる。
その様子をヨルムさんが優しそうな笑顔で見ている。
「僕の妹もさ、あ、リーヴァって言うんだけどね。竜人族で20歳だから見た目コージ君よりちょっと大きいかなくらいな感じなんだけど。子供がいると全然その場の雰囲気が変わるよね。
可愛いなぁ。抱っこしてもいい?」
そう言われたので、こうちゃんを渡すと慣れた手付きで抱っこしてくれた。
こうちゃんは高い高いをしてもらって
「もっと!!!もっと!!!」
と言いながらヨルムさんにしがみ付いている。
おお、どうやらヨルムさんは子供好きなようだ。
「…リーヴァも元気かな。会いたいな。」
とポツリとヨルムさんが漏らしたので、
「ご家族はどちらに住まれてるんですか?」
と聞いてみた。
すると、なんとムーンヴァレー領のルーナ村近くの森の上空だと言うではないか。
「…そこなら!私達つい最近まで森に住んでたので転移ですぐ行けますよ!ちょっと食後に行ってきましょうか。」
と言うとめちゃくちゃ喜んでくれた。
ライゼンさんは、
「え!タチバナ家の皆は随分辺鄙なところに住んでたんだな…。」
と言って驚いてた。
うん、私たちも望んでそこに転移した訳じゃないんだけどね…。
早速食べ終わった後家を収納して、みんなで手を繋いで元々家のあった場所に行ってみる事にした。
「はーい、それじゃ、行きますよー!!!」
ブウウウウウン!!
目を開けると、見覚えのある森の中にいた。
お、おおおおお。なんだか家がないと変な感じだな。本当にただの森である。
懐かしいな。ここら辺に銀色の熊の死体を転がしておいた気がする。
キョロキョロしていたらヨルムさんに声をかけられた。
「ここら辺ならもう僕の庭のようなものだから一緒に島まで連れてってあげるよ。特別に、君達を背中に乗せてあげる。」
するとヨルムさんがパアッと白く光ったかと思うと、どんどん大きくなった。
「?!!!!」
唖然とする私たちの前に現れたのは、美しい灰色の大きなドラゴンだった。




