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1.17 血溜まりの激情

鉄仮面は視線をこちらへと移す。


「ん…?んん…??おぉー!!知っている顔が居るな!セラスじゃないか!」


鉄仮面はアタッシュの前へと擦り寄った、この中にこの男を知っている人間が2人居る。



アタッシュと俺だ



声を聞くまでは分からなかった、だが…この男を…忘れるわけが無い…



戦友を殺した男なのだから。






『セラス・マーティン』と呼ばれるその女性はイカロス結成以前はアグニカ軍に在籍していた。その卓越した戦闘技術は軍内部にも広く認知されていた。


市街地、野戦、ゲリラに至るまで多くの状況に対応できる豊富な経験値があった。


ある時『ハービンジャー作戦』に参加したセラスはその身が自身だけのもので無いことを知った。


作戦の途中で悪阻や体調不良が続く、軍医が調べると妊娠が発覚した。


その事が理由で最前線から後方支援へ異動を余儀なくされ、後方支援とは名ばかりの戦線離脱だった。


当時作戦の指揮をとっていたハヤトも上からの命令で「他の兵士達の精神的支柱であるセラスを今失うのは惜しい」との判断から作戦の離脱を推し進められた。


戦いの中にしか居場所の無いセレスとそれを理解しているハヤトは何とか出来ないかと躍起になったがそれも無駄に終わる。




そんな時に事件が起きた。




俺の戦友であり、アタッシュの婚約者のロッキーが殺されたと言う知らせが入った。


決して弱い男ではなかった。アタッシュに次ぐ実力のあるロッキーは武力という意味ではやや劣るが非常に頭のキレる男だった。


策略と状況、そして環境を使うのに長けた優秀な兵士であった。


敵勢力が送電施設の攻撃を目論む情報が降りてきた、ロッキー達にその施設の防衛任務を与え送り出す。


無事鎮圧は完了したが残党が数人逃げたと聞かされる。存在や痕跡を隠す作戦であったためロッキーが追撃に出たと聞かされた。


慌てて通信を送るが返答は無い。


そこで俺は間違いを犯した、現場の近くに居る隊員達に連絡しロッキーを連れ戻すチームを作成、上には作戦中止の進言と新たな代案を説明し大急ぎで作戦室へと戻った。


「状況に変化は?」


「…それが」


口ごもる通信兵から通信機を奪い取る。


聞こえたのは誰かの話声であった、妙に胡散臭く聞こえるその言い回し、声色はまるで猛毒のようで溶けて消えた。


「こいつか?あぁ…それなりに強かったよ、だが君はもっと強い。どうだ?俺の側近にならないか?」


「ここまでしておいて仲間になるとでも…?」


1人の男は語りかける、だが。語りかけた相手はセラスであった


「…ッ!?」


作戦室で言葉にならない音が鳴る、“なぜここにセラスが!?“


大至急脱出用のヘリを現場に手配させる。


考えうる最悪の択、その全てが重なる


____________________


血の池の上に、セラスは立っていた、暗くチカチカと切れかけの電球が地下室を照らす、そこには最愛の人の亡骸が横たわっていた、辺りには敵勢力に属する兵士が十数人と倒れていて、一目見ただけでわかる。


もう動くことは無いだろうと。


激戦の末、力尽きたのだろう。後ろにはロッキーを連れ戻すため急造のチームの隊員達が立っていた。


その隊員達は私を見て声をかけるも言いよどむのがわかった。


かなりの重症を負っていたから?それとも隊員達をかばい下腹部に銃創を負ったから?


それももう、どうでもいい…


至って思考はクリアだが、自身の中にふつふつと怒りの感情が湧き上がるのがわかる。


ロッキーが自分のために無茶をしたこと?変な優しさで前線を外されたこと?


ロッキーを殺した男は不敵に笑う、なによりそれが無性にムカついた。

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