1.1 見つけた
ガチャン ガチャン ガチャン
ドアノブを何度もひねるよう音が響く、スカスカの廊下には音を吸収するようなものが無く、ただ無機質にひねる音だけが反響、だがその扉は開かない。
ドンドンドン
ひねってもビクともしない扉を今度は何度も何度も叩き続ける。
「開けてくれ…!開けてくれ…!頼む…!!」
ひたり ひたり
男は気配を感じるとドアを叩くのを止め、気配のした方へゆっくりと視線を移す、しかし、そこには誰も居ない。ただ、暗がりの廊下の中にぼんやりと灯る非常灯だけが廊下の先をを照らしていた。
男は何もいない事を確認すると再び扉を叩き続ける。
ドンドンドン ドンドンドン
ひたり ひたり ひたり
やはり…何か居る…!?
バッと先程確認した廊下へまた視線を移す。
何もいない… ?
非常灯の灯りだけでは廊下の奥まではハッキリと見えない程に暗く、静寂が恐怖を煽り、男の心拍数が上がっていくことを感じる。
バクバクと心臓が悲鳴をあげ、ピークに達するその時、男のズボンのポケットに入っていたスマホがブルブルと震えた。
待っていたかのようにスマホを取り出し、電話の応答を押した。
「約束が違う!扉を開けてくれ!」
開口一番、男は興奮したような口振りで通話相手が話すのを牽制する。
「…」
「誰かに追われているんだ!助けてくれ!今までずっと俺は協力してきたじゃないか!!」
「…」
興奮気味に話す男は視線を廊下から外すことが出来なかった、釘付けにされていたから。
「協力…?先に裏切ったのはお前だろ、チェスカ」
電話越しの声が意識に入らないほどに釘付けにされるチェスカ。廊下に月明かりが差し込み廊下を照らす、微弱な光ながらも、人の目が光を増幅するには十分な明度だった。
そう、廊下には何もいなかったのだ、そう廊下の床には。
天井に張り付いた生物と目が合う、黒ずくめの装備に特徴的な6つの目を持つガスマスクをした生物と。月明かりに照らされて、その6つの目がキラリと反射し天井に居ることを決定づけた。
目が合った瞬間、ガスマスクの男はものすごいスピードでチェスカの元へ飛び込んでくる、獲物を見つけたとばかりに。
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血の滴るマチェットを握った6つ目は、肉塊の中からスマホを拾い上げ耳へと運ぶ、ツーツーと鳴るスマホを投げ捨て、闇夜に消えていくのだった。