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96・王子少女は逃げ出さない!7

~フレーダside~


ここは『雪』の地下大空洞


石灰岩の壁が連なり、鍾乳石が天井から垂れ下がっている

入口から、滝のように落ちてくる水の音が、洞窟内に響き渡る

内部は広大で、中央に川が流れている

その流れは速く、間違えて落ちてしまうと、たちまち溺れてしまうだろう

入ってくる光が水面に反射し、洞窟内を光のカーテンで包んでいる


川に沿う形で、巨大な石造りの水車小屋のようなものが、いくつも建てられている

これら一つ一つが発電を行い、ひときわ大きな石造りの砦に注がれる

その砦の、外を見渡せる見張り部屋に、俺と親父、ウインドフォールと数人の兵士がいる


「ふふん、奇襲を生き残ったか、一筋縄ではいかぬな」

ウインドフォールが親父に報告をする

やつは『風』の諜報技術を覚えた、貴重な『雪』のスパイだ


「やはり一点集中だ、こちらも分散されず、一気に固まって突撃するのだ」

親父が兵士たちにそう注文する

…それができれば苦労はしない

なんだかんだで分散させられ、各個撃破されているのだ


「おい、親父」

「なんだ?」

「俺のスキルをかけてんだぞ、俺に命令させろよ」

俺ならもうちょいマシな命令が出せる

『花』では罠を仕掛けられて痛い目を見たからな

その出来事を伝えるだけでも…


「何を言う、我の配下だぞ、お前の配下ではない」

「ちっ、偉そうに喋りやがって、何様のつもりだ」

指揮権を譲るつもりはないらしい

洞窟内には湿気が漂い、微かな風が流れている

その湿気が、俺の身体に染みこんでくる


「…ぐっ!」

「やはり痛みますか、フレーダ様」

ウインドフォールが俺の心配をする

俺はチューブを左腕に巻き付けた形で、椅子に座っている

このチューブの先には『魔力充電器』があり、その先は水車小屋たちにつながっている

水車から得られた雷魔力を『魔力充電器』で、俺に注ぎ込み

俺の身体でろ過された魔力で、通常ではありえない大規模ユニークスキルを使う

これが俺たちの、中央攻略作戦だった


「ああ、しかし耐えれなくはない」

普通に使うと激痛が走る、と言われるこの『魔力充電器』

しかし、その激痛度合いは、属性によって異なる

俺の体内魔力は雷属性、自然エネルギーから作り出した魔力も雷属性

属性の一致は、『魔力充電器』による急速補充のダメージを、最小限度にしてくれる

『風』ではできない人体実験を繰り返し、気づいた事実だ

…それでも、長時間使い続けると、気を失うほど痛くなるので

ほどほどにしないといけない


「一度押し切ってしまえば、後は何とでもなる

 そこまで耐えて見せる…!」

頭を取って統率がとれなくなれば、こっちの独壇場だ

一対一なら…いや、三対一でも、『テンカウント』兵士が負けることは無い


「それより、救い出したはずのコガラシが、王子の元へ逃げたというのは本当か?」

「はい、残念ながら…やはりやつも恵まれた者

 フレーダ様の真の友にはなれなかったようです」

「…残念だ」

力のある俺たちが天下を取る、実力主義の世の中に変える

そう約束したんだがな…


「やはり『風』などあてにはならんな…騙しやすいという利点だけだ」

…その親父の言い方に腹が立つ

見てろよ…いずれお前も蹴落としてやる……

力を持たない親父も、害悪そのもの…!


そうやって、俺が親父の追放を心に誓っていると、唐突に…



……頭の中に、声が響いた



(『はーっはっはっはっはっ!』)

(「?!」)

な、何だこの声は?!

あの憎たらしい王子の高笑いが聞こえる


周りを見回してみると、しかしながら誰も声に反応する様子はない

どうやら俺だけに聞こえているらしい


(『お久しぶりだね!ボクだよ!』)

ボクだよ!じゃねえ!

相変わらずいけ好かないヤローだ


(『…おや、ちょっと声が変だね』)

(「場所が悪いのかもね、まあ、通じてるならいいんだけれど」)

(「何の話だ?!そして、どういう事だこれは?!」)

王子たちに向かって抗議の声を上げようとしたら、肉声が出ずに

代わりに頭の中に響く声に変換された


(「あたしのユニークスキルで、遠くから相互会話できるようにしているのよ」)

むむ…この声、王子の補佐官だよな…

そんな隠し技をもってやがったのか

俺のユニーク程ではないが、なかなかいいスキル……


(「…あ、そうか!『花』襲撃のとき、一瞬大音量で眩暈をしたのは、お前の仕業か!」)

(「そういうこと」)

こいつ…応用力が高いスキルを使いこなしてるな…

もしかして、会話をして居場所を聞き出そうとしているのか…?

そうはいかねえぞ…!


(『今日はキミにひとつ提案をしたいんだ』)

(「提案…?」)

和解でもしようってのか?

しかしもう遅い

今さら何を言われたところで、攻撃の手を止めることは……




(『降伏したまえ、キミに勝ち目はない』)




(「……………はあ?!」)

王子の突然の降伏勧告、全く意味が解らない

どうしてこの状況でそんな事が言える…?


(「何を言ってる!俺たちが押してるんだぞ、お前らは城に閉じこもったままだろうが!」)

(「そう思うかい?」)

自信満々の王子の声

…何だ?どういうつもりだ?

何か逆転の秘策でもあるのか…?!

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