95・王子少女は逃げ出さない!6
ミソラさんは元気を取り戻し、私と一緒に王の間へと向かう
ばんっ、と勢いよく扉を開けて
「ごめん、らしくなく落ち込んでたわ!」
扉を開けた勢いのまま、王の間の皆に反省と、そして宣言をする
「あたしは、補佐官ミソラ!
民を、王子を輝かせる闇の軍師!」
ミソラさんが片手を水平に上げてポーズを決める
その顔は、いつもよりドヤってる気がする
そんな宣言を聞いて、ぽかんとするアワユキさん、アジサイちゃん、カグヤちゃんの三人
…他の領主たちや執事さんは、出払っているようだ
「むむ、怪しいですわ…いきなり元気すぎる気がする…
王子様に慰めてもらった(比喩表現)んですの?!」
『カッコひゆひょうげん、って口で言ってる?!』
アワユキさんが謎の表現で詰め寄ってくる
「な、何の事だかわからないわぁ~?」
赤くなってそっぽを向くミソラさん
いや、比喩表現されるような事はなかったですよね?!
「ええい、つまりあなたたちスケベしたんですの?!」
「正面突破なのですよ?!」
『してないしてない!ちょっと落ち着いてもらっただけだよ』
「…ホントですの~?さっきからずっと、王子にベタベタしてますけれど」
『…はっ?!』
感覚がマヒしていたけれど、ポーズを決めたとき以外
ずっとミソラさんが私の腕を掴んでいた
メイドさんに襲われすぎて、これくらい普通だと思ってた
…お、恐ろしい…
ミソラさんはそれを指摘されると、反論はせず
「……えへへっ♪」
笑顔で私にぴったりとひっついた
「くうっ!式には呼んでくださいましね!」
『何もないって言ってるのに?!』
まあ、スケベしたと思われるくらい仲良くなれたのは、いい事だけれども
「よし!よていどおりわたしはおめかけさんで!」
「じゃ、じゃあわたしも…三号さんくらいでいいのですよ」
私たちをさらに幼女二人が抱きついて挟み込む
『人の話聞かないねキミたち?!』
「むうっ…正直わたくしも混ざりたいですわ…!
でも、大人になると理性が効いてしまいますわ…大人になるって悲しいですわ」
『…大人のままのキミでいて、お願いだから』
アジサイちゃんは理性が効いてもおかしくない年齢だけど
…肉体は精神に作用する、というやつだろうか
そんな感じで、ちょっとベタベタされていたところ…
「はは、じゃれあうのはそれくらいにしておけ」
『領主くんたち!』
汚れた鎧をまとった『花』『星』の領主、そして執事さんが王の間に戻ってくる
「よく無事で戻られたのです」
アジサイちゃんが、彼らの切り傷に手を当て、回復魔法を使う
さすが聖女と言うべきか、傷はみるみるうちにふさがっていく
「突然の奇襲でしたが、無事対処できました」
「第一波の奴らと比べて、元がそこまで強くないのでしょうな
我々なら一対一を避ければなんとかなりますぞ」
『すまない、任せっぱなしにしてしまって』
私は、戦力としては数えるべくもない
裏かが逆転の手段を練っていくしかない
「王子が戻って、ついはしゃぎすぎてしまったわ…ごめんなさい」
「戦いってのは、精神を病むもんだ
それぐらいでメンタルが保てるなら、むしろどんどんやってくれ」
「許可が出ましたわよ?!」
『いや、これ大目に見てくれてるだけだからね?!』
慌てる私を見て、くすりと笑う領主たちと執事さん
…どうやら精神安定剤としての役目はあるようだ
「…いよいよ、反撃作戦を開始ですな」
『ああ』
勝って私たちの国を、平和にする…!
『ミソラくんは連絡役を頼む』
「うん、そこはいつも通りね」
「おねーちゃんはね、ユニークスキルでとおくのひととおはなしできるんだよ」
「十人までだけどね」
「へえ…?」
いまいちピンと来てないご様子の『星』の領主
「現地を調べてるホシヅキさんに連絡がとれるわ」
ミソラさんは、お披露目もかねて、ホシヅキさんとこの場にいる皆さんを
『グループチャット』に呼び寄せ、話しかける
(おーい!ホシヅキちゃん、聞こえるかしら?)
(この頭に響く声は、ミソラさんやな!)
(地下空洞、当たりのようやで!ロープで降りていってる白いフードが見えるわ!)
(この声、速足メイドか?)
(なんか変な言い方やな?!間違っとらんけども!)
『グループチャット』初体験のみなさんは、この響く声を聞いて、相当に驚く
(…なるほど、これは便利だ)
(移動のコストを大幅に減らせるし、他にも…
ああ、色んな使い方が浮かびますわ!)
特にアワユキさんが関心を示しているのが面白い
単純な戦闘力ではないけれど、色んな事に役立つユニークスキル
絶対チートなんだよね
『今回はそれで、もう一人重要な人物と連絡をとってほしいんだ』
「…重要な人物?」
なんか王子様の演技してると、もったいぶった言い回しをしたくなるんだよね
あんまり良くない傾向だよね…
『フレーダだよ
今、スキルをバリバリに使って、城を襲わせてる彼』
「?!」
『『花』で彼へユニークスキルを使ってただろう?まだ連絡できるんじゃないかと思って』
確か、大声で一瞬怯ませる、みたいな使い方していたと思う
「ど、どういう事だ?今さら和平交渉でもするのか?!」
「いや、さすがにそれは無いかと…」
残念ながら、妥協できるところが無い
「確かにできるけれど…誘導尋問でもするの?」
『それができるならいいだろうけど
そう上手くはいかないんじゃないかな』
「じゃあ、何を……」
ハテナを浮かべるミソラさんたちに、私は答えを話す
『降伏勧告だよ』
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