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94・王子少女は逃げ出さない!5

「本気なのか…?」

『ああ、上手くいけば決定打になりうるはずだ』

次は、『風』の領主親子と、アジサイちゃんに許可を求める

私考えたやり方は、彼ら彼女らのサポートが必須だ

元魔法学校生の店長さんにもたずね、実現可能な案だという事も話した


「…そんな危険を冒してまで、ですか…?」

領主さんには渋い顔をされてしまう

…ここで断られると、ただの絵に描いた餅になってしまう


「そこまでの覚悟がおありなのですか」

アジサイちゃんから覚悟を問われる



『もちろん、できることを全てやる

 少しでも多くの民を救うために』



私は王子様の偽者

だから王族の責務で、こんな事を言っているわけではない

…ただ、そうしたいと思う、それだけで喋っている


「これが王子……国を治め、導くもの……!」

コガラシくんが、そんな私を感心したように見つめる


「なるほど、俺が向いてないというのは…つまりこの覚悟が足りないという事か……!」

「いや、さすがにここまでは求められん」

…王子ではないのに、こんな事を言われてしまって、ちょっと申し訳なく思う

他の資格は全然ないのに…


「王子のおっしゃられるのは、ただつなぎ合わせただけの理論なのです

 現実にどんな不具合が起こるか、わかったものではないのですよ」

アジサイちゃんは冷静に、問題を指摘する


「それでも…やるのですか、王子」

『風』の領主さんに問われる

その声色から、相当迷っているのがわかる

…確かに迷っても仕方ない

相当に危険な行為であり、そしてそれを行うのは自分ではないからだ


「それでもだ」

私ははっきりと、自分の意思を伝える


「わかりました…そこまでおっしゃられるのでしたら」

「…しょうがないのです、協力するのですよ」

「オレも、できる事は手伝おう」

三人の許可は得られた


後は…やっぱり、ミソラさんに話しておかないと…



………

……


ミソラさんの部屋は、アジサイちゃんが診察に来れるよう、ドアが開いていた

こっそり入って、ベッドの横の椅子で、眠っている彼女が起きるのを待つ


「ん…?」

幸いにして、私が座って十数分後に、ミソラさんは目を覚ました


「おはようございます、ミソラさん」

「セッカちゃん…起きるまで、待っててくれたの?!」

勝手にミソラさんの部屋に入るのはどうかとも思ったけど

…ミソラさんも私が起きるまで見守ってたんだし、いいよね?


「はい、みなさんと話し合ってきました…現状を打開する方法について」

「逃げてって、言ったのに…」

悲しそうな顔をするミソラさん

…でも、ここで怯むわけにはいかない


「でも、その結果、いい方法を思いつきました!

 上手くいけば、この戦いも終わらせられるはずです!」

「…そんな方法が?」

「あるんですよ

 そもそも、向こうがああやってきたんですから…」

誰かが聞いてる訳でもないのに、なんとなくミソラさんに耳打ちする

私の逆転の一手を聞いたミソラさんは…興奮するではなく、だんだんと青ざめていく


「…そ、そんな!だめ、だめよ!ぜったい!

 せっかく無事に生き残れたのに、なんで、そんな…」

「……」

…やっぱり、リスクの方を気にしてしまうか…


「もう死んでほしくないの、王子のように…

 王子よりもずっと、心を許したあなたに……」

すっかり弱気になったミソラさんは、私の左手を握って、そう懇願する


「ミソラさん」

私は、握られた左手ごと、ミソラさんの右手を握りかえす


「私のお願い、聞いてもらえますか?」

「え…?」

「…ちょっと先払いになっちゃいますけど、いいですよね?」



<そのかわり…全部解決したら、最後に一つ、私のお願いを聞いてもらえますか?>



「あ…」

そう、城に来たばかりのあの日の、ミソラさんとの約束


「やっぱり私は、みんなを守りたいんです」

今まで、駆け抜けてきた日々を思い出す


「この数か月の間、みなさんと多くの事を乗り越えてきました」

王子の偽物として、だったけれど

偽者だからこそ、本物より障害はきつかったかもしれない

それでも、どうにかやってこれた


「それは、ユニークスキルを持たず、諦めて暮らしていた私に

 人生を変える程の経験を与えてくれました」

ただただ、できる中で一生懸命にやる

単純だけれど、なんて難しい事なんだと思う

でも、それに挑む気持ちを、成功した時の喜びを、教えてもらった

それは…何にも変えられない経験で……


「だから…私をここまで連れてきてくれて、ありがとう」

感謝の気持ちを込めて、彼女を抱きしめる

気が弱っている彼女の身体は、とても小さく感じて…


「私はもう、諦めたくないんです

 私に、みんなを…ミソラさんを、守らせてください」

本当はもうとっくに、私の願いは叶えられていたのだ

でも私は甘党だから

もっと甘いハッピーエンドが見たい

そのために、私が頑張るのを、許してほしい


「う、うっ…

 うあああああああああああああああんっ」

自分の気持ちをこらえきれずに、ミソラさんはぼろぼろと泣き出してしまう


「あ、あた…あたしっ……ずっと、後悔してて…

 あたしが引き込まなきゃ、セッカちゃんはずっと平和に暮らせたのに、って…」

…そっか

ミソラさんは、それをずっと気にしてて

それがここにきて、一気に出てきてしまったんだ


「いいんです、いいんですよ」

「う、うぐっ…うああああああああああああああ……」


胸に抱きよせ、頭を撫でる

彼女が泣き止んで落ち着くまで、ずっと……

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