表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/108

91・王子少女は逃げ出さない!2

「…なあ」

「どうした?」

「やけに強化を受けたやつらの人数が、多い気がするぞ」

ウインドフォールが演説中止に向かったのを見計らって

残りの、オレをフレーダに送り届けるつもりのやつらに尋ねた


「ひょっとしてあいつのスキル、パワーアップしたのか?

 少ない魔力でより多くの兵に強化を施せるように…とか」

「……」

「俺もあいつの強化をもらえるのか?!助けてもらった恩返しがしたい!」

自分ながら、白々しい演技だとは思うが…

普段から付き合いのあったやつらじゃく、若い顔ばかりが並んでいたので

バレないだろうと踏んだ


「はは、まあ落ち着け

 スキルが強化された訳じゃない、足りない魔力を外部から補充しているだけだ」

「そんな事が…?」

「おや?お前のところで開発されたマジックアイテムだと聞いたが…」

「?!」

そこまで言われて、心当たりを思い出した


「あ、あああ…

 まさか…まさかアレを使ってるのか?!」

「そう、『魔力充電器』だ

 ちょっとお前の領地から拝借させてもらった」

「…ばかな!アレを使い続けたら、身体がぶっ壊れるぞ!」

「勝てばいいのだ、勝てばな…!」


人間は、植物や動物の魔力を食事で取り込み

徐々に自分色の魔力に変化させていく性質がある


例えば、ジャガイモは『土』の魔力を帯びているが

体内魔力が『風』の人間が食べると、『土』から『風』へ魔力の変化が行われる

その変化は、普段は非常にゆっくりだ

消化というプロセスを経て、身体に負担の無い範囲で行われる


そうではなく、直接、外部の魔力だけを人間に注ぎ込んだら、どうなるか

これが、『魔力充電器』のコンセプトだ


結論を言うと、魔力の変化・吸収は食事をする時よりも、はるかにすみやかに行われる

自然の魔力を自在に使いこなせるとなれば、人類の未来はかなり明るくなるだろう


…だが、この方法は致命的な欠点がある

身体を作っている組織たちが悲鳴を上げるのだ

体内の魔力圧の急激な上昇により、全身に激痛が走り

そして、それを続けていると身体の組織崩壊が起こり、命すら危ぶまれる


『魔力充電器』は、まだ古代の技術で作られた『雷』の自然魔力を

無理やり人間にねじ込む…ただそれだけのアイテムに留まっている

魔力の急速補充は、今の段階でも確かにできるが、危険が大きすぎる


「…そうか、それほどの覚悟を……」

「わかっただろう、フレーダ様の勝利への意気込みを」

何があいつをそこまで駆り立ててるのか、わからない

だけれど…


「おい!『ウインドフォール』が戻って来るぞ!第一陣は撃退された!」

「なんだと?!…やはり一筋縄ではいかないか……!」

怪我をして、城攻めから戻って来たと思われる『雪』の青年兵

彼が駆け足で近づきつつ、そう言った


(くそ…もう戻ってくるか……!)

本当はこの後、アジトの場所まで聞き出したかったんだが

やつが戻ってきたら脱出の目は無いだろう


俺はやつらの隙をついて、その場を離脱する事にした


………

……


「…で、隠れながら城の近くまで戻って来たところを

 こいつに助けられたって訳だ」

「無茶しよるわ、ほんまに」

まともにやって『テンカウント』つきの兵、複数人に勝てるとは思えない

きっとユニークスキルを駆使して、隠れながらこちらまでやってきたのだろう

ホシヅキさんがそれを見つけられたのも、何か運命を感じる


『なるほど…そのマジックアイテムが、彼のスキルが強くなった秘密なんだね』

「確かに、秘密が解けるのは嬉しいけどよ

 …わかったところでどうしようも無くないか?」

『星』の領主は、ちょっと残念…といった感じだ


『…いや、そうでもないね』

「さすが王子、飲み込みが早い」

ミソラさんと長くいたおかげで、こういう思考もちょっと磨かれている気がする


『人間に過剰な魔力を吸収させるアイテム…その『魔力充電器』を十二分に使うには

 大規模に魔力を生み出す装置が、セットで必要だ』

「なるほど…!つまり『風』のような発電所が必要だと…!」

「そういう事だ」

元々、隠れながら作っていたものなのか、急ごしらえなのかはわからないけど


「なら『雪』で発電所が作れそうな場所に限定すれば…

 居場所を絞り込めそうですわね!」

アワユキさんが、床に大きな地図をばっ、と広げる


「なら、私と二人で擦り合わせを行いましょう

 発電所が作れそうな場所…この中では私が一番、知っているはずです」 

「お願いしますですわ」

『風』の領主さんが、アワユキさんと検証に入る


「…よくやってくれた、コガラシ」

息子を褒める父親

少しだけ、笑みを浮かべる息子

親子の関係性は、完全に復活していた



でも本当に、この情報は助かった

これで居場所がわかれば、対策が立てられる…!

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして

評価してもらえると、たいへん嬉しいです!

さらに面白いと思ってくださった方

同じく広告の下にある『ブックマークに追加』も押して頂けると

とてもとても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ