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87/108

87・王子少女は宣言したい!

あー…この前の事が頭から離れない…

あの後、ミソラさんが慌てて帰ったって事は、ついやっちゃったって感じだよね

お祭りでたまってたのかな…?


「王子…もうすぐ演説よ」

『……』

「え、演説だってば、もう……」


(い、忙しいときに変なことしてごめんなさい

 今は大事な方に集中して、お願い!)

(わ、わかりました)


自分のほっぺを両手で叩き、気合を入れなおす


お祭りから数日後

いよいよ、演説と…『雪』の領主との決別の日

問題なく彼を追放できれば、いいのだけれど……



いつもより立派な衣装をまとい、城の大きなバルコニーに出る

ここは演説をする時の為に、大きめにつくってあるそうだ

並べられた椅子には、『花』の領主、『風』の領主、『星』の領主

『雪』の次期領主アワユキさん、『雪』の聖女アジサイちゃんが座っている


ミソラさんは原稿を持って、私の傍についてきている

…もし、私が原稿の内容を忘れたら、『グループチャット』でカンペしてくれる予定だ


「お、『花』のおっさん、赤くて強そうだな…!前はそんなんじゃなかったのに!」

『星』の領主さんがバンバンと、『花』の領主さんの赤い鎧を叩いている

ほんと誰にでもやるんだなぁ、あれ


「演説終わったら一戦、バトルしようぜ!」

「ふふ、これが無事終われば相手してやろう」

厳かに落ち着いて喋る『花』の領主さん

ふ、風格が違う…!鎧の色はめっちゃ赤いのに…!


執事さんとホシヅキちゃんは、近くの部屋から、いつでも護衛に出れるよう待機している

人が集まるという事は、そこに刺客が紛れ込みやすいのも確か

兵士の皆さんも、ほとんどがこの演説のために動員されている

とにかく、無事に終わらせることが第一


「…はじめましょう、王子」

『ああ』

『花』でやった時よりもはるかに多い人数への演説

正体がバレないか、今さらながらドキドキする

でも、ここまできたんだ、やるしかない…!



『祭りの熱冷めやらぬ中、こうして皆が集まってくれた事、嬉しく思う』



みんなの視線が私に注がれる

大丈夫、練習してきたから、大丈夫…!


『今日、ここで話すことは、国の未来を左右する事だ、心して聞いて欲しい』

周囲がざわめきだす

演説をやると言った時点で、みんなもなんとなく重大な事とは思ってただろうけど…


『皆も知っての通り、それぞれの領地が発展していく中、『雪』だけは発展に取り残されつつある』


『元々が開発のしにくい土地柄であったことが原因だが

 そのおかげで領民は苦しんでおり、『雪』との間でのいざこざも、かなりの数に上る』

ゆっくりと…しかし確かな声で喋る

みんなは真剣な表情で、私の話を聞いている


『そこで!国税の二割を使い、再度『雪』を立て直す一大計画を考えている』


ざわっ…


またざわめきが上がる

二割と言えばかなりの額だ、他に回す予算も削らなくてはならない

でも、これは必要な事…!


『『風』、『花』、『星』の領主たちには、すでに了解を得られている』

後ろで座っている三人の領主たちに、視線を向ける


「応!」

「我らとて、無駄に争いたいわけではありませぬ」

「全ての領土の、未来のために」

今回の彼らの役目は、こうやって追認してもらう事だ

見ている側にとっては、口で約束した事を伝えるだけより、はるかに納得がしやすい


『しかしながら…!皆も思うのではないだろうか?

 この重要な役、『雪』の領主には任せられない、と…!』

ここでちょっと感情をこめて、握りこぶしを作る


『ボクが行方不明だったのをいいことに、国の実権を握り、好き放題に贅沢していたあの男には!』

中央の人間には、つい数か月前の事、記憶に新しいだろう


『そこで、彼女たちに声をかけた』

手のひらを、座っている二人に向ける

二人は立ち上がり、国民の前にその姿を見せる


『一人は、『雪』の血筋を持ち、温泉街を経営する才女、アワユキくん』

意外と肝が据わっているのか、国民に向けて笑顔で手を振るアワユキさん


『もう一人は、『雪』の苦しむ民たちを、その身を賭して助け続けた聖女、アジサイくん』

大勢の人に慣れてないのか、アジサイさんはおずおずと手を振る



『アワユキくんを、新しい『雪』の領主に据える!

 そして、アジサイくんには、アワユキくんの養子に入ってもらい

 二人で再生プロジェクトに携わってもらうことにした!』



二人の肩を持ち、新しい領主が任命されたことを伝える

自分たちは『雪』も含めて大切な仲間だと、アピールも含めて


『現領主の追放には、他の領主の承認も必要だが…』


「異論はねえ!」

「ありませんな」

「あやつはやりすぎました、当然でしょう」

領主たちの追認を再び

事前にすり合わせもしていたので、異論など出ようはずもない


『よって、今現在を持って、旧『雪』の領主を追放とする!』  


青空の元、堂々と宣言する

国民はしばらくの間、黙っていたが…


パチパチパチパチ


やがて、納得した皆の間から、拍手が聞こえ始めた


「王子!」

「やりましょう、王子!『雪』を発展させ、皆が平和に暮らせる国を!」


大きくなっていく拍手

やがてそれは、天にも届くくらいの大きな響きとなって……



「……は、ははははははははははは!」



その拍手に、一人の男が異議を唱えた

国民の中にまぎれていたその男は、物怖じなどみじんもせずに、王子に向かって叫ぶ


「何をバカな事を!

 今さらあの『雪』の地がどうにかなるとでも、本気で思ってるのか?!」

…一部の『雪』出身の民が押し黙る

聖女様でも一時しか救えない、あの厳しい土地を、どうしようというのだ

そんな気持ちが、彼らの中には確かにあるのだろう


「奪うしかないのだ!そして奪う能力なら、今の『雪』の領主が最適…!」

『それでは根本が解決しない!奪われた者が、逆に困難に陥るだけだ!』

叫ぶ彼の見た目に気づく

黒髪の四十代男、髭を蓄えていて腹が少し出ていて、肩に三つのあざ…


「王子はつくづく甘ちゃんだ!あの時殺せなかったのが、残念でならない!」

そう、彼は…


「『ウインドフォール』…なぜここに…!」


厳重に拘束していたはずの、『雪』の工作員となり果てた男…!

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